生きてる天空のリゾートって素晴らしい
「そう……ですねぇ、天使さんならお勉強の邪魔とかもしないでしょうし」
ラビちゃんが考え考え、そう口にした。そうか、確かにここは学園都市みたいな側面も持たせる予定だったな、そういやそうだった。
魔族系とか多いと確かに誘惑が多そうだ。リゾート施設だけならそれでも面白そうだけど、教育施設でもあるってのは、そこら辺バランスが難しいかもしれないな。
「いきなり大量に天族が増えると確かに今の住人もびっくりするかも知れないから、最初はツバサくんだけにして、ちょっと慣れたらツバサくんの紹介でって事で天族増やしていけば、そんなに不審にも思わないと思うよ」
「そうか、確かにそうですね!」
ゼロの現実的な提案にラビちゃんも満面の笑顔を見せた。そうやって定期的に召喚していけば、入植者との人数バランスとるのにもちょうどいい筈だ。
なんだかんだ言って人が増えれば危険も増える。
ラビちゃんの身の安全を確保するためにも、一定数のダンジョンモンスターはやっぱり必要だしな。
「ああ~! ワクワクしますう~!!」
ちっちゃい拳を握りしめて、ラビちゃんが全力で叫ぶ。耳がピルピルと小刻みに震えて、すごく可愛い。
「なんだよ、いきなり叫ぶな、びっくりするだろ」
「だって、なんだか素敵すぎますよ!ルリさんから天空のリゾートって聞いた時も素敵だなあって思ったんです。でも、でも……!」
「お、おう」
面喰らった顔のライオウに、ラビちゃんは両の拳を上下にぶんぶん振りながら力説している。上気した頬はピンク色に染まって、若干鼻息もあらい。
「それがただの塔じゃなくって生きてる樹で作れるんですよ!?」
「そうだな、凄いよな」
「しかも!天使の皆さんが優雅におもてなししてくれるんですよ!?」
「ああ、そういう話だよな」
分かってるよ、そんなこと、とでも言いたげなライオウ。気持ちは分かる。
「なんかもう、夢みたいです~!」
今さら実感が湧いてきたのか、いきなりテンションMAXになったラビちゃんに、男性陣がついていけてないのが若干面白い。これだけ熱く語られても、微妙な顔で頷いているだけだ。
「子供たち、すっごく喜ぶと思いません!?」
「!そうだな、絶対喜ぶな!」
どうやらライオウもやっとラビちゃんに同感できるポイントを見つけたらしい、細い尻尾の先のふんわりした毛玉が嬉しげにゆったりと揺れている。
それが子供達が喜ぶってとこに反応しての事だと考えると、これまた面白い。
苦手だと言ってたわりにしっかり子供の事可愛がってんじゃねえか、ライオウ。ちょっとニヤニヤしながら見ていたら、ライオウがこんな提案をして来た。
「んじゃあ早速、ガキどもも集めて『生命の宿り木』でも植樹するか?」
「あ、いいですね!」
嬉しかったのか、ラビちゃんの耳も元気にピーンと伸びる。
「今なら男手も多いしな」
ニヤリと笑って俺たちを見るライオウ。
その日俺とゼロは、たっぷりこき使われて食堂で豪快なうまい飯をいただき、真夜中になってから、ようやく自分たちのダンジョンに戻ってこれたのだった。




