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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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では、飛ぶか

スラっちが跳ねる度に排出される水が、まるで土砂降りのように第八王子とソバカス従者に降り注ぐ。


そして絶え間なく降り注ぐ水分は、見る間にボス部屋を満たしていき、今ではそばかす従者の太ももあたりまでが水に浸かってしまった。


足を進めるのも一苦労のような二人の様子に、俺は水の力の強さを思い知る。



「ううむ、よほど我らの動きを封じたいらしいのう」


「らしいのう、って言ってる場合ですか! これではろくに動けません!」


「しかし見よ、あやつも大分萎んだぞ、これ以上水は吐けまい」



確かに第八王子の言うとおり、スラっちの体はもう普通サイズまで戻ってしまって、もはや水の上にぷかぷか浮いているレベルだ。


それでも機動力は衰えていないようで、ピョンっと水面から飛び上がったと思ったら、二人めがけてどでかい火球を吐き出した。


なんとも今日は容赦がない。それだけ強敵だという事だろうか。



「これはマズイ」



第八王子が手をかざすと、二人を守るようにシャボンのような透明な球体が現れた。火球はその薄い膜に阻まれて、二人を避けるように通り過ぎていく。


巨大な火球は防いだものの、シャボンも見る間に弾けて消えてしまったところを見るに、きっと簡易的なバリアだったんだろう。



「ううむ、継続的な守壁を張るには集中力が必要であるしのう。しかしそれでは攻撃ができぬなあ」



困った困ったといいつつもどこか呑気な第八王子の前で、そばかす従者は苦虫を噛み潰したような顔でギリギリと歯噛みしている。


たぶん水にどっぷり浸かっているせいで、足をとられてうまく動けず、自分がなんら戦力になれそうにない事がとても悔しいんだろう。



「ふむ、飛ぶか」


「ふおうあっ!?」



小さく呟いた途端、そばかす従者から変な音が漏れた。


見れば腕をじたばたと動かして……あれ? なんか、浮いてきてないか?



「ちょっと! ひとこと言ってくださいよ!」


「いや、すまぬ。だがこれならお主も戦えよう?」



水からふわりと浮いて、第八王子が微笑む。



「まあ、そうですけどもっ!」



なぜか悔しそうな表情のそばかす従者は、水から体が出たとたん、スラっちに向かって猛突進していく。対するスラっちは嬉しそうに水面でぴょんぴょんと跳ねていた。


嬉しそうだな、スラっち。


強敵の予感にスラっちも興奮しているんだろうか。



「よし、ゼロ」


「あ、なに? カエン」



急にカエンがゼロを呼ぶ。



「ちょっと王宮に行ってくる。話は通しておくから、あの王子と従者、スラっちとの闘いが終わったら王宮に案内してやってくれ」


「わかった。けど」


「けど?」


「どうしよう、誰を派遣した方がいい? 僕はダンジョンに外部の人がいる間はさすがにダンジョンを空けられないし」


「そりゃそうだ」



チラリとカエンの視線を感じて顔を上げると、バチリと目が合った。



「俺は無理だぞ。ジョーカーズダンジョンの奴ら、まだなんとか踏ん張ってるし」



そうなんだ、あの筋肉男がゴーストの憑依から回復した後はそれなりに順調に進んでいっている。


あの先がゾンビやボーンビースト系の物理が利くタイプの敵だったことも手伝って、筋肉男のアックスがゾンビを切り裂き、ふくよかちゃんの思いがけず素早くて苛烈なキックがボーン系の敵を砕いているのだ。


チビっ子魔女の魔力をそれなりに温存して進めている点を考慮すると、運が良ければボス部屋までたどり着けるかも知れない。


ジョーカーズダンジョンのボスである俺も本気でお相手しなければなるまい。



「そうか、だよなあ」



渋い顔のカエンに、ルリが「はいっ」と勢いよく手をあげた。



「私が行くわよ。王子サマにも久しぶりに会いたいもの」


「いやいや、ケガ人が出たらどうすんだよ、癒しの女神」



思わずツッコんでしまった。ルリときたら、ダンジョンでケガした男どもを優しく回復してくれると、今や『癒しの女神』なんて呼ばれているのだ。人気でいけばキング・ロードのリリスよりも人気だったりする。


しゃべらなければ美女だもんな……。



「大丈夫よう、だって今日、あと残ってるのなんてニューハーフの皆さんとごっつい斧男だけじゃないの、つまんないわぁ」


「いやいや、客を選ぶなって」


「ふふふ、まあ、いいではないですか」


「グレイ」


「私が王宮に向かってもいいのですがね、ルリさんにも潤いが必要でしょうし」


「グレイーーー! ありがとう!」



苦笑しながらそう提案したグレイに、ルリはもう抱き着かんばかりに喜んでいる。



「ま、いいか。ルリ、個性強そうな二人だが、あれでも王族とその従者だ。失礼がないようにな」


「まっかせて! これでも外面は超いいの♪」



それは自慢ではない気もするが。カエンのお許しも出たし、ゼロも笑顔で「じゃ、よろしくね」って言ってるし。まあ、いいのか。


そう考えているうちに、なぜかルリにぐいっと押しのけられた。



「ハクはそろそろジョーカーズダンジョン見といた方がいいわよ。こっちは代わるわ」



う、それはそうかも知れないが。



「さあ、私が直々に見守ってあげるから、スラっち、早くやっつけちゃってちょうだい!」



そうとうに私情が混ざってんじゃねえか!


今、コンテスト用で『改訂版ゼロのダンジョン、進化中!』も投稿しております。


ハク以外の視点が入ったり、仲間の成長などにももっとフォーカスしていくので、もし良かったらそちらもご覧くださいませ。


こっちももちろん、更新していきますよ・:*+.\(( °ω° ))/.:+

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