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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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ダンジョン、改良。②

「どうした?」


「だってあの喜びよう見たら…今まで放っといて、凄い悪かったなぁって…思うよね。普通に」


まぁな。正に俺も今、スキル教室のスタートに反対したのを反省している。


「あの子達も元気になったんだから、もういいじゃない。むしろこれからが大変よ~?メチャメチャ張り切ってるから、暫く振り回されるわよ~?」


ルリ、楽しそうだな。

仕方ない。ここは詫びの気持ちを込めて、少々の事には目をつぶろう。


…例えエルフ達が、暴走したとしても。



「うぅ~…」


ああ…エルフ達の大騒ぎが聞こえていたのか、ユキが起きてしまった。


早くも最初の犠牲者発生だ。


「あ、ユキ!大丈夫?」


ゼロが走り寄る。

抱きしめられて苦しそうだが、それでもユキはちぎれそうなくらいしっぽをフリフリしている。


やっぱ癒されるな~。

俺的にはこの可愛いワンコの姿でいて欲しいもんだが…。



「さっきユキさぁ、レベルが上がったらずっと人型でいられる、って言ってたよね?」


「言ってたな」


「どれ位レベル上げればいいんだろう…?」


皆して、う~ん…と唸る。

ユキも「キュ~ン…」と悲しそうな声を出しているところを見ると、自分でも分からないんだろう。


「とりあえず、5レベルくらい行く?」


「ケチケチしないで、10レベルくらい行っちゃえば?経験値は余裕あるんでしょ?」


ゼロとルリはいつもこうだな。俺は苦笑しつつ、「5レベルずつ上げてけば?」と仲裁する。経験値に余裕があるとはいえ、ボスキャラとか召喚して、レベル調整したりするかも知れないし。


そんなに湯水のようには使えない。


多分ユキの変化は魔力を消耗してるっぽいから、5レベルずつ上げていけば、変化するのにムリを感じなくなるポイントがある筈なんだ。


ゼロは、「ユキをレベル25にレベルアップ」とオーダーしている。そんなてきとうオーダーで、適正に経験値振り込んでくれるダンジョンコアって、ホント便利だな。


結果、ユキが負荷なく変化できるのはレベル30だと判明した。初めてゆっくりと、人型になったユキを観察する。


今まではすぐに倒れて、ベッドに運んでるうちに仔犬に戻ってたからなぁ。


ユキは全体的に真っ白だ。肌も白いし、髪も白い。服は当然真っ白だ。普通なら儚い印象になるんだろうが、黒のでっかい瞳はイキイキしていて、とてもヤンチャそうだ。ピンと立った耳と、くるんと巻き上がったしっぽも、元気の良さを感じさせる。


「これでユキも、もっと役にたてる!」


ユキは満面の笑顔だ。

うん、これはこれで癒されるな。


「うん!これからもよろしくね!」


ゼロは笑顔で答えた後、小さな声で付け加えた。


「あのさ、時々はわんちゃんの姿にも戻ってくれる?」


…ぜひお願いしたい。

ふかふか、もふもふが、もう触れなくなるとか、地味に凹むし。


「分かった!どっちにしてもこの姿、魔力消費するから、必要な時に変化するようにするね?」


ふかふか、もふもふも確保でき、人員も確保できて一安心だ。



ユキの変化が安定したところで、皆へお披露目も兼ねて、晩メシにする。ユキはチビ達に交じってすごく楽しそうだ。やっぱり、会話が成り立つのが嬉しいんだろうな。


女性陣にも可愛い、可愛いと大人気だ。


癒しの力は人型になっても衰えないな…。変に感心しながらメシをかきこんでいると、今夜もカエンがやってきた。


「今日はカフェで晩メシかぁ?マスタールームに行ったらスラっちしかいねぇし。一生懸命プルプルされてもなぁ。…さすがに意味がわからん」


スラっちなりに、居場所を伝えようとはしてくれたらしい…。


「おっ?お前、ユキか!白いな!」


感想、それ…?


相当がっかりな感想だが、それでもユキは、笑顔全開でいつも通り、カエンに飛びついている。しっぽもめっちゃ振ってるし。


本当に可愛いヤツだ。


がしがしとユキの頭を乱暴に撫でてから、カエンは「腹へったぁ!メシ!」と、我が家レベルで食卓につく。それを待っていたように、エルフを代表してか、ミズキがおずおずと話しかけた。


「あの…カエン様、明日は王宮に行かれますか?」


「ああ、なんか用かぁ?別に今から行ってもいいけどなぁ」


あんたはどんだけマメなんだよ!?


ミズキは「そんなっ!?つっ、ついででいいんですわ!」と、慌てふためいている。


まぁ、カエンにしてみれば、王宮は庭みたいなもんだろうし、転移の魔法で一瞬で行けるし…超気軽に行けるんだろうが。


「そんで?なんか頼みたいんじゃねぇのかぁ?」


促されて、ミズキがどもりながら、お願い事を口にする。


「あ、あの…以前お姫様と一緒にダンジョンに来た、お供の方々なんですが…。その、スキル教室が出来たら教えて欲しいと仰ってて…ただ、連絡先が…」


「ああ、分かった。いつから出来るって伝えりゃいいんだぁ?」


「え?あの、スキル教室は、ダンジョン本オープンの、翌日からのスタートが良いかと思っておりますの。本オープンの日に希望者を募ろうかと…」


言って、ゼロを見るミズキ。

ゼロはニコニコと頷いている。


「本オープンの翌日な、分かった。伝えとくぜぇ」


二つ返事のカエンに、エルフ達は「ありがとうございます!」と、声を揃えた。


「おい、カエン。あんた、あん時来た兵士達覚えてるのか?」


あまりに気軽に請け負うカエンに、さすがに不安になる俺。


「いや?覚えてはねぇが、問題あるかぁ?アラインやユリウスに伝えさせっから、大丈夫だろ」


エルフ達は、無言で青ざめている。


守護龍を使いっぱしりに、新米兵士への伝言を、王子様に頼む…。

そのシチュエーション、俺でも嫌だな。


「まぁ任せとけって!それよりこのカフェ、ちっと改造したかぁ?」


もう別の話題に変わってしまった。

カエンにとっては、あれしきの頼み事、ホントにどうでもいいらしい。


カエンの問いには、シルキーちゃん達とチビ達が、総動員で答えてくれている。


よっぽど嬉しかったのか、トマスはカエンを引っ張って、自販機前まで連れて行くと、お金を入れてジュースを出して見せている。


大袈裟に驚くカエン。

チビ達はそりゃあもう得意げだ。


微笑まし過ぎる…!


「カンペキにお父さんね」


呆れたようにルリが呟くと、エルフ達もカエンを目で追いつつ同意する。


「気性が荒いと有名な火龍とは、とても思えませんね」


インテリっぽいエアルがさも驚いたように言い、おどおどコノハはうっとりとカエンを見ている。


「優しい方です…」


エルフ達の中で、カエンはすっかり株をあげたようだ。



食事が終わると、各自持ち場に戻る。


チビ達は食後はルリ先生の礼儀作法講座を受けているが、今日からはユキも生徒になっている。


人型になった時、普通に人間の子供らしく振る舞うためにも、重要だからだ。


「じゃ、師匠も特訓しなきゃなぁ。必殺技でも教えてやろーかぁ?」


くっ…レイのせいで、皆からちょいちょい師匠!ってからかわれるんだが。


でも、必殺技とかがあるというならありがたい。俺達はその夜遅くまで、マジで特訓した。

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