ルリのワクワクプラン
「うーん……あのさ僕、ルリの言う事にも一理あると思うよ?あんまり最初にやっちゃいけないことばっかり考えてたら、なんかつまんないダンジョンになりそうだもん。ある程度方向性が決まってから、リストを見ながら修正していけばいいのかも」
……ここにも居たな、愉快犯的考え方の持ち主が。
ゼロ、お前その考え方のもとに、数々のえげつないトラップが考え出されたんじゃないのか?
「私もそれでいいと思います」
えっラビちゃん、なぜ!?
「俺もゼロに賛成だ。俺の育った街でも、会議はいつもやりたい事ややるべき事から話し合う。ゼロの言う通り、その方が発想の幅が広がるからだ」
なんと、ライオウまで!
今まで空気だったじゃないか。
「へぇ、どんな風に話を進めるんだ?」
おいおいマジか。カエンまで興味を示し始めたし。
「たいした事じゃない。最初は一つの案件について、こうだといい、面白い、効果がありそうだって事を思いつくままに意見を出し合うんだ。ルリさんがやりたがってる事と一緒だ」
「ああ、それで?」
「大きな方向性とやりたい事が決まったら、阻害要因を上げてどうすれば解決出来るかを話し合うんだ。そうすればあれも出来ない、これも出来ないって、マイナスな話し合いにならないからな」
な……なるほど、理にかなってる気がする。
カエンも深く頷いてるし。
そこにルリのお気楽な声が響いた。
「いいじゃない!そっちの方が楽しそうだもの」
だよな、お前はそういう基準だよな。
俺的には軽くがくっと来たんだが、カエンはルリに同意の意を示した。
「ああ、確かに。レジェンド達や王宮のうるさ方と話す時は、やっちゃいけない事から話すからなぁ、空気重いし楽しくはないよなぁ」
「ほら。やっぱりそうでしょう?」
したり顔のルリには軽くイラっとくるが、カエンまで納得してしまったらさすがに分が悪い。
って言うか、ライオウの話を聞いてたら、ぶっちゃけ俺的にもそっちの方がいい案出そうな気もしてきた。仕方なくおもむろに頷くと、ルリが満面の笑顔で「じゃ、満場一致ね!」と手を叩く。
「私、いい事思いついたのよ!!もう早く話したくってウズウズしてたんだから!」
跳ねるような口調でルリが楽しげに話し出したのは、新しいラビのダンジョンの構想だった。
「題して、天空のリゾート!っていうのはどうかしら?」
「天空のリゾート?」
意味が全く分からない。そもそも昨日からこっち……これまでの話の流れにいったいどこがリンクしているのかすら疑問だ。
「そんな怪訝な顔しないの!ここからが本題なんだから!」
「普通に街を造るにしても、結局は人集めもしたい訳じゃない?じゃあいっその事集客に思いっきりシフトして、リゾートにしちゃえばいいと思うのよ」
「リゾート?」
勢いこんで話し始めたルリに、ラビちゃんが小首を傾げながら聞き返す。
「そうよ!プールもスパも、ショッピング出来る所もビーチも、なんでもある巨大リゾート!最高級ホテルに連泊できるくらい施設を充実させるの」
ちょっと待て。
ビーチって……今ラビちゃんのダンジョンがある場所って、どこまでも見渡す限り森だって言ってなかったか?
不自然過ぎるだろう。
俺がそう言うと、ルリはいたずらっ子のように、楽しげに目を細めた。
「不自然だからいいのよ」
またもや意味が分からない。
「人間って、あり得ないって思う物は見てみたいし体験してみたくなるでしょ?」
「そうでもなければわざわざ見に行こうなんて思わないわ。私達のダンジョンに、毎日観客が見にくるのだって、普通は見る事が出来ないダンジョンでの戦闘を見る事が出来るからだわ」
それは確かにそうだろう。
「だから、天空のリゾートなのよ。高い高い塔を造って、その上にリゾート施設を建設するの!」
とんでもない事をいい出した。
「高い塔の上にビーチがあるなんて、誰も想像出来ないわ。遥か下界を見下ろしながらビーチでまったり…最高じゃない?」
明らかにお前がまったりしたいだけだろう、それ…。
「悪くねぇ…」
カエンが思慮深く呟いた。
「悪くねぇなぁそれ。街を造るにしても軍事施設っぽくは出来ねぇ訳だし、冒険者の訓練も兼ねた学校だけが目立っても隣国は気をもむだろうからなぁ。カモフラージュにも丁度いいかも知れねぇなぁ」




