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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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299/320

きいちゃん、かっこいい!

「うわあああああ!!!! キモッ! なんだよこれぇぇぇぇ!!!!」



登ってくるモノたちを半狂乱になって振り落とそうとするちびっ子魔女。



「きいちゃん、大丈夫~?」



自分だって気持ち悪そうにしているのに、ちびっ子魔女のあまりの狂乱ぶりに可哀想になったのか、ふくよかちゃんはなんとかちびっ子魔女を助けようとしている。


ちびっ子魔女の体によじ登ってくるモノを払おうとと頑張る、優しいふくよかちゃんに、ちびっ子魔女はキレ気味に怒鳴った。



「大丈夫じゃねーよ! ファウエルよく見ろ、こいつら……こいつら!」


「ええ~?」


「全部……ひとりひとり、ちっこいくせにアルドとビューの顔してるぅぅぅ」


「ええっ」



ぴたりと動きを止めて、ふくよかちゃんが目をこらす。ちびっ子魔女の体をよじよじと必死によじ登ってくるモノは……そう、俺の自信作、ひょろ長くんと筋肉男のミニチュアだ。


ゼロから供給してもらった軍隊アリに、小麦粉の見た目をコピーして持ち運びやすくしておいたんだが、そこにさらに二人の見た目をできる限り忠実にコピーしてみた。


俺の指令で二人によじ登っているわけだが、なかなか気持ち悪い仕上がりになって満足だ。



「ひえええええ!!!! アルドぉ! ビュー! どうしちゃったのぉぉぉ!」


「ばか、本物なわけあるか! 気持ち悪いマネしやがって、あのクマぜってー許さねえ!」



いやだって、ゴーストに筋肉男が乗っ取られたとき、かつてなく恐怖に満ちた顔してたから……やっぱそういう系のほうが気持ち悪いのかと思って。


だが、どっちかっていうと恐怖感というよりは、怒りに火がついてしまったらしい。


怒りにまかせてまだ足下でウジャウジャしている見た目小人な軍隊アリを踏み潰そうと、ちびっ子魔女が勢いよく足を振り上げる。



「だめえええ!!!」



その足下に、ふくよかちゃんが滑り込んだ。見れば軍隊アリたちをかばうように腕の中に囲っている。



「ホンモノがいたらどうするのぉ」


「いねーよ!」


「わかんないじゃん~」



すげえ。顔と言わず髪と言わずよじ登ってくる軍隊アリに噛みつかれたりしながらも、ふくよかちゃんは庇うのをやめない。なんという仲間思いな。



「ちっ……」



苦虫をかみつぶしたような顔で必死なふくよかちゃんを見下ろしていたちびっ子魔女は、冷たい声で一言、こう言った。



「あれだ、ホラ。だとしてもこのダンジョンじゃ死なねーんだろ?」


「きいちゃん、酷い~!!!!」


「あーもう、わかった!」



いらだつように自分の頭を乱暴にかき回し、ちびっ子魔女はその場でくるっと一回転。


ローブがひらりとに舞って、遠心力に耐えきれなかった軍隊アリがぽろぽろといくばくか落ちる。



「ちょっとは軽くなったか」


「きいちゃん?」


「諸悪の根源はあのクマだ。あいつを殺りゃあ、いいんだろ?」


「きいちゃん! かっこいい!」



目をキラキラと輝かせて、ふくよかちゃんが勢いよく立ち上がる。そのままバタバタと服やら髪やらにまとわりついている軍隊アリをできる限りはたき落とした。


そのまま軍隊アリの群れから逃れるようにひょいひょいと跳ねていく。そして後を追うようについてくる軍隊アリたちに宣言した。



「よーし、じゃあクマちゃんやっつけて、すぐに助けるからね。そこで待ってて!」



すまんふくよかちゃん、それ全部、軍隊アリなんだ……。



「よーし、元気出てきた! きいちゃん、特大のお願い!」


「! おう、任せろ」



ニッと笑ったちびっ子魔女に、ふくよかちゃんも思いっきり笑い返す。


ふくよかちゃんがすうっと息を吸ったのが見えた瞬間、全身に悪寒が走った。


なんだ!?


フッとふくよかちゃんが目の前から消えた。


…………上か!


見上げた瞬間、今度は横からもでかい気が膨れ上がるのが感じられる。



「杖はねえけど、なんとかなるだろ!」



ちびっ子魔女が練り上げたのは、彼女の姿が見えないほどの巨大な火球。まだあんな魔力が残っていたとは。



「いけえええええ!!!!」



ちびっ子魔女の手のひらから、巨大な火球が放たれる。杖で制御されていないからか、不規則な軌道で飛んでくる火球は、俺の周囲を守っている網の目のような防御網を焼き尽くしていった。


透明な網の目は彼女たちの目には見えていないだろうが、俺の武器がひとつ奪われたことになる。


瞬時に俺はちびっ子魔女の杖を拾って、自分の身代わりとしてクマの形をコピーした。



「っせりゃあ!!」



身代わりクマに、ふくよかちゃん渾身のプレス技が炸裂する。


うわあ、全身の形がえげつないほどひしゃげたな。



「せいっ、せいっ、せいっ、とりゃあ!」



そのまま連続した拳打から回し蹴りが放たれて、俺の身代わりクマさんはボッコボコにやられている。やわらかい綿がつめられた体は、蹴られ、殴られたところで痛くもかゆくもないだろうが、ボコられているのは視覚的に可哀想だよな。


おお怖い……と思いつつ、俺はミニチュア筋肉男に姿を変えて、ふくよかちゃんの服の裾にしがみついた。これならまあ、そう簡単にはばれないだろう。



「ファウエル、そのクマ変だぞ! ダメージ受けてる気がしねえ!」

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