スキルとダンジョン① 10/19 2回目
そして翌朝、41日目の朝。
全力でだるい。
ゆうべ頑張り過ぎたせいだとは思うが、眠くてしょうがない…。
「ハ~ク~起きて~!!」
一生懸命叫んでいるユキの声も聞こえちゃいるが、なにせ体が言う事を聞いてくれない。
「うう…朝メシ…いらねぇ…」
究極の選択だが、今はメシより睡眠の方が大事だ。
「えーダメだよぉ!シルキーのお姉ちゃん達泣いちゃうよ!?」
もう泣いてもいい…。
「ユキ、それくらいじゃムリだろ。ルリとマーリン呼んで来い」
「あんたは鬼か!!」
思わず飛び起きちまったじゃねぇか!
あいつらに寝起きのチビ龍の姿とかガキンチョの姿とか見せたらどうなるか…考えただけでも恐ろしい!
寝起きは姿が安定してない。今日も今現在自分がチビ龍なのか人型のガキンチョなのかは分からねぇし。
「ほらな、一発で起きただろ?」
自慢げなカエンが恨めしい。「すご~い!」と目を丸くしてるけど、言っておくがユキ…カエンが凄いんじゃない。ルリとマーリンが怖いだけだ。
しぶしぶ起きて大人バージョンに変化してから食卓に向かう。もちろん既に皆着席済みだ。
「昨日は随分遅くまで検討していたようですな」
言いながらグレイがさりげなくコーヒーを淹れてくれた。
「ああ、つい夢中になっちまって。気がついたら明け方だった」
「スキルは数も種類もいくらでもあるもんね。なんか欲しいのあった?」
「逆にあり過ぎて選べねぇ。とりあえず地道に皆の手持ちのスキル教えて貰った方がいいのかもな」
ゼロにそう答えた途端、なぜかルリが不満そうに眉をあげる。
「みみっちいわね!せっかくあるんだからスキルチケット使えばいいじゃない」
ルリ…!どういう風の吹きまわしだ?
「いいのか?皆だって使いたいんじゃないのか?なんか俺だけ悪いし…」
するとルリはウフフ、と意味ありげに笑った。なんだよ、なんか怖いんだが。
「皆のためになるスキルにすればいいでしょ?私いい事思いついちゃったのよね~」
「悪い顔してんなー!ロクな事じゃねーな!」
ブラウ、正直に言い過ぎだ…。案の定ルリに頭をはたかれている。
「思ったんだけど、スラっちの『開眼』みたいな1つ覚えれば他のスキルを大量に覚えられるようなスキルもあるわけじゃない?」
「ああ、俺もそれは考えた」
「そう、だからもうちょっと捻ってさらに上行くスキルを狙いたいわよね?」
なんて欲張りな…!
「スラっちの『開眼』は、確か相手から受けた攻撃でスキル覚えるんだったわよね。それより付加価値があるって言ったら…」
う~ん…と考え込む。
なんだよ、これから考えるのかよ!期待させやがって…!
至極楽しそうなルリとは逆に、俺は心の中で悪態をつく。残念だがルリ程そういう系の発想がポンポン出るわけじゃない。ルリが思いつくのをイライラしながら待つ。
ぶっちゃけ昨日はスキルの一覧と簡単な説明文から良さげなのをピックアップするだけでいっぱいいっぱいだったし、吟味はこれからだ。参考にするには丁度いいからな。
「そうねぇ、指定した相手のスキルをまるごとコピーできるとか」
…なんだそれ、便利過ぎるだろ…。
スラっちからコピーしただけでも覚えられねぇくらいスキルゲット出来るじゃねぇか。
「相手のスキルを好きな人にコピー出来ちゃうとか。」
さらにすげぇな。これなら皆の役にも立つのか…?
「色んな幻覚見せてそれが実際にダメージになるとか…。」
…それは…ジョーカーズ・ダンジョンのボスっぽいけど、結構えげつない事になりそうだ。
「あっ、そうだ。戦った事がある相手を好きな時に呼び出して使役できるとかは?」
よくそれだけポンポン出るなぁ、感心するよ。ただな…。
「すげぇ素敵スキルの数々だけど…便利過ぎてなんか人としてダメになる気がする。…ちょっとカエンは使役してみたいけどな」
「おいおい、冗談じゃねぇぞ、そんなヤバいスキル…」
さすがのカエンも青くなった。
めっちゃレアな顔見たな。
一方ルリは分かりやすくご立腹だ。頭から角が出てるんじゃねぇか?って顔してるけど。
「はぁ!?なに甘ったれた事言ってんのよ。折角のスキルチケットなんだから、すっごいスキルつけなくてどうするのよ!」
「いや、分かる気がしますよ。一切努力なしだとありがたみもないですからなぁ。あぶく銭みたいに身につかない気がするんでしょう」
そう、そういう感じだ。さすがグレイ分かってるなぁ。
「やっぱ当面皆から地道にスキル習いながら、しばらく考えてみる」
「本気!?スキル増やすのに一体どんだけかかると思ってんの!特に魔術系なんか、あんたからっきしじゃないの!習得させるのにゼロがどれだけ苦労したか…!」
「あ、死んだ」
ルリのその通り過ぎる指摘に思わず魂が抜けた顔をしてしまった…。
「ルリ~あんまイジメんなよー。ハク意外と繊細なんだから」




