クラスチェンジの希望
これまでは、戦闘なんて最終的に勝って、生き残ればそれでいいと思ってた。でも、ダンジョンのプレオープンとこの5日間を経て、ボス戦はやっぱり、戦闘の面白みが重要だと確信した!
クラスチェンジすれば、新たなスキルもゲット出来るかもしれない。
今選べるクラスは3つある。
しかもそれぞれ更に2つずつ、もっと上位のクラスがあるみたいだ。レベルが上がるか何かで、またクラスチェンジのタイミングが来るんだろう。
…ただ、カタログの情報は修得スキルやステータスモデル、その先のクラスなど、見たい部分に限って「?」マークで隠されている。
なんだよ、このもどかしい感じ!
コアに情報の開示条件とか聞けるんじゃないだろうか。イライラしながらゼロが戻るのを待つ。
自分で言うのもなんだが、気が長い方じゃない。気になって他の事も手につかないし、10分も経つと、ダンジョンまで迎えに行こうかとまで思い始めた。
「ただいま~」
「遅ぇよ!」
呑気に帰ってきたゼロに、思わず八つ当たり。当たり前だが、ゼロはビックリした顔でこちらを見ている。
「……悪ぃ。でも、凄ぇ待ってたから、つい」
「何かあった?」
さすがに分かったらしい。
簡単にこのもどかしい状況を説明すると、ゼロはすぐさまカタログにかじりついた。
「本当だ。肝心のところがシークレットになってる。しかもこれ、どのクラスになるにも何か条件があるんだね」
「その条件もシークレットだしな。ゼロが戻れば、コアに情報の開放条件聞けるんじゃねぇかと思ってさ」
「聞いてみる!」
速攻でコアに向かうゼロ。
『情報1つにつき、200ポイントで開示できます』
高っ!
ちょっと待てよ?
シークレットの数、いくつなんだ。
数えていくと、なんと36箇所もあった。
7200ポイント…。
い…痛すぎる出費だな。
でも、クラスチェンジは今後の成長も強さも、さらにはこの先到達できるクラスにまで影響を及ぼすものだ。
背に腹は変えられない。
俺は苦渋の決断をした。
「…俺の貯金ポイントから、7200ポイント出してくれ」
変化のピアスも大事だが、今はまず、クラスチェンジ情報の方が欲しい。
ゼロが目を輝かせて、コアに向かう。
『ハクのクラスチェンジ情報のシークレット部分を全て解除します』
表示された内容を、二人して真剣に吟味。
………………………………………
『癒しの龍幼体』
*クラスチェンジ条件:
白龍の龍人で、レベル40以上。
MP:2500以上。
*レベルアップ時の追加ステータス補正:
MP+15、知力+10、幸運+5
*自動修得スキル:
「上級白魔術」「上級聖魔術」
*次期通常クラスチェンジ一覧:
「白龍」「慈愛の白龍」
………………………………………
『庇護の龍幼体』
*クラスチェンジ条件:
白龍の龍人、レベル40以上。
筋力:1500以上。
スキル:剣、槍、格闘のいずれかを所持。
*レベルアップ時の追加ステータス補正:
HP+15、筋力+10、耐久+5、敏捷+3、幸運+5
*自動修得スキル:
「上級白魔術」「カウンター」「かばう」
*次期通常クラスチェンジ一覧:
「白龍」「守護の白龍」
………………………………………
『聖なる龍幼体』
*クラスチェンジ条件:
白龍の龍人、レベル40以上。
聖魔力の使用:合計50000MP以上。
MP:2500以上。
筋力1500以上。
称号:主の忠臣を所持。
称号:ナイトを所持。
スキル:聖魔法スターセイバーを所持。
*レベルアップ時の追加ステータス補正:
HP+10、MP+10、全ステータス+5
*自動修得スキル:
「上級白魔術」「上級聖魔術」「先制」「絶対守護」「天破一閃」「自動回復(弱)」
*次期通常クラスチェンジ一覧:
「守護の白龍」「聖なる龍成体」
………………………………………
どうしよう。
ドキドキしている。
他でもない。最後の最後に記載されている、次期通常クラスチェンジの欄に、「聖なる龍成体」と書かれていたからだ。
察するに、多分最初の『癒しの龍幼体』が、白龍に至る普通のクラスチェンジで、魔法に特化した成長になるんだな。他の二つは、俺が後天的に獲得した条件によって、目指す事が可能になったクラスだと思う。
ただ、俺の目には最早、最後のクラス『聖なる龍幼体』しか映っていない。
「ゼロ、頼む!俺、絶対に『聖なる龍幼体』が良い!これを目指させてくれ!」
ブラウやレイを見習って、土下座してもいい!絶対これだ!
多分「聖なる龍幼体」は、聖龍に至るクラスだ。
白龍の龍人の中でも、ごく稀に、白龍のさらに上位である「聖龍」に至るヤツがいるって、聞いた事がある。でも聖龍なんて、俺も見た事ないし、どうやって至るのかは、周りのヤツも誰も知らなかった。
今ここに、謎だった聖龍に至る道が開示されてるなら、目指してみたいのが人情だろう!
「いいよ。獲得スキルも成長率もそれが一番いいし」
事情を知らないゼロは、軽~く答える。
「でも、このクラスチェンジ条件、満たせるのかな?」
……それなんだよな。
明らかに厳しい条件だし、名前も知らない魔法もあるし。答えに詰まる俺を見て、ゼロはコアに今の条件到達度合いを確認してくれた。
結果はこうだ。
レベル、MP、筋力は、レベル40時点で獲得出来ると確認出来た。
称号はナイトも、主の忠臣も獲得済み。
問題がありそうなのは、2つの項目だけだった。
*聖魔力の使用:合計50000MP以上(現状32280MP)
*スキル:聖魔法スターセイバーを所持(未所持)
「聖魔力の使用…?」
ゼロが首を傾げる。そこそこ消費されているのが不思議なんだろうが…失礼なヤツだ。俺はこのダンジョンで最も毎日魔力を放出している。
『戦闘においての使用記録はありません。ダンジョンコアに、毎日聖魔法で魔力を注入した合計値が、32280MPとなります』
コアの情報を聞いてゼロは、はぁ~…ハク、頑張ったんだね…と、今さら感心している。
カエンに言われて以来、俺はずっと毎晩寝る前に、余った魔力を全部コアに注入してから寝てるんだ。抱っこして寝るだけで、コアに属性がついてたまるか。
でもまさか、こんなところで、役立つとは思わなかった。
本来進化の行き着く先が白龍の筈の個体が「聖龍」に分岐するには、よほど聖への属性特化が必要だって事なんだろうな…。
まぁあれでちゃんとカウントされるなら、今まで通り注入すればいいワケだ。楽勝だな。
問題は「スターセイバー」の方だ。
見当がつかない。
スキルとしては中級聖魔術が使えるんだが、自動的に覚えるのは、全体回復魔法のスターヒール1つだけだ。
後は自分で覚えるしかない。
「ゼロ、コアにスターセイバーはどうやったら覚えられるか聞いてくれ」




