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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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ギルドトップの実力②

斧男は大斧を盾にして僅かな動作で剣を受け止める。やはり力に関しては斧男が遥かに上なようで、巨大剣を勢いよく跳ね返した。


剣と一緒に小さなチビ太くんの体が宙に舞う。


「うわっ…!」


無防備に宙に浮くチビ太くんの胴めがけ、大斧が斜め上から振り下ろされた。


ガキィィィィィ…ン…という、硬質な音が響いた。


「危ねぇっスーーーー!!今マジでヤバかったっス!!」


吹っ飛びながらチビ太くんが叫ぶ。

すんでのところで巨大剣で大斧を受け、体へのダメージは何とか回避したらしい。


「ちっ!」


斧を防がれたものの、チビ太くんが吹っ飛んだおかげで反動はさほどなかったらしい斧男は、吹っ飛んでいくチビ太くんを追って既に走り始めていた。


着地と同時にその場で巨大剣を振り回し、高速スピンして斧男を迎え討つチビ太くん。吹っ飛ばされても戦意は微塵も削がれていない。


「うおおおぉぉぉぉぉお!!!」


対する斧男も何某かのスキルを発動したようだ。斧が鈍く光っている。


光を放つ斧を大上段から振り下ろす。


瞬間。


闘技場に爆発したような音が轟き、眩い閃光が放たれた。


次いでもうもうと湧きあがる煙。


「眩し…どうなっちゃった?」


「俺も見えてねぇし」


薄れていく煙の中、最初に見えたのはやはり斧男の巨体だった。だが、不自然な前傾姿勢になっている。


斧男はそのまま、グラリと前にかしぎ…うつ伏せに倒れこんだ。ピクリとも動かないところをみると、どうやら気絶しているらしい。


え…これって、チビ太くんにやられたって事か?


しかし肝心のチビ太くんがいないんだが。


キョロキョロしていたら、斧男の体が揺れ…脇腹あたりからチビ太くんがひょっこり顔を出した。


「おも…重いっスーーーー!!」


哀れ、巨体に押しつぶされていたらしい。


よじよじと何とか体の下から上半身を捻じり出すと、斧男の巨体を「ふっ!」とか呻きつつ、仰向けにごろりと転がした。


「お…重かったっス…」


完全に斧男の体の下から這い出して自由の身になったチビ太くんは、若干疲れているようだが傷すら負っていないようだ。


一方の斧男は、右の脇腹から胸あたりが凄い事になっていた。


頑丈そうな鎧が激しく変形している。一部は溶けてそこから今も細い煙が上がっていた。斧も刃先が変形している。


「ああ~ボクの剣が…。」


チビ太くんが項垂れているところをみると、チビ太くんの巨大剣もいかれてしまったんだろう。


互いのスキルが強力過ぎたんだ。



「困ったっス~…。剣が使い物にならなくなったっス…」


巨大な剣を抱いて眉を思いっきり下げたチビ太くんは、かなり悄然としている。


「素晴らしい!素晴らしい闘いでした!勝者はギルド:ムーン代表、セストさん!皆さん、盛大な拍手を!!」


キーツの張り切ったアナウンスが流れ、割れるような拍手に包まれると、チビ太くんはようやく晴れやかに笑った。


「いや、勝てただけ良かったっス!皆さ~ん、応援ありがとうっス~!!」


ぴょんぴょん跳ねて嬉しさを表しているチビ太くん。


「そうだよ。素直に喜んでくれなきゃウチの相棒が浮かばれない。」


思いがけない奴がチビ太くんに後ろから声をかけた。いつの間にかさっき斧男をビビらせていたフツメンが、闘技場に上がってきていたようだ。


「あ~あ、酷いな。治療にも防具や武器の修理にも、手間がかかりそうだよ」


そう言って斧男に両手をかざす。

もちろん魔法を感知したけたたましいアラームが鳴り響いたが、斧男もうっすらと目を開けた。


「大丈夫?ブルーノ…」


「あ…俺…」


しばらくぼんやりしていた斧男は、覚醒してきたと同時に情けない顔になる。


「俺…負けちまったんだな」


「うん、いい対戦だったけどね。今日は僕が治療してあげるからゆっくり休んで、明日からまた頑張ろう」


斧男は涙目で大きく頷いている。ガタイの割に相当単純で素直な性格らしい。


「さっ、分かったら帰ろう。自分で歩いてよ?ブルーノみたいなでっかいの、運べないからね」


まだ完治していないらしい斧男は、顔を顰めながら何とか立ち上がる。


立ち上がると鎧があり得ない形に歪んで溶けているのが鮮明に見えて、余計に痛々しい。


「ホント酷いね。…そうだ、君の大剣も溶けてるよね」


フツメンがチビ太くんの剣も検分し、う~ん…と唸る。相当酷いようだ。


「君、この後第三試合もあるよね。一緒に受付に交渉しに行ってみない?確かここ、凄い高性能の武器を売ってるって噂もあるんだ。もしかしたら修理とか、新しい武器とか、ゲット出来るかも」


え!?マジで!?


フツメンの突然の提案に驚いたのはチビ太くんだけじゃない。俺だっておおいに驚いた。多分今ごろゼロも慌てている事だろう。


「俺、ちょっとトイレ」


チャラたれ目騎士に言い訳して、さりげなく席を立つ。歩きながらインカムでゼロに話しかけたら、案の定ゼロは軽くパニクっていた。

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