一夜明けて
そして今、応接室にはラビちゃんやライオウはもちろん、昨日新ダンジョンについて話し合ったメンツが勢揃いしていた。各自ルリからの宿題はちゃんとこなして来たんだろう、落ち着いて席に着いている。
「じゃあ…始めようか」
なんとなくおずおずと、ゼロが口火を切った。宿題の出来に今ひとつ自信がなかったりするんだろうか。ゼロが控え目だからか、困ったようにルリがカエンに視線を送った。
「そうね。んー…それならカエンから話して貰える?王様達と話し合ったんでしょ、レジェンド達はどうするの?巻き込むって決めたの?」
「ああ、後からバレて臍曲げられた方が面倒だって話になった。そのまますぐにレジェンド達も招集して、ちゃんと話し合いも済ませて来たぜぇ?」
「仕事早いわね!」
さすがのルリも驚いている。
簡単に言っているが、もちろん影には守護龍という立場にも関わらず、自らレジェンド達を探し回ってまで話し合いの場を設けたカエンの涙ぐましい努力があったわけだ。
ひとえにカエンの努力の賜物だからな、もう少しだけ褒めてやって欲しい。
「それで…どんな話になったの?」
そんな事とはつゆ知らず、ゼロがこれまたおずおずと尋ねる。ゼロの頭の中は多分、レジェンド達がどう反応したかでいっぱいなんだろう。
しかしカエンは、いつになく爽やかさ満点で破顔した。
「かーなーり!思い通りに事が運んだぜぇ?」
なんと、バチン!と音がしそうなウインク付き。上機嫌なのは分かるが、2000歳オーバーのおっさんのウインクとかぶっちゃけ要らないんだが。
若干うんざりしながら、それでも話を聞いてみると、カエンのご機嫌さもなんだか理解出来る気がしてきた。
結果から言うと、新しいダンジョンを使っての街の創設及び、ゼロのダンジョンを使っての中級冒険者達の鍛え直し、双方共に議会とレジェンドの承認が得られたらしい。
「ずいぶん上手く話が進んだじゃない。もっと手こずるか……そうねぇ、少なくとも私達のダンジョンは強化しないって選択になると思ってたわ」
ルリが呆れたような、驚いたような、微妙な顔で感嘆の声を上げる。
ホントにな。どんな裏技を使ったんだか。
「物は言いよう、ってのを実感したがなぁ。まぁ大部分はアラインの功績とも言える」
なるほど、アライン王子か!
そう言いつつも微妙に眉を寄せている所を見るに、カエンはアライン王子のそういう所も苦手なんだろうなぁ。こっちとしては頼もしいから、もちろん文句はない。
「冒険者の数を絞る方向性には一切触れねぇで、他国の上級ダンジョンを攻略できる精鋭を育てられるのはレジェンド擁する我が国だけなのでは?とか何とか上手い事おだてやがって、爺さん共が盛り上がる事盛り上がる事」
どことなく疲れた様子でそう言った後、カエンは少しだけ寂しそうに笑った。
「本当にあいつにソックリだ。忌々しい」
あいつって…カエンの冒険者仲間だって言っていた、この国の初代国王の事だろうか。アライン王子は顔だけじゃなくて性格まで初代国王に似てるって言ってたもんなぁ。
「まぁとりあえず中級冒険者の訓練も引き受けてくれたしなぁ、ラビも爺さん受け良かったし、何とかなるん
じゃねぇかぁ?」
ラビちゃんも顔合わせしてきたのか!
マジで仕事早いな!
そしてラビちゃんは確かに爺さん受け良さそうだ。話が早くなる筈だな。
「可哀想に。強面のおじいちゃんばっかりで、しかも強者オーラプンプンのレジェンドに会ったんなら、ラビはさぞおどおどビクビクしたでしょうね」
確かに。
ていうか、珍しくルリが眉を寄せて同情したような顔をしたな。
いや、そういえばルリはこう見えて女には優しいか。面倒見てる事も多いかも知れない…意外と姉御肌なんだよな。
少しだけ複雑な顔をした後は、一転して満面の笑顔になるルリ。嬉しそうにゼロに話しかけている。
「ま、でもそっちはこれでほぼ解決な訳ね!これで安心して、心置きなく楽しくダンジョン造り出来るじゃない。良かったわね、ゼロ!」
「ホントに良かったよ~!カエン、ありがとう!!」
ゼロもホッと息をついている。
よっぽど心配だったんだろう、明らかに肩の力が抜けた感じだ。
「後はゼロ、昨日言ってたリストは出来たか?」
カエンが真剣な口調で問う。
リストってあれか。レジェンドからのお小言リストか。




