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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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180/320

他ギルドの挑戦者達⑬

「え…なんでこんなに進んでるんだ?」


思わず声にでた。なんせ水路どころか次の地形ダメージエリアも、小人になってしまう第2ステージも飛び越えて、第3ステージに入っているからだ。


「あの魔法の絨毯、反則だよ~」


全力で嘆くゼロの代わりに、ルリが状況を説明してくれたところによると、なんでも彼らはほとんどの道のりをあの魔法の絨毯で疾走したらしい。


水路はもちろん、次の氷の地形も「寒っ!」と文句を垂れながら空の旅。厄介な敵も空を飛ばれると手が出せない。


高速で飛びながら、宝箱だけ上からさらっていくという、なんともダンジョンマスター泣かせの戦法をとっていた。


「戦ったの、本当に3回くらいよ。首長竜とフロストバードと、小人の国のピクシー達だけ」


なんとも効率のいい…。


しかし今は…モニターで見る限り疾走してる感はゼロなんだが。


「今はどうなってんだ?」


第3ステージはランダム状態異常だ。ルリがうふふ、と含み笑いをしている。


「肝心の風の精霊が、面白い状態異常にかかってるの」


「へえ…?」


状態異常は…「あべこべ」?

これはまた初めて見るが…どんな状態異常なんだ?


「エアリルどうしちゃったの?このエリアに入ってから、なんだか変よ?」


「べっつにぃ(あたしだって分かんないよ~!)」


「何が別にだ。さっきから自分からモンスターに寄ってったり、宝箱シカトしたり、あからさまにおかしいだろうが」


「関係ないでしょ、放っといて(思ってるのと反対に動いちゃうんだよ~!お願い、助けて~!)」


これは酷い…!

言動が意思と逆になっちまうのか!


心配するオネェ呪符使いにも毒舌格闘家にも、ケンカを売るような態度を続けるエロかわ精霊ちゃん。言い争う間にも、宝箱をスルーしてしまった。


「他の3人はね、結構マシな状態異常だったのよ。毒と麻痺と眠りだったから備えさえあれば対処出来るじゃない?」


いやいやルリ…それもそれなりに酷いから。さすが仮名:状態異常盛りだくさんダンジョン…。


「それに比べるとこれは相当分かり辛い状態異常だもの。どうやって切り抜けるのかしらね!」


ワクワクした目でモニターを見るルリ。しっかり楽しんでるな。俺はエロかわ精霊ちゃんがちょっと可哀想なんだが…。


「風の精霊は気まぐれだからな。従うのが嫌にでもなったんじゃねぇか?」


毒舌格闘家が、エロかわ精霊ちゃんを冷たい目で睨みつけた。


「そうかもね、でもシャウにだったらいつだって召喚に応じちゃうわよ♪ (そんな訳ないでしょーが!確かにあんただったらぜーったい召喚なんかに応じないけど!)」


バッチン!と毒舌格闘家にウインクまで飛ばしているという事は、エロかわ精霊ちゃんはきっと心の中では掴みかかりたいくらいの思いなんだろう。


この言動が全てあべこべ…真逆だと思うとかなり切ない。



ただ、毒舌格闘家も違和感を感じているのか、胡散臭そうにエロかわ精霊ちゃんを見つめている。


「…お前マジで熱でもあんのか。おいジュリアン、こいつ一回休ませた方がいいんじゃねぇか?」


「もう!ジュリアって呼んで。…でもそうねぇ、一回呪符に戻した方がいいかしら」


オネェ呪符使いもさすがに困った顔でエロかわ精霊ちゃんを見るが…あいにく彼女は今、自分の意思を真逆にしか伝えられないんだよな…。


イヤイヤするように首をブンブンと横に振ってはいるが、あれ多分、もう呪符に戻りたいんだろう。…真面目にややこしい。


「…まだ頑張れる?」


心配そうなオネェ呪符使いに、腕組みでフン!と鼻を鳴らし「あったりまえでしょ!」と豪語するエロかわ精霊ちゃんは、きっと心の中では助けて欲しくて涙目だろう。


厄介な状態異常だ。



「ま、エアリルちゃんがいいってんなら大丈夫っしょ。時間もないし、先急ぐっすよ!とりあえずこっからは歩きましょー!」


男戦士は気にも止めない様子で魔法の絨毯から飛びおり、さっさと歩き出した。


「フレッド…そうね。エアリル、無理しないで辛かったら言ってね。今回随分頑張ってもらってるし…」


「大丈夫よ、放っといて!(もう無理~!助けて~!!)」


プイと顔を背けて歩き出すエロかわ精霊ちゃんを苦笑しながら見送って、オネェ呪符使いはため息をついている。


その頭を毒舌格闘家が激しくどついた。


「辛気臭せぇ顔すんな。精霊の気まぐれなんかいちいち気にする事じゃねぇ」


…慰めたんだと思うが、なにも相手が座りこんでしまうくらい激しくどつかなくてもいいんじゃないかと思う。


「痛いじゃないの、バカ力!!」


頭を抑えつつ立ち上がるオネェ呪符使いは、それでもさっきより元気な声になっていた。まぁ、いいコンビなんだろうな…。


「兄さーん、姐さーん!早く早く~!!めっちゃモンスター出たぁ!」


男戦士の声に走り出す二人。視線の先では既に、男戦士がモンスターの群と戦い始めていた。

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