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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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狼兄さんの任務

四方から矢継ぎ早に襲ってくる攻撃を、狼兄さんは確実にいなしていく。さすがに狼兄さんから攻撃する隙は無いようだが、さりとてチビ獣人達も有効な打撃が与えられるワケでもない。


次第に上手い組手を見ているような、妙な気持ちになってきた。


どうやらリリスも同じ気持ちだったようだ。


「なんだかつまんない、飽きちゃったわぁ。アタシが決着つけたげる」


言葉と共に、鞭の雨がチビ獣人達を襲う。狼兄さんに一発くれてやる事に夢中だったチビ獣人達は、完全に虚をつかれ、防御すらとれなかった。



ビシビシビシビシッ!!!



小気味のいい鞭の音が響く。

しかし、次の瞬間には、リリスから驚いたように小さな叫び声があがった。


「………きゃっ!!?」


リリスの手から、鞭が蹴り飛ばされた。


「…おいおい、美人がガキにそういう酷い事するもんじゃないぞ?」


狼兄さん!?



なんと狼兄さんは、片腕に二人ずつチビ獣人を抱え、なおかつその長い脚でリリスの鞭まで蹴り飛ばしたようだ。


「リ、リプト兄!」


「なんで!?」


助けられたチビ獣人達も、目をまんまるにして驚いている。


「…騙したわね?」


一方のリリスは蹴られた手首を庇いながら、憎々しげに目を眇めた。


「そんなに睨むなって。綺麗な顔が台無しだぞ?あんたにゃ悪ぃが俺にも遂行しなきゃなんねぇ任務があるんだよ」


狼兄さんは弁解するようにリリスに声をかけながら、降参とでも言いたげに両腕をあげる。


「ふぎゃっ!」


「いたっ!」


小脇に抱えられていたチビ獣人達は、当然地面に転がり落ちた。


「なんだよ、ばかリプト!任務とか聞いてねぇぞ!!」


「そりゃそうだろ。俺の任務だからな」


そして狼兄さんは、チビ獣人達をニヤリと笑いながら見下ろした。



「口ばっかり達者で腕はまだまだなお前達を厳し~く鍛錬しながらも脱落させずにゴールまで導いて、お宝も持ち帰るってぇ超絶面倒臭ぇ任務なんだよ」


心底面倒そうにそう言われて、チビ獣人達の耳と尻尾がシュンと下がる。


「あんたも悪いんだぜ、美人ちゃん。あんたがいるのが分かってたから、村で唯一魅了耐性がある俺がこんな面倒な任務につくハメになってんだ。むしろ責任とって欲しいくらいだ」


なるほど、だからこんなガキの扱いに向いてなさそうな狼兄さんが引率してたのか。


「何それ。アタシのせいじゃないわよ。…ていうか、やっぱり魅了にかかったフリしてただけなのね!」


「演技派だろ?」


狼兄さんはニヤリと自慢げに笑っている。


「ま、仲間が魅了にかかるのはあり得る事態だからいい訓練になるし…俺なら手加減してやれるしな」


そう言いつつ、なぜか狼兄さんは鞭を拾い、リリスに投げて寄越した。



「ま、そんなワケで美人ちゃん。責任とってこいつらちょっと鍛えてやってくれや。さっきのはホンキ過ぎるから、もうちょっと軽めで頼むわ」


「なっ…冗談じゃないわよ!」


「頼むって!下僕のスライム達使っていいからさ」


狼兄さんの冗談めかした言葉に、リリスは片眉をあげる。珍しく、どうやらちょっと本気でイラっとしたらしい。


「…分かったわ。スラちゃん達と一緒に、本気で遊んであげる」


腕組みで不機嫌に唇を尖らせているリリスを尻目に、狼兄さんは「よっしゃ!」とガッツポーズ。


「ほらお前ら、本当にヤバくなったら助けてやっから、そこまでは自分達で頑張れ?」


チビ獣人達にそう言い残し、さっさと宝箱地帯に体を向ける。


「ばかー!!」


「さいてー!!」


チビ獣人達の罵る声も聞こえてないかのようなシカトっぷりだ。


「スラちゃん達、出番よ!!生意気なあの狼男をやっつけて!!」



待ってましたとばかりに、種類も様々なスライム達が、あっちからこっちから、わらわらと現れた。


色とりどりのスライム達が、我先に狼兄さんに襲いかかる姿はなかなか圧巻だ。


スーパースライムの巨大な体にドーン!と景気よく弾かれ、ぶっ飛んでいる最中にもスライム達から放たれた炎や光が弾となって降りかかる。


「ちょ、美人ちゃん!俺じゃなくてチビ達!チビ達鍛えてやってくれって…!」


「なんでアタシが!バカにして!あんたもそこのチビちゃん達も、み~んな纏めてやっつけてやるんだから!!」


リリスは相当ご立腹のようだ。


「スラちゃん達!そこのチビちゃん達もターゲットよ!手加減無用でやっちゃって頂戴!」


リリスに忠実なスライム達が、チビ獣人達を取り囲む。見たところ比較的レア度が低いスライム達がチビ獣人達の相手をするようだ。

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