新武器開発会議②
うわぁ、めんどくさい奴が入ってきちまった…!
「おうルリ、座れ座れ」
「ベッピンさんが入ると酒が益々美味くなるのぅ」
俺の気持ちも知らず、カエンもドワーフ爺さんも上機嫌でルリを迎え入れる。来るなりグイグイ呑みながらここまでの話を掻い摘んで聞いたルリは、ただ今爆笑中だ。うん、気持ちは分かる。
「なんだよー…。そんなに笑わなくても…」
さすがにゼロはションボリしてしまった。
「じゃがバカにしたもんでもないからのぅ。異界の道具や風習はここで知られとらんだけに可能性に満ちとるしのぅ」
ドワーフ爺さんのしみじみとした感想に、ルリも笑いを収めてくれた。
「そうかもねぇ。ねぇゼロ、他にもないの?そういうトリッキーな動きするの」
「他にも…?」
「おいおい、いつトリッキーな動きの話になったんだよ」
思わずツッコミを入れる。ルリの思考はいつもどこか飛んでるんだよな。
「だってジョーカーズ・ダンジョンのボスの武器でしょ?トリッキーな動きする方が面白いじゃない」
出たな、面白さ至上主義発言。
やるのは俺だぞ!?
「それこそ組み合わせれば武器になったりするかも知れないじゃない?知っておいて損はないわよ」
くっ…妙に説得力があるのがムカつくな。でも自分の身は自分で守るしかない…なんか嫌な予感するし。
「ゼロ、そんな真剣に考えこまなくても大丈夫だから…」
「あ、いや…もう思いついてはいるんだけど…それを説明出来る代用品が思いつかなくて」
…怖い。何を思いついたんだか。
「よく考えたら、ダンジョンカタログに載ってるかも知れないから見てくる!」
…それは、あるだろう。どんな仕掛けか知らないが、ダンジョンカタログにはゼロの居た世界のものもふんだんに掲載されている。
最初掲載されていなくても、ゼロが必要を感じれば追加されていくようだし、今ゼロが想像している物は、確実に載っているに違いない。
「まぁまぁ呑め呑め!」
「そんな不景気な顔では、折角の酒が勿体無いですな」
「そうじゃぞ?ゼロ坊もお主のために一生懸命考えとるでのぅ、ありがたく受け取るんじゃぞ?」
うう…でも爺さん、俺カッコイイ武器が使いたいんだよ!第一俺はぶっちゃけトリッキーさとか求めてないんだって!
ヤケになって杯を重ねながらブツブツ言っていたら、勢い良く扉が開いた。
「お待たせ!あったよ!」
うわぁゼロ…満面の笑顔。
「なんだそれ」
ゼロは大小幾つもの輪っかを、嬉しそうに俺達に掲げて見せた。
「えーとこれ…フープ…リング?まぁプラスチックの軽い輪っかなんだけど」
名前すら怪しいのか。
「これが意外と結構面白い使い方が出来るんだ。このでっかい輪っかだとこうして…」
ゼロは輪っかを頭から通して腰の辺りに構えると、勢いを付けて回し始めた。
「…こう、うまく動かすと輪っかが落ちないでしょ?ウエストが細くなるって、ダイエットにも人気があるんだよ。」
「ホント!?」
ルリが目を輝かせて飛びつく。女って、なんでこう美容系の話に弱いのかね…。
「あっホント…っ!結構効くかも…っ!」
楽しげに輪っかを回し始めたルリを見ながら、ゼロは今度は小ぶりな輪っかを腕に通し回し始める。グレイがそれを見て、何かを思い出すように顎に手を当てた。
「南部の…円刀に似ていますな」
「ああ、俺様も見た事がある。舞踏を生業にしている奴らが使う円形の刀だろう」
どうやらカエンも見た事があるらしい。
「その通り。舞いながら戦う姿は美しいものでしたな」
「そうかぁ?大小の円刀を体中に背負ってぶん回しながら戦うんだぜぇ?俺様が見たのが男だったからか…あんな鋭い刃がついたもんが体中についた状態で蹴るわ跳ねるわバク転するわ…ゾッとしたがなぁ」
それは怖いな…。
「あー…ゲームで見たチャクラムみたいなイメージなのかな。僕の世界にもあったよ、そんな感じの武器。主に投げるものだったみたいだけど」
「ああ、そいつらも投げたりしてた。回す遠心力使って投げるみたいで、投げてくるタイミングが掴めなくて相手は苦戦してたみたいだなぁ」
なるほど、そういう利点もあるのか。
ゼロも感心したようにカエンとグレイの話を頷きながら聞いている。そして、ハッとしたように手にしていた輪っかをもう一度俺達に見せた。
「あ、で…これは戦闘用じゃないけど面白いポイントがあって…もちろん投げられるし、地面を転がしたり、こうして…跳ねさせたり回転かけて途中から手元に戻ってくるようにしたりも出来るんだ。」
おお、輪っかはしなりながらポヨンポヨンと跳ねたり、意思を持ったかのように途中まで進んで戻って来たりする。ちょっと面白いな。
「なんかね、ジャグリングって言って、これを自由自在に操って、もっと凄い事する人が沢山いたんだよ~。ああ、もどかしい!!」




