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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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今日からオープン!⑦

「ちょっ!危なっ!ホーリー??危ないじゃないっ!」


リリスは乱発射される聖魔法:ライトをギリギリ躱しているが、動けない魔術師は、結構くらってしまっている。HPもかなりヤバくなってきた。


「ああん、もうっ!ホーリーったらぁ」


リリスも魔族だ。

あたったらヤバいのは一緒だろう。


回り続けるホーリーをなんとか抱きかかえ、あっと言う間に逃げてしまった。

ホント、リリスは逃げ足は一級品だな。


嵐が去って、しばし呆然とする魔術師。


「………た…助かったぁ…」


実際は、魅了されたままの男戦士が、相変わらず女戦士とつばぜり合いしてるけどな。とは言え、女戦士とは実力が段違いだ。女戦士も手加減丸出しの、防戦一方だしな。


魔術師は、少しずつ体が動き始めたのか、回復魔法を唱えている。


ダメージが回復して、ホッと一息。


しかしそのまま、魔術師が一点を凝視して、固まってしまった。


……なんだ?

何かあるのか…?


俺も、マスタールームの皆も、つい魔術師の視線の先を追う。



え………?


あれって……まさか……



キーツの声が響き渡る。


「なんと言う事でしょうか!?今まさに!…今まさに、スライムメイジが分裂しています!私も分裂するところを見るのは初めてです!」


スラっちそっくりの体がふたつ、ミヨ~~ンと横に伸びた状態で真ん中で繋がっている。


横に横に、伸びる、伸びる。

そして、臨界点がきた。


プツンと離れて、2つの個体に。


2体のスライムメイジは、嬉しそうにポヨンポヨンと飛び跳ねた。


「か・わ・い・い~~!」


ルリが身をよじってシャウトした。


そ、そうか…?可愛いか…?

ちょっとだけ、キモかった気もするぞ?



「ま……また、スライム……」


呻くような声で呟く魔術師。

本当にイヤだったんだろうな…。


一瞬落ち込んだようだが、魔術師はすぐに頭を振って、自分に喝を入れる。そして女戦士にむかって、大声で叫んだ。


「アイカちゃん、そのバカ、グーで殴れ!思いっっきり!!」


弟を本気で殴れとか、酷いな…と思ったが、女戦士もいい加減イライラしていたらしい。気持ちいいくらいの左ストレートが、男戦士の顔面にクリーンヒット!


左ストレートだったのは、姉さんの優しさなのか、単に右手が剣で使えなかっただけなのかは分からない。 右拳よりは手加減されていた筈だが、それでも男戦士は綺麗な弧を描いて、飛んだ。


もちろん気絶している。


これって、リタイアにカウントすべきなんだろうか?ぶっちゃけHP自体はまだ余裕があるんだよな…。


困って思わずゼロを見る。


ゼロも困った顔だ。

…とりあえず、判断は戦闘が終わってからでもいいか…。



モニターの中では、女戦士と魔術師が、スライムメイジ達を前に、臨戦体制だ。


「アイカちゃん、マジで思いっきり殴ったね。荒療治で魅了が解ければ、って思ったんだけど」


ただし、会話は呑気なものだった。


「足引っ張り過ぎでしょう。愛の鉄拳制裁よ?」


女戦士もすました顔だ。


確かにこの2人だけになってからの方が安心感があるって、不思議なもんだな。それだけあの男戦士、足を引っ張ってる感がハンパなかったんだろう。


すっかり余裕がでた顔の冒険者達、ポヨポヨと軽く跳ねて、こちらもやる気マンマンの(多分)、スライムメイジ達。


カフェからも、熱い声援が飛ぶ。


「アイカちゃ~ん、頑張れ!」


「スライムなんかに負けんなよ!」


「グリード様、カッコいい~!」


くそー…アイドル並の人気だな。

よし!俺達も負けずに声援だ!スライムメイジ達を応援しまくるぞ!


その時、思いもかけないキーツのアナウンスが入る。


「皆さん、真ん中のモニター、プリンス・ロード!ちょっと目を離した隙にトラップにかかったようです!!」


ええ?今…?

空気読んでくれよ…。



見ればデカいアックスを持った大男が、底なし沼のトラップにハマっている。ただでさえ体も装備も重そうなのに、マドハンドがさらに引きずりこもうとして蠢いていて、俺でさえちょっとヒく光景だ。


意外とヤバい状況だな。


「オルガ!アックスを岸に投げて!重さを減らすんだ!」


魔法戦士が叫ぶ。


アックスを投げたのを見ると、魔法戦士はロープを投げた。なかなか用意がいいヤツらしい。


「バカ!まだ引っ張るなよ!僕の方が引きずり込まれるだろ!」


強そうなパワーファイターを一喝してから、魔法戦士は近くの地面から突き出た岩に、ロープを巻きつけた。


「オルガ、準備できたぞ!ロープを引っ張って、戻って来い!」


面白くなさそうにマドハンドを体から剥ぎ取っては遠くへ投げていたパワーファイター、その言葉を聞いて、猛然とロープを引き始めた。


さすがに力が強い。ロープのおかげもあり、徐々に体が泥から抜け始め、岸に近付いていく。もう少し、と言うところで新手の敵が現れた。


プチドラゴン2体だ。


気付くや否や、魔法戦士が走り出し、プチドラゴン達に襲いかかる。


これまではずっと、戦闘にはあまり積極的じゃなかった。多分、まだ沼から抜けきっていないパワーファイターから、出来るだけ離れたところで敵を食い止めようとしているんだろう。


なかなか男気があるじゃないか。


それを見たパワーファイター、「ばかやろう!」と舌打ちすると、力の限りロープを引っ張る。


ロープが切れるのが先か、沼から抜けるのが先か…。ハラハラするが、とりあえずパワーファイターの厳つい腕が岸にかかる。


戻ってきたマドハンド達が岸に上がるのを邪魔してはいるが、こっちはもう大丈夫だろう。


急いでキング・ロードのモニターに目を移す。本来俺が見ないといけないモニター、これだしな。



ん?


……あれ?


……どうなってんだ?これ…。


女戦士はこれまでのキレが嘘のように、剣を振る腕が鈍い。攻撃は一切当たらず、軽く避けられてばっかりだ。


「どんどんアイカさんのスピードが落ちて行きます!…これは、スピードダウンの魔法でしょうか!?」


キーツのアナウンスに納得。

この前覚えた魔法だな、確か。


「くっ!ちょこまかと…ムカつくわ!グリード!何とかならないの?」


「う~ん、アイカちゃんがノロくなってるだけだからね…。ゴメン。そういう状態異常は解除できない」


なぜか呑気に見ている魔術師。


戦士の方が魔法耐性が低いからか、女戦士が主にスライムメイジ達のターゲットになってしまっているようだ。


女戦士の攻撃を避けてはぴょんと跳ねて何か唱える。避けては跳ねて唱える。スライムメイジ達はその行動を繰り返していた。


この前も思ったけど、元になってるのがスラっちだからか…好奇心旺盛と言うか、覚えたの、使ってみたくてしょーがないんだな。



「グリード!何見物してるのよぉ!」


女戦士はかすりもしない攻撃に、もはや涙目だ。


「ごめんごめん、なんかこのダメな感じのアイカちゃん、久しぶりだな~と思って」


魔術師が詠唱を始めた時、スライムメイジが2体揃って女戦士に体当たりした。

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