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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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第二試合

試合が進むと、徐々に異変が目に付くようになってきた。試合の相手が現れず、不戦勝する奴が出始めたからだ。


「あちゃー、やっぱりそうなるよねぇ」


チャラたれ目がため息をつく。


「王室肝いりの大会だってのに…これ以上棄権が増えないといいけどね」


チャラたれ目…意外とマトモな奴なんだな。


確かにチャラたれ目の言う通り、棄権が増えると盛り上がりにもかけるし、第一せっかく闘っててっぺんを決めようってのに、納得性に欠ける。残った俺達がなんとか盛り上げなければ。


「あ、お呼びだ。頑張ってくるよ」


「ああ、なんか盛り上がる派手な戦闘頼む」


俺のオーダーに、チャラたれ目は「何それ」と笑いながら去って言った。…別に冗談じゃなかったんだけどな。


少し間をおいて第二闘技場に現れたチャラたれ目は、意外にもかなり強かった。武器はスタンダードな片手剣、相手も片手剣だから力量が見えやすいってのもあるだろうが。


しかも型が崩れていない。


冒険者は色々なモンスターを相手どるから、対人用の一般的な型だと使い勝手が悪い事も多いようで、冒険者歴が長い奴ほど自己流の崩れた型になりがちだ。


なのにチャラたれ目ときたら、お手本にしたいくらい型通りの流れるような剣捌きを見せている。もしかして兵士とか騎士とかだったりするんだろうか。…人は見かけによらないっていうしな。


派手さは残念ながらないものの、終始押し気味で試合を進めているチャラたれ目をぼんやり見ていたら、俺のインカムにも呼び出しのコールが入る。2試合目は一体どんな奴が相手なんだろうか。


…まさかレジェンドじゃないよな…?



楽しみ半分不安半分で控え室に入ると、そこに居たのはなんと妙齢の女性だった。


当たりだ!!


こんなむさ苦しいおっさんばっかの武闘大会で、まさか女性にあたるとは!!


なんか嬉しい!


「あなたが対戦相手ね!…さっき英雄と戦った人よね?面白い闘いだったから、対戦するのが楽しみだわ!」


朗らかにそう話しかけてきてくれた。


「よろしく。…今度は武器をダメにしたりしないんで安心して下さい」


念のために言ってみると、彼女は「ああ、あれね。あれは勘弁して欲しいわ!」と明るく返してくれた。サバサバしたいい人みたいだな。


「私の名前はウィズ。女だからって手加減とかはやめてよね?これでも強いのよ!」


細いがしっかりと筋肉のついた腕で力こぶを作って見せた。


ウィズさん…ウィズさんね。

よし、多分覚えた。


武闘大会が始まってから、ほぼ男としか会話してなかったから、ウィズさんが女神に見えるよ。もちろん女神だとしても手加減なんか断じてしないけどな。


真剣な相手に手を抜くのは相当失礼だし、そもそも俺の方が強いのかすら分からない状況だし。全力で行かせてもらおう。



ゆっくり話す暇もなく、闘技場へ進むように案内が入る。俺達は一瞬顔を見合わせてから、それぞれの魔法陣に向かった。



魔法陣に足を踏み入れると、瞬時に闘技場に転移される。本日2度目の押し寄せるような熱気に包まれた。闘技場の向こうにはウィズさん。


周辺のおっさん達からダミ声で声援が飛んでいるところをみると、一回戦を経てそれなりにファンを獲得しているらしい。ウィズさんは既に武器を構え、準備万端だ。


ウィズさんの武器も充分変わっている。2本の極端に反った短剣を逆手に構える二刀流だ。これは…俺と同じで接近戦が主なんじゃなかろうか。


「始め!!」


審判のコールと同時に、目の前にウィズさんが迫っていた。


ーーー速い!!


上体を後ろに逸らした瞬間、下から抉るように振り上げられた短剣が、目の前をよぎる。


危ねぇ!!


目の端に閃くものを感じて思わずウィズさんの肩を突き、その反動で距離をとったら、今度は逆サイドから腹を切り裂かんばかりの勢いで、横殴りに短剣が通り過ぎた。


そうか…二刀流だから、初手から次への攻撃の間隔が極端に短いんだ。剣技より格闘に近い間合いでの応酬になりそうだ。


「避けられちゃった。自信あったのに」


軽い口調の割に、表情はかなり悔しそうだ。確かにスピードだけならMr.ダンディよりも速いがな…。


「さあ、あなたも武器を構えてちょうだい!全力のあなたを倒したいわ!」


ウィズさんがマント状にしていた布を指差し叫んだ。


本当は格闘が主な闘い方なんだが、第一試合ですっかり布で闘うイメージがついてしまったようだ。まぁ隠し球は多い方がいい。布のイメージが強いなら、いけるところまでこれで乗り切ろう。


俺は布を手に取ると、フワリと広げながらその場でターンする。両手を広げ、鮮やかな布を体の後ろで構えた。武器にも防具にも転用しやすい、万能の構えだ。


「艶やかね」


言いながら瞬時に間合いに入ってくる。と思ったら、いきなり目の前から消えた。


下か!?


思った時には足を払われていた。

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