大切な物を忘れてた!
「う~ん、成金仕様は別として、宿泊施設を充実させるのは大事だと思うわ。出来れば何度だって来て欲しいし、やっぱり楽しい施設と寛げる施設と両方あるのが理想だもの」
「そうだね、今皆から聞いた話を総合すると結構面白い天空リゾートができそうだよね」
なんだかんだ、ルリとゼロの頭には天空リゾートの青写真が着々と描かれているらしい。
「あ、大切な事忘れてたわ!」
ガタっと音を立てて、いきなりルリが椅子から立ち上がる。何だって言うんだ一体。
「食!いっちばん大事な食を忘れてたわ!」
「しょく?」
「そう、食べ物よ!いくら凄い景色や楽しめる場所、素敵なホテルとかあったとしても、食べ物が不味かったら二度と行きたくないもの!」
ああ、そりゃそうかもなぁ。
「そっか、そうだよね。旅行ガイドって必ずその地の名物料理とかスイーツとか載ってるもんね。天空リゾートっぽい名物料理とかあるといいよね」
ゼロも一気に乗り気になっている。一方カエンは小首を傾げて難しい顔だ。
「天空リゾートっぽい名物料理なぁ…思い浮かばねぇな」
「料理の事ならカフェのシルキーちゃん達に考えて貰ったらどうだ?確か料理とかスイーツとかいつもアイディアラッシュしてる子がいたんじゃないか?」
ふと思いついて言ってみる。カフェはむくつけきおっさんから町娘の皆さんまで幅広い客層だから、結構新作の開発に余念がないんだよ。
「ああ、なるほどな」
「むしろカエンが考える料理の方が想像つかない。せめて考えるなら酒くらいにしといてくれ」
「違いねぇ」
「天空リゾート名物料理に名物スイーツ、名物酒!楽しくなりそうね!」
「うわぁ、フワフワメレンゲのお菓子とか美味しそうですぅ」
ルリとラビちゃんの女性陣は楽しげに目を輝かせている。それを微笑ましげに見ながら、カエンが会議の締めに入った。
「よし、そんじゃ今日はここまでにするか。明日からはまた、普通にダンジョンに客を入れるんだよなぁ?」
確かに結構話し込んでしまった。
「新しいダンジョンの方向性は子供から大人まで受け付ける、一般教養と職業学校みたいな物と」
「天空リゾート!」
ゼロの纏めに被せるように、ルリが楽しげな声をあげた。楽しそうな街になりそうだ。
「明日はこっちのゼロのダンジョンの改造についても話しあわなきゃなんねぇな」
「ああ、一通り話し終えたら……その、レジェンドとか言う奴らから出された条件リストと付け合わせよう」
最後はカエンとライオウが締めてくれた。ライオウは見た目20代前半だから、この二人がいてくれるとやっぱり会議に落ちつきがでるな。
「じゃ、また明日!!」
ゼロの言葉を合図に、各々がまだ何か考えながら部屋を出て行く。既に明日話し合う、このダンジョンの事にでも思いを馳せているんだろうか。
こうして俺のちっとも休まらない休日はあっさりと終わりを告げた。
明日からはまた、ジョーカーズダンジョンで冒険者を迎え討つ日々か。
ま、それもそれで楽しみだ。




