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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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スタート前の顔合わせ

爺さんたちがワイワイとにぎやかに飯を食ってる間に、俺たちはざっくり打ち合わせすることにした。


俺なんか爺さんたちの「たのもう!」で起きたんだから、もちろんメシなんかひとくちも食ってないわけだがもうしょうがない。モニター見ながら食うか、と腹を決め、会話に入る。



「このレジェンドのお爺さんたち、前にダンジョンに来てくれた人たちだと思うんだけど」


「ああ、そうだ。レジェンドの中でも実力No.1のパーティーだったが、未だに誰も欠けてねえし、全員そこそこ元気だからなぁ」



ゼロが問えば、カエンもこともなげに答える。俺も疑問をぶつけてみた。



「でも前の時は四人だっただろ? 武闘大会で優勝した爺さんもパーティーメンバーだったのか?」


「そうそう。マホロって名前なんだけどな、あいつがリーダーなんだよ。実力も一番だが頭も切れる、このダンジョンに挑むならあいつなしでは考えられねえ」


「へぇ、すごいんだね」


「寄る年波には勝てねぇとか言って前回はダンジョン攻略は見合わせたんだが、この前武闘大会で優勝しただろ? もう言い訳も効かねぇからな」


「俺その武闘大会での戦闘、見逃したんだよな」


「そりゃあ勿体ないことしたな。結構面白かったぞ」



そう言われると余計に悔しい。今度のダンジョン攻略は目ん玉かっ開いて見とかないと。



「じゃあ、悪いがよろしく頼むな」


「うん、大丈夫! 地下一階にはモンスターも配置したし、その時の状況を見ながら地下二階からはモンスターの配置も調整するようにするね」


「わかった」


「あ、カエン。これをレジェンドのお爺さんたちに身に着けてもらってもいい?」



そういってゼロが取り出したのは、人数分の黒っぽいイヤリングだった。



「なんだこりゃ」


「これまでより高性能なマイクとカメラが一体になったみたいなものだよ。やろうと思えば僕たちと通信もできるヤツなんだ」


「へえ、そりゃ便利だな」


「今回は試しに攻略してもらうから、そういう機能も必要かなって」


「分かった。渡しとく」



カエンが再び転移して爺さんたちにイヤリングを装着させたのを見届けると、ゼロがなにやらモニターに向かって操作を始めた。するとモニターには一斉に爺さんたちが映し出される。



「うっわ、なんだコレ」



思わず声が出た。


真ん中の一番デカいモニターにはいつも通り全員が入るようにフレームワークされている。


でも、それを挟んで上下二列×五個ずつ、計十個のモニターが一斉に映し出された。


上のモニターには一人ずつがアップで映され、その下にはどうやらその人物から見た視点が映し出されているみたいだ。



「あ、ちゃんとうまく映ったみたいだね」


「なんか目が混乱する……」


「うん、普通は真ん中のモニターだけ見てればいいよ」



そこにカエンがフッと現れた。



「もう初めていいぞ。……って、うわっ! すげえな、こわっ!」



分かる。ちょっと怖いよな。



「ねぇゼロ、この下の方のモニターってもしかして、一人一人が見てる景色ってことかしら」


「うん。さっき渡したイヤリングからの映像だから本当はちょっと純粋な目線からはずれてるんだけど、割と近いものが映されてるはず」



なるほど、あのイヤリングか! と納得した。ゼロも変わったことを考えるもんだ。



「今回はパーティーが分断されるような仕掛けも結構あるし、何をヒントに謎を解くのかとか、シーフの人がどうやって解除試していくのかとか、そういう細かいことも分かった方が改良とか冒険者の人へのアドバイスに生かせるかなって思って」



カエンが口をあんぐりと開けたままモニターに見入っている。その横でおもむろにゼロがマイクに向かった。



「今日は来てくださってありがとうございます。まだ試作なので物足りないところもあるかもしれないんですけど、よろしくお願いします」


「! おー! ダンジョンの中にそんな部屋があるのかい。指令室みたいだな」



さっきカエンがマホロと呼んでいたこのパーティーのリーダー爺さんが面白そうに眼を輝かせた。その言葉に俺たちは顔を見合わせる。



「いつもお客さんたちが見てるモニターにこっちを映してるんだ。協力してもらうんだから、こっちも顔を見せないと失礼かなって思って」


「そーいうのは先に言っといてよ! 最高の笑顔を作っといたのに!」



ルリの抗議はもっともだと思う。なんせ向こうに映し出されてるなんて思ってもみなかったから、俺は寝起きのボサボサなままの頭だし、ブラウとユキはまだご飯をハグハグしてるし、日常感が丸出しだ。



「カエンもそこにおるのか。ダンジョンマスターの部屋っつったら心臓部じゃろうに」


「うちの王家も危機感が足りんと思うとったが、ここのダンジョンマスターももうちょい危機意識持ったが良くないかのう」



なんて爺さんたちに心配される始末だ。


それでも爺さんたちの雰囲気は柔らかくなったから、ゼロの判断はきっと間違ってなかったんだろうと思う。



「ええと、ダンジョンを攻略しながら、これまで体験したダンジョンの話を教えてくれるって聞いてます。普通に話してもらえたら、こんな感じで会話ができるので……」


「わかった、よろしくな」


「早ようダンジョンに案内せい」


「筋肉バカは待てもできねえのか」


「なんじゃと!?」


「始まった。いくつになってもお前たちは変わらんのう」



早速戦士爺さんと魔術師爺さんが揉めはじめる。にぎやかな冒険になりそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次回、ダンジョン調整開始! 幾つになっても変わらん爺さん達よw
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