リゾートってどんな感じ?
「見渡す限り街の灯りがキラキラしてるの、圧巻だよ?夜景はかなり人気があったから、結構いいと思うんだけど」
俺達は思わず顔を見合わせた。
「言っとくが、見渡す限りのキラキラな灯りとかねぇぞ?このアルファーナならまだしも、ラビのダンジョンが出来たあたりは深い森だしな。実際相当でかい街にしない限り、ショボい感じになると思うが」
カエンが可哀想な子を見るような、労わる目つきでゼロを諭す。空から見渡せるカエンが言うなら間違いない
情報だろう。
「あっそうか。そう、だよね」
「ねぇ、それより他には?他にも違うとこあるんじゃない?」
残念そうに項垂れるゼロに、今度はルリが詰め寄る。気持ちを切り替えう~ん、う~ん、と唸り出したゼロ。
「あっ!なんかね、体験型のが色々あったと思うよ?」
やっと思いあたったのか、そう目を輝かせた。
「体験型?」
「うん、スキューバ……海に潜って綺麗な魚を見たり、空を飛んだり、なんかその土地の民族衣装を着て伝統の踊りとか習ったり、なんか色々体験してみるってヤツだよ」
「それって最早リゾートなんだか怪しくなってきたな」
リゾートって基本、保養地っていうか……景色のいい場所でゆっくりまったりするもんだと思っていたが。
「あ、そうだね。僕の世界では……っていうか、僕の国の人がかも知れないけど、リゾート地でゆっくりする人って少ないんだ。連休使って旅行に行ったら、とにかく体力が続く限り遊びまくる人が多いよ?そうしょっちゅう行く場所じゃないから、できるだけの事をやりたくなるんじゃないかな」
「それ、余計に疲れないか!?」
「あら、ずっとゆっくりしてたって暇じゃない。沢山楽しい事した方がスカッとしてよっぽどストレス解消になるわよ」
ルリ的にはアリらしい。
ゼロの世界ではルリみたいなヤツが多かったんだろう。
「うん、ルリくらいのお姉さんは日帰り弾丸ツアーでショッピング三昧ってパターンもあるみたい」
「ツアー??って何だ?」
「え?えっと、なんて説明すればいいのかな。ホテルの手配とか、観光地をどう回るかとか、車の手配とか…そういう面倒な事を纏めてプランニングしてあるんだよ。それなら見所は漏れないし、安心じゃない?」
「自分が行く旅行を他のヤツに計画して貰うのか?」
解せない。見たいものなんて千差万別だろうに、それで行きたい所にちゃんと行けるんだろうか。
「うん、ファミリーやご年配向けはもうちょっとゆっくりした日程もあるし、気に入ったツアーを選んで旅行するんだ」
「選択肢があるわけね。それ、いいじゃない!ツアーを選んでお金さえ払っちゃえば、面倒な事は全部お任せでいいんでしょ?」
「運営側にもメリットがあるなぁ。人が来る時間が決まってたら、その時間に人員を厚くすりゃいいんだし」
カエンが納得したように深く頷くと、ゼロは嬉しそうにまた話し出す。
「それにね、自由に好きな所を回る時間も作ってあったりするし、子供だけ参加する催しもあったり、ゲームセンターがある場合もあるよ」
「へぇ、どんなゲームをやらせるんだ?」
「テレビゲーム……う〜ん、僕の世界じゃ家の中でモニター見ながら遊ぶのが流行ってて……それが、旅先でも出来る感じ?」
「家でいつでも出来る事をなんでわざわざリゾート地に来てまでやるんだ?」
もう何がしたいのか分からないじゃないか。
「子供はそんなにショッピングとか綺麗な景色とか、高尚なショーとかには興味ないし。親が買い物とかしてる間、そこで時間を潰すんだよ」
「合理的というか、なんかドライだな。子供達はそれで寂しくないのか?」
「僕は嬉しかったけど。いつもは止められるのに、その時ならゲームし放題だからかなり楽しみだった」
そんなもんか。
「それにしても、そのツアーって考え方はいいな。特に最初は来たいって人すらいないだろうから、そのツアーってのにしちまえば、集客が楽になるんじゃないか?」
ライオウはもう取り入れる方向で考え始めたらしい。
「それよりさ、皆の所ではどんな感じなの?普通よりサービスいい方がお客様は集まるだろうから、一般的なリゾートのイメージも知りたいんだけど」
ゼロの言う事も最もだ。
これにはカエンがすぐに口火を切った。
「そうだなぁ、この国じゃそもそもリゾートなんかは一般庶民にはかなり縁遠いからなぁ。一生に一度あるかないかじゃねぇかぁ?」
そうだよな。俺がいた所もそうだった。第一纏まった休みとか自体がないしな。ゼロに召喚されてから週に一度の休みとかも当たり前になってきたが、それまでは毎日働くのが当たり前だと思ってたし。




