スキルとダンジョン③ 10/21 1回目
「なぁところでさ、昨日武闘大会の事話しあったんだろ?なんかいいアイディア浮かんだか?」
「うん、大体基本方針は決まったよ?今日の夕方王子さまに来て貰って、話し合う事になったんだ」
ゼロの顔を見る限り、そこそこうまく纏まったんだろう。
「そうか、良かった。…ていうか前から気になってたんだが、いつもアライン王子の方がダンジョンに来てくれるけど、俺達が出向いた方がいいんじゃないのか?」
王族呼び出すって、冷静に考えるとどうなんだよ…。
「あー、そんなちっせぇ事気にすんな!あいつらもそんなの気にするクチじゃねぇ。ガンガン呼び出しゃいいんだよ」
カエンが事もなげに言う。しかしここの王族…フレンドリー過ぎなんじゃねぇのかな。威厳とかも大事だと思うんだが。
「武闘大会が成功すりゃ財政も一気に安定するんだ。あいつらも力入れてる事だしな。まぁ問題ねぇってこった」
カエンは豪快に笑ってるし、ここまで言うならまぁいいんだろう。
その時、いきなりゼロが立ち上がった。
「あ、そうだ。ハクとスラっちには昨日のボス戦分の経験値入れなきゃだね」
「突然だな」
「いや、思い出したから。忘れないうちにやっとかないとって思って」
素早くダンジョンコアに向かうと、ゼロは早速指示を出した。
「えー…と、ハクが昨日撃退した分の経験値を、ハクに付与して」
おいおい、めちゃめちゃザックリした感じで指示出したな!これでいけるもんなのか!?
『 経験値20150ポイントをハクに付与します。承認しますか?』
「承認!」
経験値たかっ!
でもそうか、レベル50前後の奴らを8人も撃退したんだから、そうなるのかもな。
初っ端からラッキーだ。
体中に力が漲るのを感じる。やっぱりレベルアップは素直に嬉しい!横でゼロがスラっちに経験値を振り込むのを見ながら、俺は軽く感動していた。
「あっ、スラっちは2レベルしかアップしなかったな~」
ゼロの残念そうな呟きが聞こえる。
そうか、スラっちもレア度高いし、昨日の挑戦者は3人だったしな。妥当なところだろう。
モニターで見てみると、既にスキル教室で特訓中だったらしいスラっちは、突然漲ってきたパワーに喜びの舞を舞っていた。
舞と言ってもまぁ、跳ねてはクルクル回ってるだけだけどな。突然跳ね始めたスラっちに、困惑顔のエルフ達が地味に面白い。
…ていうか、俺のレベルはどうなんだ?
多分スラっちより昨日獲得した経験値はかなり多い筈だが、俺の方がレア度は高いしな…。
「なぁゼロ、俺は?どれくらいレベル上がった?」
「えーっと…5つ上がって今レベル6だね。結構ステータスアップしてるよ」
言いつつ見せてくれたステータスに、俺は小躍りした。
これは凄い!
ステータスだけなら、かなりスラっちに近づいている。運だけなら勝ったし!!
名前:ハク
LV:6
種族:龍幼体(聖)
性別:オス
レア度:9
属性:聖
◆能力値
HP:26796/26796
MP:17407/17407
STR(筋力):21917
VIT(耐久):14547
INT(知力):22047
MIN(精神):26757
DEX(器用):9322
AGI(敏捷):14547
LUK(幸運):72737
スキル:
・中級白魔術、
・中級聖魔術、
・かばう、
・格闘、
・ムチ、
・ヌンチャク、
・人化、
・ブレス(閃光)
・教育、
・対集団戦闘、
・幸運、
・《NEW》先制、
・《NEW》自動回復(微)
称号:
・主の忠臣、
・大金星、
・ナイト、
・スキルコレクター、
・生命の探求者、
・塾講師、
▽スキル詳細。
『NEWスキルのみ表示』
《先制》。意図すれば必ず相手より先に攻撃できる。
《自動回復(微)》。毎分2ずつHPが回復する。
「先制」と「自動回復(微)」は、たしか聖なる龍幼体の自動習得スキルだった筈だ。他にもいくつかあったから、レベルがあがれば自動習得していくんだろう。
しかし「先制」も「自動回復(微)」も、名前を聞いただけで、戦闘ではかなり役にたってくれそうに思えるスキルだ。実戦で使ってみるのが楽しみだな。
「凄いね、ハク!!」
「このステータスなら少しは安心できるわね」
ユキもルリもニコニコと褒めてくれる。
「おっ、ちったぁ相手になりそうなステータスになってきたな。今晩また手合わせしてみっかぁ?」
カエンも興味津々といった顔でちゃかしてくる。
俺はこの日、自動習得したばかりの新スキルを引っさげて、意気揚々とジョーカーズ・ダンジョンのモニターチェックに勤しんだ。
でも、現実はそう甘くもない。
こっちがやる気満々でスタンバっているというのに、本日のジョーカーズ・ダンジョンの挑戦者は、なんと第二ステージで早々にリタイアしてしまった。
「何やってんだよ、根性なしっ!!」
…と、つい叫んでしまったのは勘弁して貰いたい。スラっちもあっさり圧勝で「喜びの舞が可愛い」くらいしか言える事もない。
がっかりだ。




