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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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忘れてたダンジョン効果

そこからは不思議な光景だった。


ジャガイモ侍が上から、横から、斜めから…あらゆる方向から振り抜く刀はことごとくスラっちをすり抜けていくように見える。


まるで幽霊にでも斬りかかってるみたいでまあまあ不気味だ。


キラキラと回復魔法で輝くスラっちを前に、ジャガイモ侍だけが刀を振り回し勝手に荒い息をついている。



「ど…どうなっておるのじゃ?」


「しかとは見えぬが…最小限の動きで躱しておるのやも知れぬな」



巫女殿達も唖然としている。



「ぐぬぅ…なんたる屈辱!!巫女殿!ぼんやり見ている場合ではありませぬぞ!疾く浄めの呪法を!」



うわ、自分の攻撃が通用しないからってサラっと巫女殿に丸投げした。ジャガイモ侍…つくづく面倒な上にダメなヤツだな。



「拙者がこの憎っくき魔王をひきつけている間に、疾く!疾く浄めを!!」



さらに何気に自分の手柄感出してるしな。


苦労が偲ばれる…と、同情と共に巫女殿達に目を向けると、さすがに半目になっていた。気持ちは分かる。



「巫女殿…気持ちは察するに余りあるが、折角来た故浄めてみるも良いとは思うが」


「…分かっておる」



幻術士に一応返事はしているものの、巫女殿は乙女にあるまじき憮然とした表情だ。イライラMAXっぽい巫女殿の様子を知ってか知らずか、ジャガイモ侍のウザい叫びが追い打ちをかける。



「巫女殿ぉ~!!!何を眺めておるのですかぁ!いかに拙者でも、ひきつけるに限度がありますぞ!!」



いや、ひきつけられてないから。多分スラっち遊んでるだけだと思うぞ?しかも巫女殿の眉間がヤバい事になってるし。


見兼ねた幻術士が、大袈裟にため息をつきながら目を覆う。



「…ほんに仕様のない奴よ。後で我が拳にて制裁を加えると約束しよう」


「絶対じゃぞ?」



怒りからか若干涙目の巫女殿に、幻術士が深く深く頷いて見せた。


幻術士みたいな魔術職の鉄拳制裁なんか効き目あるんだろうか…とも思ったが、巫女殿にとってはそれでも充分なようだ。いや、もしかしたらあのゆったりした服の中身はムッキムキなのかも知れない。



「では任せた」



巫女殿はそうひと言呟くと、長ったらしい呪文を詠唱していく。ほどなく、巫女殿の体が眩いばかりに発光し始めた。みるみる大きくなっていく光は、莫大なパワーを秘めているようだ。ここまで温存していた巫女殿の力は、さすがに凄まじいものがある。



「!?……こ…これは…!」


「なんじゃ!?力の集まり方がかつてなく大きい…!?」



…あれ?


本人達も驚いてる?



そうこうしている内にも巫女殿に集まった光はギラギラと眩く収縮し、マグマのように小さなスパークを上げ始めた。巫女殿の変わった衣服もバタバタとはためき、所々溶けたように空に消え始めている。



「巫女殿!それ以上は危うい!」


「分かっておる!じゃが…こんな…!聖なる力の集まり方が常軌を逸しておるのじゃ!」


「莫迦な…!まさかこの場所が聖属性だとでもいうのか!」


「そ…そうとしか考えられぬ…!」



幻術士と巫女殿の焦りまくった声を聞きながら、俺も驚きを隠せなかった。



「そりゃ聖属性だが…それにしたって、そんなに影響あるのか?聖属性ったって(微)だろ?」


「ああ、今聖属性(弱)だよ?」



思わず漏らした俺の呟きに、ゼロが驚きの新事実を告げる。



「え!?いつから!?」


「2~3日前?前に属性(微)がついたの、2週間くらいかかったし、あれから1ヶ月半くらい経ってるから、妥当な期間じゃない?」



いや、それ俺の頑張りによる属性付与だよな?せめて教えて欲しかった。



「聖属性(弱)は確か、魔法の威力も25%アップだったと思う…」



25%!?

いや、25%ってデカいだろ!



「でも、そもそもあの巫女さんの聖魔法の威力が凄く高いみたいだよ?」



だから25%アップが余計にヤバいんじゃねぇか!!



「巫女殿!力が大き過ぎる!呪の解除を!!」


「無理じゃ!制御できぬ!解除出来ぬのじゃ!!」



巫女殿を取り巻く光の粒子は、もはや燃え滾るように激しくうねり、今にも暴発してしまいそうだ。特に力を集めている巫女殿の腕は、上下左右に不規則に揺さぶられて折れてしまいそうに頼りなくみえる。


苦しげに歪められた表情からは、集まってしまった力の凄まじさを感じられた。巫女殿の体が、一歩、また一歩と後ろに下がっていく。端から見ても、限界が近いのはもはや明らかだ。



「も…もう…堪え切れぬ…!」



その時、スラっちが突然飛び跳ね始めた。



必死に何度も何度も飛び上がり、その度にスラっちはもちろん挑戦者達にも淡い水色の光が降り注ぐ。



「まさか守りを高めておるのか!?」



驚愕の表情を浮かべた幻術士は、直ぐに気を取り直すと自身も呪文の詠唱を始める。


そんな中、遂に光の塊が爆発した。

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