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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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レジェンド爺さんの闘い

「あれだろ?レジェンド」


「マジで!!いるのかレジェンド!」


俺が指した闘技場3を嬉々として見つめる3人。その憧れの眼差し、皆それなりにいい年なんだから少し控えた方がいいと思うぞ?


「うわ!爺さんなのにすげー体だな!」


「確かに予選会にはあんな爺さんいなかったぜ!あれがレジェンドか!」


一様にすげ~!すげ~!とすっかり子供のように舞い上がっている。意外と冒険者達ってミーハーなんだな。


「おい!このインカム、なんかサブで受信できる音声あるって言ってたよな!」


「そうだよ!なんかこのダイヤルで…」


「あれじゃね?ダイヤルのこの番号、闘技場の番号なんじゃね?」


必死でインカムのダイヤルと格闘する3人。どれだけレジェンドに憧れてんだよ。必死過ぎだろう。


「聞こえた!レジェンド!!」


あ、やっぱりダイヤルは3が正解なんだな。じゃあ俺も…。


いきなり聞こえてきたのは、戦士爺さんの高笑いだった。


「それで終わりか、青二才!」


筋肉隆々の爺さんが、どでかい大剣を振り回しながら既に戦意を喪失した男にズンズンと近付いていく。男は尻餅をついたまま、両手両足を器用に使いながら無様に後退する。


「こ…降参だ!降参する!」


モニターでは爺さんに隠れて見えないが、多分真っ青か涙目かのどちらかだろう。戦士爺さんは大剣を床に突き立て、首をゴキゴキとならしてから頭をかいた。


「ふん、情けないのぅ。それでもギルドのエースか!これじゃこの前戦ったスライムの方が、まだ手応えがあったわ」


「く…っ!」


悔しげな呻きが聞こえるが…あいつギルドのエース…?


戦ってるとこすら見てないから何とも言えないが、実力差がハンパなく違った感じだよな、これ…。


「うわ…あいつ、ステビアのエースだよな。あいつでも歯がたたないのか」


「強いのか?」


チャラたれ目が珍しく苦い顔をするから、思わずストレートに聞いてしまった。それになぜかバトルマスターが簡潔に答えてくれた。


「冒険者の中では上級だ。まぁギルドの格が高い所ならもっと強い奴もいるけどな」


なるほど…凄えな、爺さん。

感心したのに、爺さんは突然天井を仰いでこんな事を言い放った。


「のぅ、そこのスライム!お主あの時のスライムじゃろう、少しは強うなったか!?」


次いで響き渡るバカでかい笑い声。


「まぁ少々強うなったところで、まだまだワシの足下にも及ばんじゃろうがの~!!」


子供か!


ムカつくが、実力は本物だけに始末が悪い。今なら戦士爺さんとケンカばっかしてた魔術師爺さんの気持ちが、少し分かるかも知れない。


挑発されたスラっちはガラスのボックスから飛び出さんばかりに跳ねている。マジで再戦したいだろうなぁ、スラっち…。


「え、あれスライム?なんであんなトコ居んの?」


「と言うか…何故にレジェンドがスライムなんぞにケンカを売っているんだ?」


チャラたれ目と犬耳紳士の疑問はもっともだ。仕方なく当たり障りのない回答をするハメになった。


「あの爺さん、この前ここのスライム・ダンジョンに挑んで、ボススライムをコテンパンにのしてたからな。その流れだろ」


「ああ…ここ、ギルド:クラウンの訓練施設らしいな。…だからってレジェンドがスライム挑発することないだろうに。子供みたいな人だな」


そうだよなぁ。レベル150オーバーで、年齢的にも70越えた爺さんの言葉とは思えないよなぁ。


苦笑している犬耳紳士に、今度はなぜかバトルマスターがくってかかる。


「言っとくがなぁ、ここのダンジョンはスライムといえどそこらへんのB級モンスターよりよっぽど強いぞ。あのスライムなんかA級通り越して多分超級だ」


「へ!?なんだそれ!スライムだろ!?」


「スライムでも、だ。大体強い相手じゃなかったら、それこそレジェンドが相手にするわけないだろ!」


バトルマスターがムキになる事もないと思うが…。あれか、自分がジョーカーズ・ダンジョンで負けてるから、ここのモンスターの強さを主張しておきたいんだろうか。


…分からないでもない。男心は意外と繊細だからな。


ひとしきりスラっちをからかった戦士爺さんは、満足した様子で悠々と闘技場から出て行った。ガラスボックスの中でスラっちがションボリと壁にもたれかかっているのが哀れだ…。


俺が優勝したら、スラっちと戦士爺さんの再戦でもオーダーしようかな。



「おっ!呼び出しだ。試合が近いらしい、行ってくるよ」


犬耳紳士が颯爽と出て行く。その姿を見送ってから、改めて4つの闘技場を見下ろしてみた。


今試合をしている3つの闘技場では、強いて言えば闘技場1の女戦士が地味に強いかな。大技も使わず相手の攻撃を軽々と躱しては、カウンターでダメージを与えている。そろそろ決着がつくだろう。


…あれ?今、相手の男…。


そう思った時、会場内にけたたましいブザーの音が鳴り響いた。

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