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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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5日間で得たものは?③

皆はその条件を不思議そうに聞いていたが、俺はちょっと分かる気がする。


なんだかんだ言って、ここはダンジョンで、どんなに人とソックリでも、俺達はモンスターだ。


例えばケンカに巻き込まれただけでも、デカい問題になるかも知れない。ゼロは多分、もしもそうなったら、カエンや王室に迷惑かけるって思ったんだろう。街にダンジョンモンスターが出る機会はある程度減らした方がいい。


俺も賛成だ。

ゼロの身の安全のためにも、軽率な事はやめた方がいいもんな。


皆特に異存はないらしく、その件は「子供達のお遣い」で決定した。



「じゃあ次は…カフェつながりで、キーツとイナバ、何かある?」


「わっ!私めは、大丈夫でごさいますよ!?すこぶる絶好調でございます!」


耳も背筋もピーン!と伸ばして、高らかに宣言するイナバ。


ルリは肩を震わせて、笑いを堪えている。ユキが「ウサちゃん、かわいー」とちっちゃな声で呟いた瞬間、我慢できなかったのか、噴き出していた。


「イナバがハゲないかは心配だけどぉ、オレも問題ないよ~」


キーツはいつも通り、ヘラっと答えた。


さりげなく、イナバの目に入りにくい、同じ列の離れた席を選んでいるあたり、さすがと言うか、何と言うか…。苦労してるんだな。


「ちゃんとアナウンスに合わせて、絶妙に音楽入れてくれるしぃ、オレ的にはやり易いからぁ」


イナバは鼻高々だ。

まあ、こいつらは徐々に慣れて貰うしかないだろうし…。俺はむしろ、キーツがハゲないかに着目したい。



「じゃあ次は…ダンジョン内の店、ね」


代表で来ているホビットが立ち上がる。


「いやぁ、問題ねぇな。人数も今が丁度いい。結構売れっから、ドワーフのじいちゃん達が気ぃ良くして、新作作るって張り切ってるくらいだぁ」


「良かった!カッコいいの、いっぱい作ってね、って伝えてくれる?」


すると、彼は何か包みを取り出した。


「そう言やぁ、ゼロ坊に渡してくれって、頼まれたんだぁ」


「わぁ、新しいナイフかな?後でお礼に行くよ」


ゼロ坊って…。

どんだけ仲良くなってるんだ!



「次、ご褒美ルームとスキル教室ね」


代わって、知的美人エルフ、ミズキが立ち上がる。


「ご褒美ルームは問題なしですわ。スキル教室を営業しながらでも、充分対応できていますし」


淡々と話すミズキ。


「スキル教室も満杯で、今のところフル稼働していますわ。ただ…」


そして、またもなぜか、ミズキが俺の方をチラチラと見ている。このシチュエーション、ロクな事ないんだよ…。


「………なんだよ」


「あの…やはり格闘スキルを習いたいと言う要望が多くて。あのっ、他にもあるんですのよ?斧とか、棒術とか、要望は色々…」


だんだんと声が小さくなる。

俺は、はぁ…と、ため息をついた。


「あー…提案なんだけどさ、講師を少し召喚して増やしたら?確かに、パワー系のスキル教室、足りないもんな。俺も棒術なら習いたい」


「そうですわね。要望でも、多い分野ですわ。あとは、魔術も火とか…」


もういっその事カエンでいい気もするけど、さすがにそういうわけにもいかないよな。


「そうだね…。ちょっと、考えてもいい?あんまり増やし過ぎてもいけないから、検討するね?」


「はい、私達もまずは軌道にのせたいので、次の会議の時にでも、検討いただければ大丈夫ですわ」


ミズキが柔和に微笑み、ゼロもしっかりと頷いた。


「次は練兵場とか…王室から何かある?」


カエンはゆったりと座ったまま、いつも通り余裕たっぷりでニヤニヤしている。


「…似たようなもんだな。格闘スキルのハク師範は、評判いいぜぇ。これからも是非、お願いしたいとさ」


ザイガン兵士長、絶賛!とウインクされる。ムサアツいおっさんの賛辞もカエン様のレアウインクも要らないから、早く自由にして欲しい。


ゲンナリした俺を機嫌良く眺めてから、カエンは指を3本立てる。


「要望は3つだ。詳細はアラインが、日を改めて直接話すって言ってたぜぇ」


ゼロはちょっと困った顔だ。

確かに軽くでもいいから内容は知りたいよな。


「内容?しょーがねぇなぁ…」


しつこく聞く俺達に、ついにカエンが折れた。


「1つ目は、講師の紹介。水泳や魔術も視野に入れてるらしい。2つ目は、一ヶ月後くらいを目処に武闘会開きたいらしいから、その手伝い。3つ目は、俺も知らねぇ」


そう言えば、プールもあったっけ。ここは海が遠いから兵士達も全体的に泳ぐのは不得意だろうし、確かに要るかもな。大体は分かったし、これ以上は聞いても仕方がないと判断し、ゼロは最後の議題にうつった。


そう、ある意味今日のメインイベント。


「さっきね、ハクにも相談してみたんだけど、挑戦できるダンジョンを、あと3つくらい、徐々に増やして行こうかと思うんだ。 」


ゼロは簡単に、さっき俺にしたのと同じような説明を入れていく。


……だけかと思いきや、さっきの話は、構想のほんの一部だったと思い知らされた…。



「…で、スラっちはね、新しいダンジョンが出来たら、そこのボスになって欲しいんだ」


スラっちは、嬉しげに揺れている。


「今、スライム達も色んな能力がある子が増えたじゃない?いっその事、スライム・ロード造っちゃおうと思って」


「わぁ!面白そうですね!スライムちゃん達、カフェのお客様にも人気ですし」


シルキーのオレンジちゃんが、真っ先に賛成する。皆、面白そうだと絶賛だ。


「それでね、スラっち。ボスとして、常にスライム最強でいて欲しいんだ。他の子達が覚えてるスキルを、スライム・ロードができるまでに、全部習得しといてね?」


爽やかな無茶ブリ、きた!

そのためにスラっちもよんでたのか!


しかし、そこはスラっち。


高く飛び上がると、七色にビカビカ輝いて、並々ならぬ喜びとヤル気を見せた!


すごい興奮してる!


何度も何度も飛び上がったかと思うと、今度は一目散にダンジョンに入って行った。


「あ……」


こっちは完全に放置された感じだが…まあ、スラっちだからな…。仕方ない。


「…で、次がトラップ&トレジャー・ロードで、その名の通り宝も罠も盛り沢山なコース。レベル不問で、冒険者レベルに合わせて、僕とブラウで色々仕掛けるんだ」


ブラウがニシシ、と笑っている。イキイキしてるなー。


「ボスはまだ、考え中なんだけど…皆、なんか良いアイディアないかな~って思って」


「びっくり箱みたいなダンジョンなんでしょ?意外性が欲しいわよね~」


ルリの呟きに、皆しばし考える。


「ボス部屋じゃないのに、ボスが居るとか?」


「宝箱のトラップがボス部屋に直結したら最悪だよな!」


「ボス部屋のダミーがいっぱいあるとか?」


こんなボスはイヤだ大会になって来た。


「そうだ、ボスも固定しないで、日替わりにしたら?ラッキーだとピクシーだったり」


「ヒドイ時にはカエンとか?」


「ダンジョンモンスターじゃねぇし!」


もう大騒ぎだ。完全に面白がってる。

陰湿じゃないってのだけが救いだな。

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