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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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カエンご帰還

目が覚めたら医務室だった。俺、あのまま気を失っちまったんだな。


「あら、おはよう」


…ルリか。


「あ~あ、負けちまった」


「実力差からみたら仕方ないわね。その割には相当善戦したんじゃない?」


事実だが、慰める気はないみたいだな…。期待はそもそもしてないけどな。


それにしても、やっぱり悔しい。

「つい本気で一発入れた」って言ってたな、糸目爺さん…。


次の武闘大会はいつやるんだろう。それまでにはせめて、レジェンド達が全力で闘えるくらいには強くなっていたい。


「武闘大会は…?」


ルリは困ったように眉をよせた。


「…終わっちゃったわ」


…そうだろうな。

あの喧騒が嘘みたいに静かだし…。


ちなみに優勝したのは俺を破った糸目爺さんでも戦士爺さんでもなく、戦士爺さんに説教していた年長爺さんだったらしい。


糸目爺さんの本気の一発で気絶した上、決勝戦すら見逃すとか…俺、本当に運いいんだろうか。


マスタールームに戻る気にもなれず、カフェで軽い酒をあおりながらぼんやりしていると、つけたままになっていたインカムから、ゼロの声が聞こえてきた。


「はっ…ハク!!た、大変!カエンが帰ってきた!!」


帰ってきたなら良かったじゃねぇか。

俺は今地味に落ちこんでるんだよ。カエンのバカ笑いを聞いてる気分じゃねぇんだって。


「悪いんだけど、今すぐに応接室に来て!」


それだけ言うと切れてしまった。

なんなんだ一体…。


少しはゆっくり落ち込ませて欲しい。

ていうか、なんでわざわざ応接室なんだ。


不審に思いながらも応接室に入ると、すぐにゼロが慌てた様子で入って来た。


「カエンももうすぐ来るから!」


だから何を慌ててるんだ、お前は…。


問い詰めようとしたら応接室の扉が勢いよく開き、カエンがひょっこり顔を出す。


そして、俺を見てニヤリと笑った。


「負けたんだってなぁ」


…言いたい事はそれだけか…!

全身全霊で睨んでいたら、カエンに吹き出された。


「そう怒るな。あの元気過ぎるジジイ達も褒めてたぜぇ?鍛えたいって言ってたぞ?」


…遠慮します。


「ま、それは置いといてだ。お前達に紹介したいヤツがいるんだよ」


へ!?

いきなりだな。


驚く俺を気にも留めず、カエンは扉の向こうに「いいぜぇ、入って来いよ」と声をかける。



「こ、こんにちは…」


カエンに促されて入ってきたのは、うさ耳の超おどおどした女の子だった。


マジで女連れで帰ってくるとは!!



一瞬驚いたが…それにしてはカエンの好みとはちょっと違うっていうか…。


ダイナマイトなボディをお持ちなわけでもないし、顔もセクシー系美人っていうよりは平凡…いや、黒眼がちなくるっとした瞳が愛らしい清純派だ。


背も小さくて150cmあるかないか、細っこくって今にも泣き出しそうに震えている。肩までのふわふわハニーブラウンの髪が細かく揺れているのが可愛いらしい。


あれか?

好みのタイプと付き合う娘は違うってヤツか?


「…おい、なんか変な事考えてそうだが、違うからな?」


カエンに、いつになく抑えた声で威嚇された。


「おい!ライオウ!お前がさっさと入って来ねぇから、俺様があらぬ疑いをかけられてんじゃねぇか!さっさと来い!!」


カエンのイラついた声に扉を開けて入って来たのは、たてがみのようにキラキラ輝く金色の髪を持った男だった。


これはまた対照的な二人だ。


背丈も190cmはありそうだ。カエンと同じくらいだもんな。立派な体躯に黒の革ジャンを無造作に羽織った男は、威風堂々としてかなりかっこいい。


ただし、今はかなり眉を寄せた困り顔だ。


「だってよぉ…オレが入ったらそいつが泣くだろうが」


親指で指す先には、座り込んで泣いているうさ耳ちゃん。


「キーツとイナバみたいな感じなのかな?」


ゼロが俺にそっと耳打ちする。


…そうかもな。

ウサギの獣人のイナバは、狐の獣人キーツの前だと泣いて震えが止まらなかった。


この二人、明らかにウサギとライオンだもんなぁ。


「ご…ごめん…なさいぃ~…。わた…し…泣くつもりじゃ…」


しゃくりあげて泣いているうさ耳ちゃん。耳も寝ちゃってるし、見た目かなり可哀想だが…俺は知っている。泣かれているライオン君の方もかなり傷ついている筈だ。


ライオン君の肩をポンと叩く。


「あんたも大変だな。ウチにも狐とウサギの獣人がいるんだ。本能的にああなっちゃうらしいから、気にしない方がいい」


「そうそう。今はいいコンビだもんね」


ゼロも援護射撃してくれた。


「あの…大丈夫ですか?」


そのままゼロはうさ耳ちゃんを心配げに覗きこむ。


うさ耳ちゃんは泣き腫らした目のまま、ゼロをじっと凝視した。あまりに見つめられて、今度はゼロの方が赤くなってくる。


なにやってんだ。


「怖くない…」


うさ耳ちゃんがポツリと呟いた。


「え?なんて言ったの?」


「やっと怖くない人に会えたぁ!」


「うわっ!?」

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