新しい街作り②
「そっか、確かにあんまり小さいうちに教えると危ない事も多いよね」
ゼロも考えこむように、小さな声で呟いている。
「でもさ、中等部くらいからは選択式で教え始めてもいいんじゃない?初等部しか通わない子も多いなら、教える事の幅を広げるってのもありだよね?」
「確かに、何も教えないでいきなりダンジョンにアタックするから、死亡率が高いのかも知れないわよねぇ」
ゼロの案にルリも賛成らしい。確かにうちで働いてる元ストリートチルドレンのナギ達4人は、スキル教室である程度教育してたから、超初心者訓練用ダンジョンのプリンセス・ロードでは、ちびっ子なりにそれなりの戦いを見せていた。
教育してからダンジョンに送り込むってのは、確かにアリかも知れない。
「そうか、失業予定の冒険者達に講師をして貰えばいいのか」
ライオウも納得した様に独りごちた。ちょっと切ないワードも混ざっていたが、ここはスルーしよう。
「うん。でも冒険者コースだけじゃなくて、商売とか鍛治とか、色々なコースがあっていいと思うんだ。これから冒険者の人数を絞っていくなら、他の仕事も教えた方がいいもんね」
ゼロからは非常に地に足のついた堅実な意見が出ている。ゼロの故郷では、そういう学校が普通だったのかも知れないな。
「そうねぇ、折角学校を作るなら、孤児達だけじゃなくて冒険者や他の国の人も来たくなるようなのがいいんじゃない?今のままじゃなんだかつまらないわぁ」
ルリが若干頬を膨らませながら唸っている。
つまらないかどうかは別として、俺もルリの意見に賛成だ。子供達ばっかりにターゲットを絞る必要はないと思う。
そして、気になっていた事を口にしてみた。
「なぁゼロ。どうせ中級冒険者達の鍛え直しも俺達に依頼が来るんじゃねぇかと思うしさ、新しい街とゼロのダンジョン、両方纏めて役割分担考えた方がいいんじゃないのか?」
「えっ!?」
鳩が豆鉄砲をくらったような顔で俺を見るゼロ。そしてカエンは案の定苦笑いしている。
「え、いやいや……だってレジェンドのお爺さん達にダンジョン進化させるなって、怒られたばっかりだよ?」
「いーや、あのカエンの顔は俺達に押し付けようと思ってた顔だ」
ジト目でカエンを見ると、頭を掻きながらただただニヤニヤと笑う…笑ってごまかせると思うなよ?
「レジェンドのお爺さん達が喜んで鍛えてくれるんじゃない?」
ゼロ……カエンの様子を冷静に見てくれ……。
「あー……なんだ、まだはっきりとは言えねぇが、頼む可能性はかなり高いだろうなぁ。爺さん達がいくら後進を鍛えたとしても、上級ダンジョンの訓練は必要だろうし」
気まずそうなカエンに、ゼロは珍しく猛烈な勢いで反発する。
「ええ!?嫌だよ僕!武闘大会の後も僕一人でレジェンドのお爺さん達にめちゃめちゃ絞られたんだからね?ハクは気絶してるし、カエンは帰って来ないし!」
なんと、そんな事があっていたとは。それは悪い事をした。
「いやー悪い悪い」
カエンは全然悪いと思ってなさそうだな。軽い調子からは一切申し訳なさそう感が感じられない。
「とにかく僕、レジェンドのお爺さん達に約束したから!僕のダンジョンの方まで視野にいれないといけないなら、ちゃんとそっちの了解とってくれないと!」
ゼロ必死だな。
よっぽど嫌な目にあったらしい。
「あー分かった分かった」
ついにカエンが折れた。降参、とでも言いたげに両手をホールドアップして見せる。
「ぶっちゃけ俺も、王やアラインとそこをどうするかは話せてねぇんだよ」
さすがに決まり悪そうなカエン。これもちょっと珍しい光景だが、まぁカエンもさっき帰って来たみたいだしな……王宮に寄ってから帰って来たとしても、王様達とじっくり話す時間はとれなかったのかも知れない。
「だがなぁ、王宮のうるさがたや気難しいレジェンド達を通してると面倒だしなぁ。実力行使である程度形が出来てからの方が話が早いと思うんだがなぁ」
今度はカエンが渋りだした。
レジェンド達は俺が思っていたよりも、随分抑止力としての効果が高いらしい。
「んもー!面倒臭いわね!話を通すか、後でバレてもいいように問題を極力排除して造るかだけでしょ!どうせやる事は別に変わらないわよ」




