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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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今日からオープン!④

すると、女戦士が「グリード」と魔術師に呼びかけ、男戦士を指差す。


魔術師は嫌そうな顔をしたものの、「しょ~がね~な~。アイカちゃんの頼みは断れねぇ」と呟くと、男戦士にツカツカと歩みより、石化解除の魔法をかけた。


すげぇな、あの魔術師。

石化解除なんて、そうそう習得してるヤツいないぞ。しかもヤツは嫌味なくらいの美形だ。


石化が解けて、バツが悪そうに礼を言う男戦士。パーティーの中の力関係が一気に分かるバトルだったな。


キング・ロードのバトルが一段落したところで他のモニターの様子を伺う。特に、今日がモニターチェック初日のユキは問題ないだろうか?


プリンセス・ロードのモニターには、楽しげにショッピングする女4人組の冒険者達が映し出されている。


女の子だけのパーティーとは珍しいが、まだダンジョンの初めの方の防具の店で、キャーキャーと騒ぎながら、あれが可愛い、これが似合うと、とっかえひっかえ試着を繰り返している。


まさかこのまま、タイムアウトしないだろうな…。不安がよぎる。ユキには悪いが、俺、このモニター担当じゃなくて良かった…!


違う意味で見守るのが大変だが、プリンセス・ロードは問題ない。続いてルリが見ている、プリンス・ロードのモニターを見てみると…。


こっちは男だけ、たった2人のパーティーだ。デカいアックスを持ったパワーファイターと、細身で中性的な容姿の…こっちも戦士なのか?軽鎧にレイピア装備の男。


「これって、戦士二人のパーティー?」


「一人は魔法戦士よ。まぁ、使える魔法は回復魔法だけみたいだけど」


ルリの答えに、納得。

回復だけでも使えるヤツがいると、冒険はぐっとやり易くなるもんな。


しかし、こういうパーティーは攻撃魔法がない分、素早さが高かったり、飛んだり、小さかったり、武器での攻撃がヒットしづらい敵には手こずる傾向がある。



彼らは今正に、そういうタイプの敵と戦っていた。


プチコウモリ3体と、マドハンド2体、ワイルドキャット1体。まぁ、攻撃力もさほど高くない、通常あまり苦戦しない筈の集団だ。


しかし、相性が悪過ぎる。


アックスを振り回してもヒラヒラと避けられ、上に気を取られている間にマドハンドに足を取られる。


泥まみれでもがいている所に、ワイルドキャットが鋭い爪で一撃を加える…。


はっきり言って、かなり残念な戦いっぷりだ。魔法戦士の方はともかく、戦士の方は結構レベルも高そうなのに…。


「こいつらって、レベルどれくらい?」


ルリがステータスを見て、呆れ顔。


「戦士はレベル11、魔法戦士はレベル7。…もうちょっとマシなバトルが出来ないもんかしら」


…手厳しいご意見を頂戴した。

まぁ、俺もそう思う。


ただ、こういうヘボパーティーを鍛えるために、このダンジョンはあるんだもんな。そう考えれば、役目としては正しく機能しているとも言える。


今日のプリンセス・ロードとプリンス・ロードの挑戦者はイマイチだな。自然、キーツの実況中継も、キング・ロードの冒険者達に偏りがちだ。


ちょっと他のモニターを見ている間に、キング・ロードの冒険者達は、次のバトルに入っていた。


「ハク、この魔術師、凄いよ!」


ゼロが興奮気味にこれまでのバトルの流れを説明してくれた。


戦うのはブラッドバット2体、ラフレシア1体、そしてメタルアシッドスライム1体。


ブラッドバットは盗賊が引き受け、ナイフ投げでダメージを与えている。巨大なラフレシアは戦士二人がかりで応戦中だ。


そして、メタルアシッドスライムと一騎打ちを繰り広げているのが、今ゼロの絶賛を受けている魔術師。


どの属性も魔法が効き辛い中、なかなかのダメージを与えているらしい。ゼロが驚いているのは、どの属性もそこそこ高レベルの魔法を放っている事だ。


普通は得意な属性がひとつかふたつ決まっていて、それ以外の属性は、覚えるのにメチャメチャ時間がかかる。自然、向いた属性の魔法だけ、高位の魔法を習得しているパターンが多い。


この魔術師のレパートリーの広さが、尋常じゃないらしい。


それでも魔術師は渋い表情だ。

ちっ、と舌打ち。


「マジで属性魔法、効きが悪いな。しょーがねぇ…あんま出したくなかったが…」


独りごち、聞いた事のない詠唱を始めた。


「ヘル・ファイアー!!」


まさかの闇魔法!


メタルアシッドスライムの体は、黒い炎にまかれている。 その様子を、厳しい表情で見ている魔術師。


いきなり、キーツの声が響き渡った。


「闇魔法!…闇魔法を放ちました!全属性魔法に続き、闇魔法まで飛び出した!彼は一体何者なんでしょうかぁ!」

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