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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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62/320

今日からオープン!⑪

その賑やかな笑い声とは対照的に、俺の目の前のモニターでは、死闘が繰り広げられていた。もちろん、魔族魔術師と姉弟戦士達vsキング・ロードのボス:エアドラゴン、本日最後のバトルは、なかなかの好カードだ。


エアドラゴンは空の覇者。

元々戦いにくい相手ではあるんだが…。


魔術師が折角フライなんてレア魔法を持っているというのに、戦士が二人とも高所恐怖症だからなんの役にも立ってない。


仕方なく、エアドラゴンが直接攻撃のために近付く瞬間を狙って、魔術師が破壊力抜群の魔法を放って動きをとめ、そこを姉弟戦士達が叩く、という……なんとも普通で堅実な作戦を続けている。


魔術師の魔法がいちいち派手だから、その度にカフェからは声援が飛んでいるが……。


「ん~~~。あの魔術師の実力からすると、なんか…こんな苦戦するイメージじゃないよね」


そう!

そうなんだよ!


ゼロが微妙な顔で言った言葉に、激しく同意だ。


まだエアドラゴンのHPは半分くらい残ってるし……何よりここまで、ムダ打ち含め相当魔法を使ってきた魔術師のMPが少なくなって来てるんだ。


実は結構ヤバいと思う。


「ちっ!打たれ強いな…!HPどんだけあるんだよ」


魔術師がグチるあたり、本人もヤバいと思ってるんだろう。


「アイカちゃん、そろそろイケる~?」


「大丈夫!思いっきりやって!」


「俺、もう魔力ピンチだし。チャンス1回だけだから!」


魔術師が、これまでとは明らかに質が違う魔法を詠唱し始めた。一心に詠唱し、かなり長い時間をかけて、魔力を集中させている。


一方で、女戦士も大技のためか、剣を構えて精神統一している。


二人が集中出来る時間をなんとか作りだしているのは、なんとヘボい筈の男戦士。エアドラゴンの攻撃を一手に引き受け、傷を負いながらも凌いでいるのは立派だ。カフェの観客はハラハラした様子で見守っている。



魔術師のフードが外れ、髪が宙に舞い始める。彼の両手に極限まで魔力が集中した、そう思った瞬間、……いきなりそのデカい魔力が両手から消失した。


「ギエェェエェェ!!」


同時に空から発っせられる、苦悶の叫び。空では、エアドラゴンを中心に、巨大な黒い球体が発生していた。


まさか…!

俺だって、長い人生でも一度しか見た事がない。


「あれは……重力魔法、だ…」


自由を奪われ、エアドラゴンが地響きをたてて地に落ちる。突如発生した重力に、もがき苦しむエアドラゴン。


「アイカちゃん!翼だ!」


「分かってる!」


女戦士は高く跳躍し、エアドラゴンの翼目掛けて渾身の一撃を放った。無残にも、翼がダメージを受けて、ボロボロになっていく。


「うわ…派手にやられたわね…」


いつの間にか帰って来てたらしいルリが、モニターを見て顔をしかめる。


「うん…。あれじゃ飛べないよね…」


悲しげなユキのつぶやき。


マスタールームとは逆に、カフェは観客全員が、立ち上がり、拳を振り上げて、異常な団結で冒険者達を称えている。



そう、飛べないドラゴンの末路はもはや決まったようなものだ。


それから10分後、冒険者達の勝利を告げる、キーツの高らかな声が、ダンジョンに響き渡った。





結果として、オープン初日は大成功。


1週間詰め込んでもまだ余る予約を貰って、運営の見込みも立った。


ダンジョンは、5日開催して2日休み、のサイクルで、運営する予定だ。俺達には休みという概念はないんだが、ゼロにとっては重要らしい。


1日はダンジョンのメンテナンス、もう1日はゆっくりゴロゴロするんだ!


って譲らなかった。


確かに俺達、今のところ毎日朝から晩まで働き続けてるし、ゼロの言う事も分かる気がする。


スキル教室も沢山の生徒が集まり、明日から早速営業だ。


こっちは基本、午前が集団学習。午後は別料金で、希望者だけの個人レッスンの時間として設けてある。当然こっちが料金は高い設定だ。


ああ…それにしても、疲れた…。

営業時間が終わると、なんでこんなに疲れるんだか。


王子様に皆でお礼を言って、にこやかに見送った後は、ゼロと揃ってダウンだ。


ふかふかキングサイズベッド、最高!




「ぎゃふっ!」


夕方、またブラウに飛び乗られて起こされた。 悪気ゼロでニカっと笑っている。


「レイアスってヤツが、ししょー居ますか!って、来てるぜー!」


……そう言えば、来るって言ってたか…。


確かにこのペースだと、どっかで休みでも入れないと、疲労で死にそうだ。


とりあえず、連続開催のあと4日、頑張ろう…。

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