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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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訪ねて来た訳

「レグス様、本題そっちじゃないでしょう」



笑いながらそう指摘するMr.ダンディから、糸目爺さんはバツが悪そうな顔で目をそらした。



「レグス様はね、君の布やリングを使っての戦闘に興味があるんだよ」



ああ、そういえば戦ってる時に「布は使わないのか」って残念そうにしてたかも知れないな。



「ぐぬぬ…何も今言わなくてもいいだろうに」


「そんな恨みがましい目で見ないで下さい。嘘は言っていませんよ?」


「格闘の基礎をしっかり教えこんで、恩をたっぷり売ってから見せてもらう計画が…お主のせいで台無しだ」



レジェンドの癖になんでそんな周りくどい事を…。わけがわからん。



「ギブアンドテイクなんだから素直に言えばいいでしょうに。全く…レジェンドの皆さんは戦闘能力は尋常じゃないのに、コミュニケーション能力は今ひとつなんですよね」



Mr.ダンディ、なにげに酷いな。



「……お主のように口も腕もほどほどたつ輩が一番厄介だ」



ふて腐れ気味な糸目爺さんの言葉にも、Mr.ダンディは一切動じる様子がない。



「口も腕もほどほどの方が、使い勝手はいいものなんですよ?」と笑顔で返すあたり、なんだか腹黒さを感じるな……。



しかもこの二人は「ほどほど」とか言っているが、Mr.ダンディは英雄レベルだ。そもそも「ほどほど」のイメージが一般とはかけ離れ過ぎて共感できねぇし。



「ちなみに私も興味があるんだよ。もし君が望むなら私は剣技を教えるから、君のその面白い戦闘スタイルをぜひ私にも教えてくれないか?」



糸目爺さんを適当にあしらいつつ、満面の笑顔で俺にそう持ちかけてくるMr.ダンディ。


もちろん快諾する。Mr.ダンディはこの日、俺の怒らせたくない人リストにしっかり名前が刻まれたからだ。



「そんじゃあ始めようかい。お主…布も輪っかも持っとらんな、さっさと取ってこんかい」



当たり前だろう。こっちは普通に朝飯中だったんだ、そんなもん持ってる筈がない。糸目爺さんの横柄な態度に思わずムッとする。レジェンドって崇められ過ぎて、普通に相手を気遣うって事すら忘れてるんじゃねぇのか?



「はいはい、レグス様ダメですよ。こっちが押しかけて来てるんですからね。クロ君……でいいのかな?悪いけど準備してもらってもいいかね?」


「はい……」


くっ、このコンビ以外と面倒臭いな。軽くキレたい場面でMr.ダンディが上手くフォローするもんだから、キレるにキレられない。


余計にムカつくんだが。


仕方なく、武器達を取りにマスタールームに戻る。うーん…この場合ムチも持って行った方がいいんだろうか。使っている武器を一通り手にして急いで受付に戻ると、糸目爺さんとMr.ダンディは既に練兵場に向かった後だった。


練兵場の扉を開けると、既にウォーミングアップに入った二人が見える。どんだけせっかちなんだか。



「来たか!まずはその布を見せてくれ」



糸目爺さんが嬉しげな声をあげる。目が少年のようにキラキラしているかは…残念ながら分からなかった。糸目だからしょうがない。


俺の手からひったくるように布を奪うと、Mr.ダンディと二人して撫でたり引っ張ったり、光に透かして生地を見てみたり、それはもうすごい勢いでチェックしている。



「……ただの布か?」


「ただの布、でしょうね」



御名答。

布は本当に薄くてでかいただの布だ。1m×2.5mくらい……鮮やかな色彩、ヒラヒラと風を受けて軽やかに舞う薄さ、シルクの光沢と手触り。


今の時点で布から感じとれるのはそれくらいのもんだろう。



「私と戦った時には多分、転写系のスキルで素材とかを変えながら使ったと思いますよ?だから布自体にはあまり仕掛けもいらないんでしょう」



思慮深い顔で頷きながらMr.ダンディが結論付ける。同じようにリングも検分しながら、その結論はより強固な確信に至ったようだった。



「ワシと闘った時もただの輪っかかと思ったら、飛んで来た時には円刀になっとったが…あれもそのスキルのせいか?」



糸目爺さんが尋ねるようにMr.ダンディに向けた目は、二人分の目を合わせてそのまま俺まで辿りついた。


ここはもうとぼけるのは無理だろう。



「仰る通り、布もリングも仕掛けは特にありません」


言いながら、どこまで話したもんか地味に悩む。あんまり隠すのもどうかと思うが、少しは隠し玉も欲しいところだし。

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