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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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生命の宿木

「うわぁ……これって、世界樹?」



ゼロを追ってマスタールームに入った俺達も、思わず息を飲んだ。スクリーンの中には巨大な樹が写し出されている。



「え……えっと『生命の宿木』って名前だそうです。その身に数多の生命を宿し、慈しみ守り育てる生命の揺り篭。成長が早く、日に10㎝ほど伸長し最大で……」



そこでいったん息を止め、ラビちゃんは不安気に俺達を見上げた。



「最大で、1000mにも達するそうです」


「うわ、見当がつかないな」



そうだろうなぁ、人間や獣人の住む街なんてだいたい二階建てくらいの高さありゃ充分だ。城ですら高さでいったら50~60mくらいのもんだろう。


まぁドラゴンは体もでかいしなんでもデカいのが好きだからな、その長命を活かして200m級のデカい城を作りあげる好き者も割といるらしい。


それでも1000mなんて俺でも聞いた事ないぞ?



「あ、でも任意の高さで成長は止められるって書いてあるよ」



ゼロがホッとしたように言う。良かった、それなら途方もない事にはならないだろう。



「苗木って言うか、設置するときの最初の大きさも決められるみたいだね。だから、いきなり巨大な樹を設置しなくてもいいんじゃない?」


「あ、本当……よ、良かったぁ」



ゼロの説明にラビちゃんも胸を撫で下ろしている。あまりにも大ものが出てきたもんだから、すっかりてんぱってしまって、細かい説明まで目に入らなかったんだろう。



「ふーん、じゃ自然の森との境めに植えりゃいいんじゃないか?」


「そうですね、他の木とおんなじくらいの大きさで植えれば、馴染みますよね」


「うーん、でも成長速度がハンパないから、特別な樹だって事は村の皆には行っておいた方がいいかもね」



ライオウとラビちゃんの会話に、ゼロが軽くアドバイスする。



俺も同感だ。色々な疑問や憶測が出てからよりも、最初から納得性の高い情報を与えておいた方が面倒がなくていい。



「そうだな、カエンから貰った不思議な樹だとでも言っときゃいいんじゃないか?」



軽い調子でそう言えば、ゼロも思いっきり乗ってきた。



「あ、それいいかもね! カエンだったらそういう人智を超えた物持っててもおかしくないもんね」


「なんせ建国当初からの守護龍みたいなもんだしな」


「うん、この近辺の国の人なら、それでなんとなく納得しちゃうんじゃないかな」



ラビちゃんもひとつ首肯いて、賛同してくれたようだ。うさ耳がピーン!と伸びて、楽しそうにピクピク動いた。



「それ、凄くいいかも知れません。街の皆と一緒に植樹して、育つのを楽しみにできます!」


「ああ、ガキどもも喜ぶな」



柔らかく微笑む顔ところを見るに、ライオウもなんだかんだ言って子供達を可愛がっているらしい。



「ラビちゃん、まだ続きがあるみたいだよ」



コアを覗き込んでいたゼロが、ラビちゃんを小さく手招きした。



「ほら」


「あ……本当ですね。えーっと、樹高が1mを超すと幹に空洞が発し、成長と共に空洞も巨大化します。この空洞-ウロには、様々な動植物の住み処となり多くの生命を育みます……ですって」


「へぇ、ちょうどいいじゃねぇか」


「そうだね、無駄に高い塔とか建てなくても、すっごく高いところに居住区とか造れるってことだもんね。うわー絶景だろうね」


「あ、なるほど!この樹を塔みたいに使うって事ですか……すごい……!」



ゼロの言葉にラビちゃんは夢見るように溜め息をついた。



「大~っきな大~っきな樹の中にある、天空リゾート……うわぁ……夢みたいですぅ」



確かに、大樹の木漏れ日の中で小動物と戯れながら絶景温泉に浸かるとか、寿命が伸びそうな癒し空間かも知れない。



「うん、ラビちゃん達にはぴったりかも知れないね。樹のウロだけじゃなくて、枝と枝の間に足場をつくって居住区作ってもいい感じだよね。きっと枝を渡る風も気持ちいいんだろうなぁ」



ゼロも楽しそうに呟いた。


確かに1000mもの巨大な樹なら枝ぶりも素晴しいに違いない。開放感たっぷりの広大な敷地が得られそうだ。もちろん子供が落ちたりしないような安全対策は必須だろうけど。



「なぁラビ、この樹って果物とか採れたりするのか?」


「え?さあ……特に記述はないようですけど」



ふと思いついたようなライオウの問いに、ラビちゃんは困ったように小首を傾げる。



「あ、ラビちゃん、コアに確認してみて。ほらここに付帯情報って項目があるでしょ? 画面に最初に出るのは基本情報で、まだ他にも聞けば確認出来る情報ってたくさんあるんだよ」


「ええっ? そうなんですか?」



どうやらラビちゃん、今まで基本情報だけを頼りにダンジョンメイクを進めていたらしい。



「わぁ……ホントだ、情報が増えた」


「で、どうなんだ?」


「はい、えっと……あ、実が生るみたいです」


「へえ、そりゃ楽しみだ。ガキどもが喜ぶ……って、食えるんだよな?」



「はい! えっと、季節を問わず可憐な白い花をつけ、交配により手の平大の丸く甘い実をなします。微かな芳香を年間を通して放つことから、近隣より昆虫、小動物を呼び寄せ……結果多くの動植物が集う場となることから、生命の揺り篭と呼ばれています、ですって」


「つまり、虫も動物も寄って来ちまうくらい、美味い実が生るんだな?」


「はい! 楽しみですねぇ!」



これだけ大きな樹に成長するなら、実だってさぞやたくさん生るんだろう。ここはたくさんの人を寄せる場所になるわけだから、安定した食料があるのはありがたいことだ。


こうして『生命の宿木』は、後で子供達と一緒に植樹するために2mほどの若樹として召喚された。


幹には既に小さなウロが形成されていて、これがどんどん大きくなって遂には人が住めるほどになるのかと思うと、すごく楽しみだ。

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