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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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297/320

ホラーダンジョンの大トリは

悩んでいても仕方がない。俺は「よしっ」と気合を入れて立ち上がった。



「俺、一足先にボス部屋に行っとく」


「ハク、頑張ってね!」



ユキの素直な声援を背中に受けて、俺はひとりボス部屋に入る。


ジョーカーズダンジョンと名がつくだけに、鏡がランダムに張り巡らされたイカレた部屋なもんだから、入ったとたんに俺の姿が四方八方に映し出されてあまり落ち着く環境とは言えないが、それでもとりあえずは静かだ。


しばし沈思黙考する。


一人になって冷静に考えて見ると、そもそもの基準が間違っていることにふと気が付いた。


……そうだよ、そもそもゼロやひょろ長くんが対象じゃないんだ。ヤツらはもっと初歩の恐怖で脱落する。それくらいじゃ脱落しない三人がここまで残ってるんだもんな。


そう、恐怖だと感じるものは個人差が大きいんだ。


振り返ってみれば、今回のダンジョンで彼女たちが恐怖を感じていたシチュエーションは、あの大斧の筋肉男がゴーストに乗っ取られていた時だった。


常とは違う『違和感』や『わけのわからなさ』が、恐怖をあおっていたのかもしれない。



「……やってみるか」



俺は、目を閉じて強く強くイメージした。




************************



ゆっくりと、扉が開く。


良かった、なんとかここまでたどり着いてくれたんだな。考えた甲斐があった。


なかなか来ないから、もしかしてボーンドラゴンと漆黒の騎士にやられて、リタイアしてしまったのかとちょっと心配していた。


ただ、なぜか開いた扉からは、なかなか人影が現れない。



「……っ、なん、だ……ここ……」



弱々しい声とともにようやく姿を現したのは、ちびっ子魔女とふくよかちゃんだけだった。


しかも、歩くのもやっとなくらいにボロボロだ。ちびっ子魔女のローブはところどころ破れて焦げてるし、特にふくよかちゃんは打撲痕や切り傷が生々しい。


察するに、そうとうな激戦だったんだろう。あの頼もしい体躯の筋肉男は、残念ながら脱落してしまったようだ。


そっか、そういえばこのパーティには回復役がいなかった。なんせ回復の要である神官は、早々に気絶しちゃってたもんなぁ。



「鏡……?」



俺がじっくり観察している間に、よろめきながらもちびっ子魔女とふくよかちゃんが恐る恐るボス部屋の中に歩を進める。


きょろきょろと部屋中を見回しているのは、きっとこの鏡張りのボス部屋で、視界が極端に混乱させられているからだろう。


その頼りない姿に、俺はひとことだけ声をかけた。



「残ったのはふたりだけ?」


「誰だ!!!」



刺すような目で、ちびっ子魔女がまっすぐにこっちを見る。声がした方だってだけで俺を特定できたの、結構すごいな。



「……まさか、お前が、ボス?」


「うん」


「ふざけてやがる……! さっきのヤツの方がずっとえげつなかったぞ!?」



そりゃそうだ。漆黒の騎士とボーンドラゴンよりも強そう感がある姿なんて正直思いつかない。


だから、真逆をいくことにした。今の俺の姿は体長20センチくらいの、抱っこするのにちょうどいいサイズのぬいぐるみのクマさんだ。恥ずかしいが、できるだけ口調も幼さがでるように頑張っている。


ちなみにモデルはラビちゃんの部屋にあった、戦闘的なクマのぬいぐるみだったりするんだが、うまく化けられているだろうか。



「くまさん、可愛い」


「でも、俺、強いよ」



ふくよかちゃんが触りたそうな、物欲しげな顔になっている。


悪いがもうちょっと緊張感を持ってもらおうか。俺なりに、ホラーダンジョンにふさわしい趣向を考えてあるんだから。



「いい度胸だ! オマエくらいなら、アタシとファウエルで充分だ、ビューとアルドの分まで、きっちり落とし前つけさせてもらうぜ!」



威勢よく言い放ったちびっ子魔女は「行け! ファウエル!」とふくよかちゃんをけしかける。


多分、魔力だって残っちゃいないんだろう。


だが、こっちもそれは織り込み済みだ。肉弾戦、こっちだって願ったり叶ったりなんだよ!



「あれ!?」



俺に一直線に襲いかかってきたふくよかちゃんが、驚きの声をあげる。


それもそのはず、俺にはかすりもしていない。



「痛っ……」



急に自分の体を抱きしめて、ふくよかちゃんが膝をつく。



「なんで……?」



頬から。腕から。太ももから。ありとあらゆる皮膚から、赤い血が流れる。


俺がクマのぬいぐるみの姿だったからか、ふくよかちゃんも少し手加減をしていたらしい、勢いが少なかったのが幸いしたようで、どの傷も浅い。


ルリだったら軽い回復魔法で簡単に治癒してしまえそうな傷だ。ただ、一瞬にして体中できた傷から鮮血がにじむ姿は、強烈に痛々しい。



「ファウエル! 大丈夫か! 今、何が……」


「分からない。かすりもしなかった」


「アイツ、動いた様子もなかったのに!」


「来ちゃダメ!」



ふくよかちゃんに駆け寄ろうとしたちびっ子魔女を、ふくよかちゃんが厳しい表情でとめた。



「ファウエル、お前、背中にまで傷が! もしかして魔法か……?」


「わからない。一瞬だけ、全身にすごい抵抗があったの。罠があるのかも」



二人の目が、俺の小さな体に注がれた。

深夜になったので、ゼロのダンジョンを一斉更新します。

ネット小説大賞で「ゲーム部門」なる面白い企画があるので、ゼロのダンジョンを応募してみようと思っています。

規定のページを入れたり、改稿してた分をまとめたり、色々するのでご迷惑をおかけします……。

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先日完結しました。首席騎士様が強いのにカワイイとの感想を多数いただいております(笑)

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