5日間で得たものは?①
17日目の朝。
オープン初日から5日間が、大盛況の内に終わり、今日は初めてのダンジョン定休日。
…と言っても、メンテナンス日だから、純粋な休みじゃない。ダンジョンメンバーにとっては、意外と重要な日だったりする。ただ昨夜は例のごとく、皆で楽しく打ち上げパーティーだったから、朝はどうにも起きれない。
「ブラウ、飛び乗って来い!」
縁起でもない言葉で目が覚める。
続いて聞こえる、バタバタした足音。
ヤバい!
「起きた!起きてる!」
慌てて起きる。
ブラウが「ちぇっ!つまんねぇの~」と、唇を尖らせているが、本気で衝撃デカいから、マジでやめて欲しい。
爆笑しているカエンをついジト目で見る。やっぱり、ブラウをけしかけてたのは、あんただったんだな。
「睨まないの!ハクが起きないからよ?」
朝っぱらから、ルリに説教される。マジでテンション下がるな…。
「ハク、おはよー!今日のゴハンはパンケーキだよ?生クリームつけてね、フルーツ沢山のせると美味しいんだよ!」
ユキがしっぽをフリフリしながら飛びついてくる。うん、癒されるな…。
ダンジョンコアをゼロに渡し、早速朝メシ。
あ、なかなか美味い!
パンケーキなのに、ボリュームもあって、腹持ちも良さそうだ。
もくもくと食う。
「あーーーっ!!!」
突然の叫び声に、その場にいた全員がビクっとする。
「やったぁ~!ついにコアに属性ついたよっ!ハク凄い!」
ゼロがコアを高く掲げて、狂喜乱舞している。
すげぇな。
錬金釜ゲット以来の喜びようだ。まるまる2週間、俺もコアを抱き続けた甲斐があったワケだな。
ゼロがワクワクした顔で、早速コアのステータスを確認する。もちろん俺も覗き込んだ。
◆ダンジョンコア◆
LV:5
地形:複合
属性:聖(微)
DP残:113578DP
………(微)ってなんだよ!?
あれだけ頑張って、あげく(微)かよ!
俺もショックだが、ゼロもさすがに唖然としている。
マスタールームは爆笑しているヤツ1名、笑いを堪えているヤツ数名、わかって無さそうなヤツ数名の、残念な空間になってしまった。
「まぁ、そりゃそうだろうなぁ!んな簡単に属性ついたら、デカい魔力属性吸う度に、コアの属性変わっちまうしなぁ!」
もちろんカエンは大爆笑だ。
でも、そもそもあんたがコア抱いてろって言ったんだからな!?
「あのぉ…気を落とさないでください。もしかしたら、ダンジョンの方には、色々と付加効果があるかも知れませんしぃ」
マーリン…言ってる事は正しいけど、明らかに笑い堪えてるし。もういっそ、カエンみたく笑い飛ばして欲しい。
ルリもついに噴き出したし。
………。
ゼロも俺も、無言でダンジョンのステータスを見る。
◆ダンジョン◆
名前:ギルド「クラウン」訓練施設
LV:7
属性:聖(微)
知名度:35
階層数:4
◆能力値
撃破数:0
撃退数:236
総モンスター数:321
◆属性特典
・敵味方問わず:聖属性施設・モンスター・魔法の能力10%アップ
・敵味方問わず:魔属性施設・モンスター・魔法の能力10%ダウン
・聖属性施設・モンスター召喚レベルボーナス+1
・聖属性施設・モンスター召喚時のDP消費10%軽減
「おおっ!」
思ったより効果があるじゃねぇか!
ゼロもメチャメチャご機嫌だ。
「凄い!微で10%も変動するんだね!最強とかなるとどうなっちゃうんだろうね!?」
……え?
俺は固まり、他のヤツらは爆笑する。
「え?何?僕なんか変な事言った?」
ゼロは微妙に赤くなって、キョロキョロしている。
な…何だ、またコアを抱かせられるのかと思って焦った…。
微で2週間もかかったんだぞ?
最強って、一体どんだけかかるんだよ…。
「あー、笑った!そんじゃ俺様はちっとギルドに行ってくるわ。今日は王宮に寄って来るから、帰りは少し遅くなる。」
カエン様、ご出勤だ。
もう完璧にここが家の体で話してるな。
それを合図に皆席を立つ。
今日は午後から作戦会議。午前中は各自の仕事や、各持ち場の意見の取りまとめに使う事になっている。
5日間ぶっ通しでダンジョンを稼働させたのは初めてだから、今日は意見も沢山出るかも知れないな。
俺もそろそろボスデビューしたい。
「なぁゼロ、俺のポイント、どれくらい貯まってる?」
「え?えっとね…今、33000ポイントくらい。あと1サイクル頑張れば、いけそうだね!」
あのムサ兵士達を、あと5日も面倒みるのか…。気が遠くなる。なぜかレイも、毎日毎日、飽きずに来るし。あいつそろそろ、カエンに直接指導して貰った方がいいんじゃないかな。
成長速度がハンパない。
俺だってこの5日間、ムサ兵士20人と連続組手を毎日毎日やった上に、夜はカエンに鍛えて貰ってる。それでも追い付かれそうな危機感があるんだよな…。
いや、待てよ?
次のサイクルが終わったら、あいつにムサ兵士20人組手やらせりゃいいのか?
うん、喜んでやるかも知れない。
なんといっても、「夜の方がモンスターが強いんです!」とか言って、わざわざ夜にダンジョンに潜るようなヤツだ。毎日レベル上げてるようなヤツには丁度いい仕事なんじゃねぇか?
自分の思いつきに、思わずニヤける。ムサ兵士のお守りも、熱血イケメン:レイの相手もしなくていいって…嬉し過ぎる!
ああ、一週間後が楽しみだ!
「……何ニヤニヤしてんの?」
ゼロは若干ヒキ気味だ。
でも、俺の野望は臥せておこう。
寝坊して起きて、朝メシ食ってたらムサ兵士達が来る→訓練終わったら即昼メシ→ダンジョンの客が来る→客が帰れば疲れて寝る→レイが修行に来る→晩メシ→カエンの特訓→疲れて寝る。
この繰り返しで5日間。
男ばっかりに囲まれて、シルキーちゃん達と話す暇さえなかった。俺にとっては地獄だったが、あんまり共感して貰えない気がするし。
「えと…久々に新着見るけど…一緒に見る?」
ゼロが遠慮がちに聞いてくる。
もちろんだ!
考えたらこのところ、本当にコアの情報見てねぇ! ゼロよりさらに久しぶりに見る俺は、無駄にドキドキしてしまった。コアの無機質な音声も、お久しぶりだ。
『ゼロ・ハク・スラっちのレベルが上がりました。』
『ゼロ・ハク・スラっち・イナバ・キーツ・スライムメイジA、B、C、D、E、F、Gが、新たなスキルを入手しました。』
『ゼロ・ハク・スラっち・イナバ・キーツが、新たな称号を入手しました。』
『条件を満たしたため、新たなモンスターが召喚可能となりました。』
……………
多すぎて、全部は記憶出来ない。
つーかスライムメイジ、増えたよなぁ…。
各々が色んな冒険者からスキルをゲットするから、もう、どのスライムメイジがどのスキルを所持しているのか、把握出来ないレベルだ。
しかも司会だったキーツや演奏担当のイナバまで、なんか新たなスキル、ゲットしてるしな。




