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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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試合の合間にひと仕事

「慌てなくていいから、とりあえずドワーフの爺さんに来て貰えよ。後の対戦があるから、できれば修理できた方がいいしな」


「そ、そうだよね。それに…あんまり性能のいい武器売ったりすると、またカエンとかレジェンドのおじいちゃん達に怒られそうだし、修理の方がまだマシだよね」


確かに。それもある。ようやくゼロもプチパニックから抜け出し、考えが纏まり始めたようだ。


「もしかしたらハクにも手伝って貰うかも。人目につかない所で待機して貰ってもいい?」


「ああ、いつでも呼んでくれ」


指定転写できるようになってから、かなりドワーフ爺さんに便利に使われてるからなぁ。そこら辺は予想の範疇だ。うまくチャラたれ目騎士からも離れたし、問題ないだろう。


ついでに自販機で軽くつまめるものを買って、カフェのモニターで試合をみていたら、早速ゼロからお呼びがかかった。


「あ、ハク?やっぱりマスタールームに一旦戻ってくれる?素材転写して欲しいんだって」


だろうなぁ。


あんな変に溶けたりひしゃげたりしたモン普通に修理するだけでも大変なのに、奴らが持っていた武器や防具は素材も特殊な感じだった。素材が硬質な物だったら余計に修理に時間がかかる。次の対戦に間に合わせるなら、修理する側も反則技が必要だろう。



「お、来おったのぅ。早速で悪いが、この剣の素材をそこら辺の板っ切れに転写しといてくれんかのぅ」


「ああ、了解」


ドワーフ爺さんの指示に従って、剣を手に取り素材を手近な板に転写する。剣は想像以上に軽かった。これならチビ太くんが軽々と振り回せたのも分かる。


あんまり見ない素材だが、一体どんな素材なんだろう。


「ほんじゃあその剣、一旦鉄に変えてくれんかの」


「了解」


慣れた鉄に素材を変えてハンマーでリズミカルに叩いていくと、形が崩れまくっていた剣が見る間に整えられていく。


鍛治仕事を見ているのは好きだ。


何かを創り上げていく工程って、何でこんなに面白いんだろうな。


仕上げに元の素材を転写し直して終了。素材転写をうまく使えば、未知の超絶硬い素材の武器も簡単に修理できる。今更だがホントに便利なスキルだ。


続いて斧も同じ要領で手早く修理。


斧は見た目通り持つのも大変な重さだった。少し軽くしてやりたい気もするが、斧系は重さをダメージに変換する場合もあるから勝手に改造するわけにもいかない。


残念だがここはガマンだ。武器は弄り始めると色々試したくなって困るな。


最後はいよいよダメージが酷い鎧に取り掛かる。間近で見た鎧は想像以上に酷い有様だった。


脇腹から胸あたりを抉るように深くへこんでいるし、傷の中心部は溶けたり焦げたりしている。あの闘いをこの目で見ていなかったら、これが剣で与えられた傷だとは到底信じられないだろう。


…本当に相当酷いが、これでも修理できるんだろうか。


少し疑いつつも、同じ流れで鎧の素材を別の板に転写してから、鎧を鉄に変えてドワーフ爺さんに手渡した。


「こりゃ酷いのぅ。一体何をしたらこんな傷になるんじゃ」


さすがのドワーフ爺さんも驚いているようだ。鎧を色々な角度から眺めては唸っている。


「こりゃあチィと時間がかかりそうだのぅ…」


やっぱりそうか。


「どれくらいかかりそう?多分もう少ししたらハクの出番がきちゃうんだけど」


心配そうにゼロが顔を出す。


「ああ、なら丁度いい。試合って戻ってくるくらいには鍛え終わっとるでのぅ」


…無駄がねぇな。

まぁ、俺も暇してるよりは何かしている方が性に合っている。そうさせてもらうか。



しばらく後、控え室に移動した俺は相手を見た瞬間我が目を疑った。


バリバリに翼があるじゃねぇか。


魔法も禁止のこの武闘大会では飛べるというのは圧倒的に有利だろう。俺も飛べるけど敢えて同じ土俵で闘ってるんだが。


…ああでも、よく考えれば投具もあるしスキルで攻撃出来なくもないのか。…反則ではないよな。落ちついたところで対戦相手をじっくり観察する。


多分、天使…なんだろうなぁ。

真っ白な翼だが…悲しいかな麗しいイメージは一切ない。


スキンヘッドに厳つい顔の、筋肉質のお兄さんだ。うちのたおやかな天使達とはえらい違いだな。武器は槍みたいだから、距離をとって空中から攻撃されると地味に厄介だろうなぁ。


色々考えていたら、早くも闘技場へ進むようアナウンスが入った。


対戦相手と何も会話せずに闘技場に向かうのは初めてだが…それが普通なのかもしれない。なんと言ってもこれから闘う相手だ、仲良くなると闘い辛い。本来なら挑発するくらいが関の山だろう。


気を引き締めて、闘技場へ続く魔法陣に足を踏み入れる。


転移した先で俺を待っていたのは、割れんばかりのブーイングの嵐だった。


そこら中のおっさんが拳を振り上げ喚いている。


「ひっこめーーー!!」


「卑怯者は帰れ!!」


「正々堂々と勝負しろーー!!」


…なんなんだ一体。

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