第二クール、スタート!①
19日目の朝。
「ハク~、おはようっ!朝だよ!」
元気のいい声で起こされる。
…あれ?…あ、ユキか。
シッポをちぎれそうなくらい振っている。
朝から癒されるな…。
ユキの頭をナデナデしながら、食卓に向かう。食卓にはいつものメンバーが既に揃っている。グレイは、ゼロの後ろに立ったままだ。
「おお、執事っぽい!」
しまった。寝起きだから、思ったままが口をついて出てしまった。
「あ、ハク!ハクからも言ってよ~。一緒に食べようって言うのに、聞いてくれないんだ」
ゼロは、後ろで見られてると落ち着かないよ~、と嘆いている。
「ゆうべは一緒に食ったよな?」
「昨日は食事も既に始まってましたし、歓迎会のようなものかと解釈しましたので」
「あ~…ゼロは違う世界から召喚されて来たらしいんだ。習慣が違うんだから、マスターが心地良く感じるようにしてやったら?」
ゼロが異世界から召喚されたと聞いて、グレイはちょっと驚いたようだ。ゼロに、そうなんですか?と確認している。
暫く考え、納得したのか席についた。
う~ん、先が思いやられるな。
「なぁ、グレイはさすがに今日はスキル教室ないんだろう?」
「そうですね。今日生徒さんを募って、明日から実働ですよ。今日は皆さんの教え方を一通り見学です」
俺の問いに、にこやかに答えるグレイ。
やっぱりな。これは勧誘しなくては。
「じゃあさ、俺、これから王室の兵士達20人くらい、格闘の訓練するんだ。そっちもちょっと見に来てくれないか?」
ムサ兵士達の訓練は、絶対グレイの方が適任だ!あのムサアツい兵士長の理想通りの人材だし!
「ほう、兵士の訓練まで…。本当に手広く事業を展開していらっしゃる。ゼロ様はやり手ですな」
見かけによらずな。
「いいでしょう。ぜひ見学させて下さい」
やった!講師候補ゲット!
思惑通りに事が運び、思わずニヤニヤしていたら、ゼロが珍しくテンション高く話しかけてきた。
「聞いてよハク!僕さ、昨日あれから、グレイに土属性の魔法教えて貰ったんだ!」
「覚えが早くて吃驚致しましたよ」
やっぱり、もう覚えたのか。
「あと2日もあれば、私の手持ちの下級土魔術は全て習得できそうな勢いですよ」
羨ましいな、その尋常じゃない魔術への適性…。まぁ体使う系はからっきしな感じだが。
「カエンもさ、そのうち火系の魔術教えてよ」
「ああ、任せとけ」
カエンも快諾。すっかり魔術を覚えるのが楽しくなってしまったみたいだ。
申し訳ないが、その調子で俺のスターセイバーも宜しく頼む…。
それから各自が、各々の持ち場に戻ったら、ゼロを筆頭に、俺、ルリ、ユキの初期メンバーはスライム・ロード造りに入った。ゼロの書いた見取り図を見て、ルリもユキも興奮気味だ。
「スーパースライムと5色のスライム達が中ボスなのね?」
「そう!スーパースライムは倒せても、スラレンジャーは個性豊かだし、なかなか倒せないと思うんだよね!」
ゼロは楽しそうだが…
「スラレンジャー…?」
「うん!5色揃って、戦隊ものみたいじゃない?スラレンジャー!」
「…………???」
首を傾げる俺達。
「ああっ、そっかぁ!わかんないかぁ~。ああ、分かち合えないっ」
ワケが分からないが、ひとしきりゼロは身悶えた後、「とりあえず、あの5色のスライム達は、スラレンジャーって呼ぶから…。」と、寂しそうに告げた。
「あっ、スラっちはやっぱりラスボスなんだね!」
ユキが寂しそうなゼロを気遣って、明るい声で言う。ホントにお前は癒し系だな。
「うん、スラっちはもう、数えるのが面倒なくらいスキル持ってるからね。そう簡単には倒せないよ。冒険者の人達も、いい勉強になるんじゃないかな」
そう言いながら、ゼロはどんどんダンジョンを形作っていく。
『大部屋3つを融合。オブジェ:オアシス。地形:砂漠として召喚しますか?』
「承認!」
そうか、このダンジョンは、モンスターを新しく召喚しなくていいから、ダンジョンの造成にポイントをつぎ込む事ができるのか…。
「よし、これでいい。オープンまでにスライム達も分裂して数も増えるだろうし、面白いダンジョンになりそうだね」
満足げに頷くゼロ。
スライム達が投入され、ぴょんぴょん跳ねながら、持ち場について行く。
うん、微笑ましい。
それを眺めていたら、カフェのモニターから、叫び声。
「ハク師範!ザイガン以下20名!本日もご指導いただきに参りましたぁぁぁ!」
来た…!
「行ってらっしゃい」
「モテモテねぇ。頑張ってね~」




