ダンジョンボス、召喚!③
「どうした?」
「あのさ、そういえば、レア度コンプリートで次のレア度のモンスター召喚出来るようになってたよね?」
「…そっか、その手があったか」
ブラウやホビットは、その目的で召喚したんだった。その後は、召喚出来るモンスターの種類が増えたから、気にしてなかったな。
確かレア度2の妖族まではコンプリートした筈だ。レア度3の妖族をコンプリート出来れば、今度はルリと同クラスのレア度4が召喚出来る。
うん、なかなか期待出来そうだ。
ゼロが早速ダンジョンコアに向かった。
「え~と…モンスターの系統と、あと何種類でコンプリート出来るか、状況出してくれる?」
あれ?
妖族のコンプリートじゃないのか?
ゼロは真剣な面持ちで、映しだされた一覧表を凝視している。
一覧がモニターに映し出される。
スライム族:レア度2 あと8種
亜人族:レア度2 あと4種
獣人族:レア度1 あと2種
水棲族:レア度2 あと3種
植物族:レア度2 あと4種
不死族:レア度1 あと7種
魔具族:レア度1 あと4種
幻獣族:レア度2 あと2種
虫族:レア度1 あと7種
妖族:レア度3 あと3種
獣族:レア度1 あと4種
鳥族:レア度2 あと5種
魔族:レア度2 あと4種
天族:レア度2 あと3種
龍族:レア度3 あと2種
へぇ…なるほど、こうやってみると、ピンポイントで、極めたい種族を考えられる。別に妖族にこだわらなくてもいい訳だ。
「う~ん…結構、獣人族や龍族が狙い目かもね」
確かに、あと2種召喚すれば、次のランクが召喚できる。
「そうだな。召喚してみれば?」
少なくとも獣人2種は、この前召喚しなかった、ネズミとウサギの事だろう。召喚しても害があるとは思えないしな。
「龍族はどのモンスターの事なのかな」
ダンジョンコアに確かめるゼロ。あんまり見ため、キモくも怖くもないといいんだが…。
検索の結果、龍族のレア度3に属していたのは、俺にとっても意外な顔ぶれだった。
コカトリスと、シードラゴンだ。
「えっ、コカトリスって龍族!?」
「俺もびっくりだ」
俺も鳥族だと思っていた。仲間意識は一切ないな。
あれかな?
雄鶏と龍が混ざった姿をしているから、龍族に分類されたんだろうか。ただ、このラインナップなら、召喚してもゼロ的にOKらしい。獣人2種含め、各一体ずつ召喚する。
コカトリスは意外と小さく、体長150cmくらいだ。まあ、レベル10前後の冒険者であれば、対等の戦いができる。こいつはプリンス・ロードに配置された。
シードラゴンはイルカのような体に、4つのヒレ。素早く泳ぎ、鋭い歯で攻撃してくる、海では手強い敵だ。もちろん、キング・ロードの海を守ってもらう。
あとは、獣人達だが…。
「か・わ・い・い~!!」
ルリが身を捩って喜んでいるのも頷ける、絶大な可愛らしさ。リス同様、体長100cmくらいの、真っ白いネズミと黒ブチのウサギ。どっちもつぶらな真っ黒でまんまるな瞳が可愛いすぎる。
なんかもう、マスタールームのマスコットでいいんじゃないかとも思うが……そういう訳にもいかないか。
「二人とも、得意な事とかスキルとか、教えてくれる?」
ゼロが尋ねる。役目を決めずに召喚した場合は、こうして聞くしかないもんな…。獣人二人は、互いに顔を見合わせ、譲り合っている。可愛いが、あまり時間をかけるわけにもいかない。
「じゃ、お前から」
俺はネズミを指定した。
「私、私…。あの、畑仕事が得意です。家が農家で、ずっと野菜を作ってて」
モジモジしながら、ネズミが言う。
すると、ウサギが得意げに胸を張った。
「私めは音楽家でございます!一番得意なのはピアノでございますよ?ああ、わがマスターにも、私めの素晴らしい演奏を是非!お聞きいただきたい!」
うわぁ、ウサギはかなりお調子者な感じだな。見た目がかなり愛らしいからまだ許せるが、普通の男だったら相当ヒクかも知れない。俺の感想をよそに、ゼロは目を輝せて喜んでいる。
「二人とも凄いよ!ぴったりの仕事があるから、頑張ってね!」
満面の笑顔で断言した。
……???
そんな仕事、あったか…?
ゼロはまずはネズミに指示をだす。
「君は、錬金部屋横にある、錬金用の畑の世話をお願い。畑を拡張したかったら、いつでも言ってね!」
なるほど、マーリンの錬金用薬草畑か!
次に、お調子者のウサギに笑顔を向けた。
「君は、カフェにピアノを置くから、そこで生演奏」
ゼロはもう、ニコニコだ。
「ノリのいいアナウンスだけだと、なんか足りないなって思ってたんだよ。音楽だったんだね!きっと盛り上がるよ!」
…そうかも知れないが…。
このお調子者のウサギに、ノリのいいアナウンサーって…相当、うるさくないか?
速攻でピアノも召喚してやり、二人は早速持ち場についた。これからの活躍が(まあまあ)楽しみだ。コンプリートのための特に目的のない召喚で、ゼロ的に有能な人材をゲットでき、すっかり気を良くしたゼロ。
早速増えただろうモンスターのリストを確認する。
「おお!増えたっ!」
どれどれ…?
当然俺もルリも横から覗き込む。
「おーっ!予想どおり!」
「イケメンの予感がするっ♪」
予想通りの充実したラインナップに、皆テンションがあがる。ダンジョンコアに確認した情報も踏まえると、召喚出来るようになったモンスターのラインナップはこんな感じだ。
レア度2:獣人族4種(犬、猫、狐、羊)
レア度4:龍族6種(火蜥蜴、龍人(火龍・水龍・土龍・風龍)、エアドラゴン)
「うわぁ、どうする!?予想以上に人型が多いよ?」
「目移りしちゃう~♪」
選び放題だが、選択肢が多いと逆に悩む。
「う~ん…。龍人でいくと、火龍と風龍はノリのいいヤツが多いけどな。ただ、プライドが高いヤツも多いな。…獣人は…どうだろうな。羊以外は、いけそうかもな」
あくまでイメージだ。
「あー…ただ、龍人はドラゴンに進化したがるヤツも多いから、アナウンスが仕事とか、嫌がるかもな」
「…確かに、リリスの時みたいになると困るよね」
結局、アナウンサーには、獣人の中から狐を選ぶ事にした。ついでにボスもエアドラゴンで決まりだ。
ドラゴンの中では小ぶりだが、それでも体長3mはある。飛ぶし風系魔法も豊富だし、なんと言ってもスピードが早い。
そして見た目がドラゴンらしい。




