夢はでっかく大風呂敷
そうか、隣国から見たら学校だって立派に富国強兵機関だもんな。その点リゾート施設の方ががっつり目立っていれば、その疑いも薄れるだろう。
「連泊出来るくらいって言うと、たっくさん遊べる所があった方がいいんですよね?水族館や動物園、植物園や遊園地なんかもいいですねぇ。きっと子供達も大喜びしますよ!」
ラビちゃんが楽しそうに賛同する。
「酒が飲める所も欲しいよなぁ、カジノやバーみたいな」
ニヤニヤしながらカエンも話に乗ってきた。
カエン……ギルドで散々飲んでるだろうに、まだ酒の心配か。いや、呑んだくれ共を見てるからこそ、酒の重要性が身に沁みてるって事だろうか。
「ちゃんと腰を落ち着けて見る系統もあった方がいいな。サーカスとかショーみたいな」
ライオウも思慮深げに呟く。確かにいいかも知れない。裕福な御仁達が大枚払って来てくれそうだ。
「普通の生活の基盤は下界に造って、塔の上にはリゾート施設とかだけにすれば、夢心地のバカンスが過ごせるじゃない?きっと人気が出るわよ?」
宣伝活動さえしっかりやれば、そりゃあもう沢山の客が押し寄せるんじゃないだろうか。
「……そうだよね、ダンジョンの機能があるんだもん。それ、造れちゃうよね」
そういいながら、ゼロは「天空のリゾートかぁ……」と夢見るように呟く。既に頭の中には煌びやかな天空リゾートが出来上がっいるに違いない。
「コンビニが欲しいな」
また訳の分からない事を言いだしたな。
「ゼロ、なぁに?そのコンビニって。面白い施設?」
ルリがキラッキラしながら食いついた。
「う~ん……面白いっていうか超実用的な感じだけど。なんて言えばいいかな、おみやげから食べ物、服、薬、コスメ、酒に至るまで何でも買えるこじんまりしたお店?」
いや、疑問形で言われても。
「へえ、やっぱりゼロのいた世界って便利なものがあるのねぇ」
ルリは感心しきりだが、さすがに俺も同感だ。
基本この国だってそうだが、武器は武器屋、服は服屋で買うのが当たり前だ。商人だってお互いに利権の問題もあるから、他の職種には手を出さないのが基本だもんな。
ゼロの世界じゃそんな問題はないんだろうか。
それに自販機にもびっくりしたが……そんなものを造ってしまうあたり、ゼロのいた世界の奴らは楽をするためには知恵も手間も惜しまないらしい。
怠け者なのか勤勉なのか、今一つはっきりしないよな。
「ねぇねぇ、ゼロの世界のリゾートってどんな感じなの?なんだか面白いのがありそうだわ!」
「えっ!?ルリが言ったのとそんな変わんないよ」
「そんな訳ないでしょ!ちゃんと考えて」
ルリに睨まれて一生懸命考え始めたゼロは、ハッとしたように顔を上げた。
「そうだ!バスで観光地を回るんだよ!」
「バス?」
「そう。絶景ポイントとか、歩いて移動するには距離が遠い施設やレストランとかをバスって乗り物で集団で移動しながら回るんだ」
1日で5ヶ所も6ヶ所も回るんだよ、と事もなげに言うゼロを見てカエンが呟いたのは「忙しねぇな」のひと言だった。
同感だ。
それに集団でとか面倒臭そうだし。
「絶景かぁ、そんなにあちこちあるの?」
「うん、やっぱり観光地って景色が綺麗なとこ多いから。山の上とか連れていかれて、雄大な自然や街並を見下ろすってパターンが多いみたい」
「うってつけだな」
確かに。
塔の上のリゾート地だしな。
「僕は夜景が好きだな」
ゼロの言葉に、皆が??な顔をする。
「ヤケイ?」
「うん、キラキラして綺麗だし」
「ヤケイってなんだ?」
「えっ!?夜の、景色……?高いところから見下ろすと、街の灯りとかが綺麗だよね?」
夜まで景色を楽しむのか!
その概念はなかった。
「あ~……確かに綺麗だし、ホッとするな」
同意を示したのはカエンだった。
「夜に移動する事になった時とかな、真っ暗な中をず~っと飛んでいくじゃねぇか。方向間違ってねぇかなとか、そろそろ不安になった時に見えてくる街の灯りなんかもうたまんねぇぞ」
う~ん、それは光り輝いて見えるだろう。
ゼロは「いや……そんな切羽詰まった綺麗さじゃなかったんだけど」と不満げだが、俺はまだカエンの方に共感できる。




