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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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ちょっとした周辺事情

「とりあえず海の向こうは放っとけ。まだ近隣諸国で手一杯だ」



アッサリとカエンが言う。

話を聞けば、現状はこの国を取り巻くお隣さん、そのまたお隣さんくらいの国までがギルドの守備範囲らしい。


それ以上向こうの国は行って帰るだけでも一苦労で効率が悪過ぎるため、よほどの報酬がないと動かないとか。転移魔法を覚えている輩は本当に少ないから当然かも知れない。


カエンの話を聞くと、このダンジョン配置も納得だ。助けてやれる範囲だけ、ダンジョンが駆逐されてるんだろう。



「ダンジョンコアでこんな……ダンジョンの分布やレベル感まで分かっちまうなら、急に色んな中級ダンジョンを潰しちまうのも良くねぇな。近隣諸国からの依頼にも慎重に応えていかねぇと」



カエンは火龍らしくもない慎重な事を言っている。



「うん、これ見て中級・上級ダンジョンに対応出来る冒険者の育成と、それを派遣するための仕掛けは必須だと思ったよ」


「派遣するための仕掛け……?」



冒険者の育成は勿論当たり前だが、派遣するための仕掛けってどういう意味だ?



「そう。いくら冒険者増産したって、討伐を頼まれたダンジョンにいくのに莫大な時間がかかったら無駄じゃない?」


「そんなのカエンに転移して貰えばいいんじゃないか?」



「俺様は運搬屋か」とグチるカエンはとりあえず放っておく。カエンだって忙しいだろうが、転移ならそこそこ近い場所まで行くのなんかあっと言う間だし。



「え、要所要所に拠点に出来るようなワープポイントなり、それこそ味方のダンジョンなりあるといいと思ったんだけど」



だ、大胆な!


「それはやめといた方がいいな。それくらいなら面倒でも俺様が冒険者を運んだ方がマシだ」



カエンが難しい顔で答える。



「ワープポイントなんか設けた日にゃ、攻めこまれるんじゃないかって近隣諸国がむしろ過剰に反応しそうだ」



え?まさか魔物じゃなくて、この国から攻めこまれるって心配か?ワープポイントでそれなら、ダンジョンなんか以ての外だな。



「お前達はまだ分からんかも知れんが、国防の問題は本当に微妙なんだよ。お前達のダンジョンを国の中に作るのだって相当揉めたぞ?」



それは宰相だっていう、小うるさそうなレジェンドから聞いた。



「ま、うちは俺様がいるからソコソコのリスクは負えるがなぁ、余所の国はそうはいかねぇだろう」



魔物からは助けて欲しいけど、他国から簡単に攻め込まれる状況になるのは避けたい……そういう事だろうか。はっきり言ってカエンが本気出しゃ、相当なダメージを与えられるだろうに。こだわる必要あるんだろうか。


あ、でもカエン単体だけとならちょっとは戦えても、屈強な冒険者やら騎士団までワープしてきたら目もあてられないって事か。


なるほどそりゃ由々しき事態だ。



「そっか、なんか色々難しいんだね。でも、カエンに冒険者運んで貰うのはちょっと無理があるから、転移の魔法が使える人はやっぱり必要な気がする」


「そうね、それはスキル教室の方で受け持つわ。適性ある子を見繕って覚えさせてもいいし」


「それなら風の属性持ちにしとけ。元々風属性の魔法だからな。俺様も習得にはそれなりに苦労した」



ゼロとルリの話を受けて、カエンがさりげなくアドバイスを出す。確かにかなり上位の魔法だから覚えるのにはセンスも時間も必要だ。


俺の指定転写のスキルが人にも使えるくらい上達してりゃ覚えさせるのもきっと簡単なんだろうが…まだまだそこまでいくには時間がかかりそうだしな。



「じゃあ派遣の仕組みについてはおいおい考えるとして、冒険者達の強化をどうするかを早速話し合おうか」


「ふふっ、待ってました!」



ルリは待ちきれない、といった様子で目を輝かせている。


召喚されたダンジョンモンスターの中じゃルリが一番ダンジョンマスター向きかも知れないな。アイディアも豊富だし代案を考えるのも早い。ただ、ルリが造ったダンジョンになんか絶対入りたくはないが。



「えーと、まずダンジョンの規模のイメージなんだけど。うちのダンジョンも中規模ダンジョンになるみたい」


「中規模の幅がどれくらいあるのかは分からねぇよなぁ。まぁこれまでの経験上、他国ではこの規模のダンジョンはまぁ普通にある」



ゼロの簡単な説明に、カエンも軽く頷いている。結構このダンジョンだってデカイし設備も整ってる。上位なんじゃないかとか、勝手に思ってたんだけど、そんなモンなのか。



「普通と違うのはむしろ進化速度だ。俺様の助力がデカいとはいえ、ここまでのスピードでデカくなっていくダンジョンは見たことねぇな」


「って事は、他のダンジョンは暫くは今の規模のままな可能性が高いってことか」



ひとまず安心して思わず呟いたら、カエンに満足そうに笑われた。どうやらカエンがいいたかった事をちゃんと理解出来たらしい。

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