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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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聞きたいことは

そんなゼロを見てフフ、と笑ったアライン王子は颯爽と席につくと、俺たちに自分の後ろに控えるようにと早速指示を出す。



「まもなくクリームヒルト王子とあの従者……なんて名前だったっけ?」


「たしか、ファンテだったと思います」



アライン王子の呟きに、ゼロが即答する。すげえな、ゼロ。俺なんか名前全然覚えられねえのに。


ゼロの答えに満足そうに頷いたアライン王子は、目を細めて言葉を繋ぐ。



「そうそう、そのファンテ殿が入ってくると思う。この会食は彼らゲストと王家の者、それにカエンだけが同席する、ごく内々のものだ。あまりかたくならなくていいからね」



それを聞いて、ゼロがホッとしたように息をついた。気持ちは分かる。強面のおっさん達がズラッと並んで腹の探り合いしてるような場所、居るだけで息が詰まりそうだもんな。


その点、そのメンツならまだマシな気がする。



「まあお互い完全に腹を割って話せるわけでもないんだけどね。あの方はああ見えてかなり切れるお方だと聞くし、特にダンジョン系のことは各国で問題になっているから、少しでも有益な情報交換ができればいいと思ってるんだ」


「クリームヒルト様は身分を隠してたくさんの国を旅していらっしゃるとか。私たちもお話を聞くのが楽しみですが……きっとゼロ様も、この世界の理解を深める機会になると思いますわ」



穏やかな笑みで俺たちに説明してくれるアライン王子とエリカ姫の様子に、少しだけ驚いてしまった。こうして見るとやっぱり一国の王子・王女なんだな。


これまではダンジョンに来てくれる二人に会うだけだったから、どこかくだけた雰囲気だった。


でも今の二人は、やっぱりどこか王族としての品格を感じる。



「この世界の理解……」


「ええ、ゼロ様はあまりダンジョンの外にはお出にならないでしょう? 実際にその地を歩いた方のお話は、とても参考になりますもの」



虚を突かれたような顔で呟いたゼロに、エリカ姫がにっこりと笑いかける。アライン王子も、エリカ姫の言葉を肯定するように、深く頷いた。



「そうだね。僕らだって他国の情勢はこうして伝え聞くことしかできないからね。新鮮な情報は貴重品だ。この機会を大切にしないとね」


「そうか……そうですね。確かに僕、他国の情報どころか、この国のこともあんまり理解してないかも」



ゼロがそう言うのも無理はない。なんせこれまでは、ダンジョンを構築して、うまく運営していくことで精一杯だった。


ダンジョンの中より安全なところなんかないから、町に出ることすらほぼなかったしなぁ。まぁ出たいと言われたところで、正直俺は反対したと思う。


ゼロにとっては軽く軟禁されたような状況だったのかも知れない。



「他の国の話かぁ、ちょっと楽しみだな」


「ふふ、私もですわ」



ゼロとエリカ姫が嬉しそうに笑い合っていて、なんだかすごく微笑ましい。でも、俺もぶっちゃけ楽しみだ。色んな国の話が聞けるのは、確かに面白そうだもんな。


内心わくわくしたっていうのに、アライン王子はそんな俺たちを見て、困ったように苦笑した。



「まぁ、それも確かに楽しみではあるんだけどね、本題は他国の情勢やダンジョン情報だから、そこは心して聞いてくれよ」


「あ……」



一気に現実に戻った気がする。そっか、そうだよな。なんかユリウスがそんなこと言ってたよ、確か。


ゼロも一気に表情が引き締まる。


さっきも馬車の中でこんな顔をして考え込んでたけど、何か思うところがあるんだろうか。


ゼロは少し逡巡してから、おずおずと口を開いた。



「あの……王宮に来る時にユリウスさんから、今日はダンジョンの運営にも関わる話も出ると思うって聞いたんですけど……やっぱり、その、上級ダンジョンの話とかが主になるんですか?」


「うん、それは確実に話題になると思うよ。年々、上級ダンジョンの脅威は増してるし。ゼロたちのダンジョンの進化っぷり見てたら、ひと月前の情報でも遅いくらいな気がしてさ。正直怖いよ」



確かにそうかも知れない。


俺たちのダンジョンは、たかだか数ヶ月でとてもじゃないが初級ダンジョンとはいえない規模感になっている。個々のダンジョンの成長速度なんて、誰も明確にはわからないんだ。



「クリームヒルト王子から各地の状況を聞ければ、とりあえずは僕たちがもっている情報との乖離がどれくらいかは把握できるだろうし、そこからざっくりとした成長速度も割り出せるかも知れないし」


「そう……ですね」


「各国の対応も分かればいいんだけどね。クリームヒルト王子もお忍びで動いてることが多そうだから……」



そこまで話して、急にアライン王子は言葉を切る。


アライン王子の視線の先を追えば、扉近くに控えていたユリウスが、小さくひとつ頷いた。



「そろそろおいでになるようだ」



アライン様が俺たちに聞こえるギリギリの声量で短く言って、背筋を伸ばす。


俺とゼロも、慌てて壁際で居住まいを正した。


遠くで六つの鐘が鳴る。


扉が大きく開け放たれて、扉の向こうに人影が見えた。

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