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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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凸凹パーティー

まず目に入るのは、イカツイという言葉ではいい表せないくらいデカいおっさん。


2mを軽く超えるような巨体は筋肉隆々だが、何と言っても上半身の筋肉が凄い。普通の大人の肩幅の三人分くらいはあるんじゃないかって迫力だ。首の筋肉も盛り上がっていて、人間の体って鍛えるとこんなに盛り上がるもんなのかと素直に感心する。


背中に担ぐアックスは使い込まれた感のある、巨大な物だ。まるでミノタウロスが持っていそうな、と言えばいいんだろうか。でも不思議な事に、思ったほど威圧感を感じない。


何でだろうとよくよく見たら、なんだか顔が……いや、失礼だと分かっちゃいるが。


顔が、なんとも愛嬌がある。


でっかい丸顔に小さいくせにまん丸い目、団子っ鼻にでっかい口。若干目と目の間が離れているのもこれまた愛嬌がある。


おっさんだというのに思わずなんかじっくり見てしまった。



そしてその横には10歳くらいの身長しかなさそうな、つり目の可愛い女の子。ただし年齢は不詳だ。


お化粧してるのは背伸びなのかそれともそれが妥当な年齢なのか。魔女っぽいトンガリ帽子に杖とローブという出で立ちにツンとすました表情からは年齢までは察する事が出来なかった。


なんだか不満そうな顔をしてるから、この子の意思でダンジョンに来たんじゃないのかも知れないな。唇トンがってるし。


その後に続くのはヒョロっと長い男だった。


身長だけはあのイカツイおっさんとおんなじくらいあるんじゃないかってくらい長いけど、その上さらに長い神官帽を被ってるから余計に長い。繊細なおちついた色の金髪と秀麗とも言える顔にはモノクルがとても似合っている。


入って来た瞬間はキリリとしたインテリ眼鏡風だったのに、周りを見回した途端「ヒッ……」と小さく呻いたあと、俯いてだんまりを決め込んでいる。



最後に入って来たのは、なんというかとってもふくよかな女の子。


身長は150cmくらいだろうか、まあ小さいけど特筆すべきはやっぱりそのふくよかさだろう。全身がデカいマシュマロかと言いたいくらい丸くてふわふわそう。


でもなぜか見てると幸せになる感じのふくよかさだ。髪もふわふわ、ホッペもツヤツヤでほんのり赤い。にこにこのほほんとしていて憎めない。



ギルドで身体的特徴あるやつ集めたらこうなった、みたいな凸凹感のあるパーティーだった。



「おいアルド、アンタが行こうって言ったんだからな、もっとシャキッとしろよ!」



ちびっ子魔女が尖った唇をさらに尖らせて抗議する。しっかしまあ、口が悪いな、可愛らしい外見からは想像がつかない口調だ。



「いや、しかし、こんなダークな雰囲気、これまでは」



盛大にガクブルしているのはひょろ長い男。どうやらこいつが言い出しっぺらしい。



「あれえ〜? 毎回違うダンジョンだから攻略しがいがあるって言ってたような〜」



ノホホンとふくよかちゃんが口を開く。ひょろ長君はウッと口ごもり、地面をじっと見ている。ふくよかちゃんには悪気が一切なさそうなだけに言い返しにくいんだろうなあ、察するに。



「ああ情けない!いつもはえっらそーに人にあーだこーだ指示する癖に、まだ魔物も出ないうちにコレかよ!」


「仕方ないだろう、怖いものは怖いんだ、生理的なものだから仕方ないんだ!」


「うっわ、開き直りやがったコイツ!人の後ろに隠れながらついて来てる癖に偉そうに。ビュー、こんな奴の盾になってやる事なんてないんだからな!」



ビューと呼ばれた筋肉男は、口元を少し緩めただけで反論もしなければ反応もしなかった。歩調もダンジョンに入って来てからずっと一定で、周りの騒ぎにはとことん無頓着な様子だ。



「まあまあ、いいじゃないですか〜。こんなオドオドしてるアルドさんはレアですよ〜? せっかくだから堪能しましょうよ〜」


「くう……屈辱だ……!」



どうやらちびっ子魔女のストレートな悪口よりもふくよかちゃんのおっとり口撃の方がよっぽど堪えるらしいひょろ長君は、真っ赤になりつつもオドオド挙動不審な動きは治らない。


なんかこのオドオドな感じ、見慣れすぎてて新鮮味がないよな。俺は思わず、振り返ってゼロを凝視した。


うん、こっちでも安定のオドオド加減。ていうか。



「なんでゼロがそんなにビビってんだ? ダンジョンのモンスター配置もトラップや仕掛けも分かってるだろうに」


「だから怖いんだよ! だってもうすぐ」



ゼロが涙目でそう言った瞬間だった。



モニターの向こう側から、断末魔のような叫び声が響く。



「ほら! やっぱり!怖いんだってばもう、最悪だよ……!」



仕掛けた方が全力で怖がってどうする。耳を塞ぎ目をギュッと閉じているなかなか情けない感じの我が主人を生暖かい目で見てから、モニターに目をやれば。



「? 何もないだろ、だってここは」


「そーだよ!物理的には何もないよ、ヒンヤリした風が吹き抜けてくだけだよ! 触感だけあるのに何も無いのが一番怖いんだよ!」


「そんなもんか」


「だって真っ暗じゃん! 全体に気味悪いじゃん!変な音するし、僕の嫌なポイント再現し過ぎだよ、最悪だよもう!」



うわ、一息で言えるだけ言ったな。


でも確かにダンジョンのスタート部は、ゼロが怖いと思うシチュエーションをルリが詳細に聞き取って作り上げた薄気味悪い外観だ。ゼロにとっては最恐なんだろう。

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