今日は休日! ②
「わぁ、ずいぶん買ったね。って言うかこれ全部、服!?」
さすがのゼロも驚愕だ。
「アクセサリーもありますよぉ」
「服なんかでポイント消費するの悪いから、街で買っちゃった。久しぶりに大漁よ~!」
ルリとマーリンは頬を上気させ、満面の笑みを浮かべている。いつか衣装部屋を召喚するハメにならなきゃいいが。
街の様子を聞きながら、昼メシを食う。なんと二人は荷物を置きに来ただけで、これから第二ラウンド。また街に行くらしい。
どんだけ買うんだよ。
俺は呆れた。
逆に女二人も俺達に呆れたようだ。
「せっかく休みにしといて、なんで魔道書読んで、まったりしてんの!?」
「休まらないですぅ」
「若い男二人なんだから、こんなとこでウジウジしてないで、街でナンパでもして来なさい!」
だって、ゼロは外に出ると疲れるって言うし、俺も今日は魔道書と睨めっこの予定だったから、買い物もナンパもしたくないんだが。
最初はゼロを猫可愛がりしていたルリも、だんだん口うるさくなってきたな…。お前は姉ちゃんか。
全力で拒否るゼロ。
ついに諦めて、お姉ちゃんズは再び買い物に行ってしまった。
「ふぅ…やっと行ったか」
呟き、ベッドにダイブするゼロ。
よっぽど嫌だったのか、気持ち言葉が悪い。邪魔者も出かけた事だし、俺達は早速、途中になっていたライト習得に取り組む。
しかし。
スキルコレクターの称号は伊達じゃねぇな…。ゼロはそれから、ものの2時間程で覚えてしまった。
「ねぇねぇ、ハクさぁ、棒術習いたいって言ってたよね?」
魔法をひとつ習得し、ご機嫌のゼロは、もう次の事を考えているようだ。
「ああ。…でも、ヌンチャクとかも面白そうかな。あれか?格闘系の講師か?」
「うん。急いでるって言ってたよね」
ルリじゃないが、ちっとは休めばいいのに。細っこいから体が心配なんだが。
「ん~…カスタマイズとか、あんまりやりたく無いけど、この際しょうがないよね」
「…コアに、条件に合うヤツ探して貰うとか、出来ねえかな」
「出来るかも!」
ゼロはそう言って、ダンジョンコアに飛びついた。
「コア!格闘と棒術かヌンチャクのスキルがある、人に近いモンスター召喚したい!出来る?」
コアは検索しているようだ。
こんな大雑把な指示でも検索出来るって、いつ見ても凄いな。
やがて。コアは3人を選出したらしい。
「じゃあ、一番スキルが多い人で」
ええっ!
せめて個々の詳細見ようぜぇ!?
俺の心の叫びも虚しく、あっという間に目の前に人影が現れる。
優しげな、初老の紳士だ。
でも、同族の匂いがするよな…。
「あ…龍人か?」
ニコリと頷く。
黒で纏めた執事のような服。ピンと伸びた背中。シルバーグレイの髪は品良く整えられている。
…とても、格闘スキル目当てで召喚したとは思えない。
「私のマスターは、どなたかな?」
「あっ、僕です。名前はゼロ」
「これはお若い主でいらっしゃる。誠心誠意、お仕えしますよ」
落ち着いた、優しい声だ。ゼロも初対面の割には、いつもより落ち着いている。俺達は早速、彼の新しい仕事について、説明を始めた。
「ほう…。私が格闘スキルの講師ですか」
しばし考えたかと思ったら、にっこり笑ってこう言った。
「生徒が血を吐きますが、よろしいかな?」
怖ぇぇぇえぇぇぇ!
目がマジだ。
ヤバい人召喚したかも知れない!
「は、吐かない程度で、お願いします…」
青くなって蚊のなくような声で答えるゼロを見て、彼は高らかに笑った。
「いやいやこれは、からかい過ぎましたかな。大丈夫ですよ、ちゃんとそれぞれにあったレクチャーを致します。お任せ下さい」
う~ん…。
一癖も二癖もありそうな人だな…。
グレイと名付けられた彼は、レア度4の土龍の龍人だった。ステータスを見てみたら、本当にスキルがたくさんある。
「下級土魔術」「中級土魔術」「格闘」「ヌンチャク」「鞭」「かばう」「身代わり」「バトラー」
8個も!!
なんで進化してないんだ。
しかも、こんだけスキルがあるなら、レベルだって高かった筈だ。レベル1に戻って修行し直す意味が分からない。
コアに釘付けになってステータスを見ている俺達をよそに、グレイは手際良く紅茶を淹れ、さりげなく俺達の前にセッティングしてくれた。
「前にお仕えした方を守るために習得したものです。さほどたいしたスキルは所持しておりませんよ?」
いや、充分凄いと思うけど…。
どれくらい生きているのか想像もつかないけど、さすが年の功だな。
「ねぇ、グレイ。僕にも土属性の魔術教えてくれる?」
ゼロがわくわくした目で頼む。
「お前まだ覚える気か!?」
「だって、あと土と火で全属性いけるから、せっかくなら覚えたいし。」
今度はグレイが驚く番だ。 さっき聖魔術も覚えたと知ったら、もっと驚くだろうなぁ。




