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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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ジョーカーズダンジョン、2日目⑬ 10/16 1回目

「いや、こんなデカい樹は…のわあぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」


潮時だと悟った俺は、勢いよく両腕を振り回した。


そう。今の俺の姿は、今朝習得したばっかりのガジュマルの樹だ。枝からは蔦のように、無数の気根が伸びている。振り回すだけで充分に武器になるんだよ!


「ぐあっ!?」


「きゃああっ!!」


へのへのもへじ達が次々とぶっ飛ばされる。激しくゴロゴロと転がって部屋の端まで弾き飛ばされていった。入ってきた扉の前で団子になってもつれあっている。


うん、予想通りの効果だ。

腕振り回すだけでこの攻撃力!これはなかなかいいかも知れない。


のそのそと近づき、うまく立ち上がれずにいたへのへのもへじ達に追撃。今度は無造作に腕を上から振り下ろす。


ビシビシビシビシっ!!


小気味いい音が響き、へのへのもへじ達は立ち上がろうとしてはなぎ倒されていく。


すげぇ、効果絶大だ!

この人数に、一斉に無駄なくダメージ与えられてるし!嬉しくなって無茶苦茶に腕を振り回す俺。


反撃の隙すらあるまい!



「いいわ!!避けて!」


へ!?


突然目の前に激しい炎が巻き起こった。

全身が炎で巻かれる。


くそっ!!炎系の魔法か!!


どうやらただ団子になって攻撃を受けてたワケじゃなかったようだ。女魔術師の術が完成するのを守ってたんだな、ちくしょう…!



俺は瞬間的に飛びすさり、爺さん魔術師の姿に変化する。速攻で回復を唱え、へのへのもへじ達から距離をとった。


あっちもキラキラしてるとこ見ると、すでに回復してるんだろう。へのへのもへじ達が一斉に動き出し、しっかりとした陣形を組んでくる。



隙がないな。

こうして見るとやっぱり厄介な相手だ。一番レベルが高かった格闘家がリタイアして、男魔術師が無力化出来ているのは幸運だったかも知れない。


さて、ここからが本番だ。

どう戦うか…。


さっきみたいに全体攻撃できるデカい体でいくか、それともこの部屋に紛れてしまうくらい、小さな体で翻弄するか…。


「皆、こいつは変身するからな!姿に惑わされるなよ!!」


聖騎士がへのへのもへじ達に向かって叫ぶ。まぁ当然の注意だろうが…。


でも、こっちだって頑張って変化の練習を目いっぱいしてるんだ。少しは引っ掛かってくれないと俺の努力が泣くんだよ!


よし、とりあえずは混乱させるか。人間混乱すると引っ掛かりやすくなるからな!


俺はへのへのもへじ達に向かってダッシュした。先頭の聖騎士の鼻先まで走り込み、目の前で真上に跳躍する。くるっと一回転しながら変化して、そのまま陣のど真ん中に華麗に着地してやった。


「えっ!」


「サ、サン!?」


「なんで!?」


リタイアした格闘家に変化した俺に、へのへのもへじ達は驚愕している。多分変化の精度は酷いもんだろうが、一瞬ならさほど問題ないだろう。



「馬鹿野郎!変化だ!!」


聖騎士が声を荒げるが、もう遅い!


陣の中心から、全員に容赦なく拳を叩き込む。俺がいた場所を中心に、円状に倒れこんでいくへのへのもへじ達。俺はその隙をついて、得物を握る手を的確に蹴り上げた。


無骨な槍が宙を舞う。


よしっ!

槍を空中で受け止めながら、俺は槍手に変化した。


奪ったその槍で、すぐさま持ち主だった槍手を攻撃する。


ちっ…槍のスキルはねぇから、やっぱりあんまり上手く扱えねぇ!槍手にギリで躱されてるし。


ただ、他のへのへのもへじ達にはそれなりに効果があるようだ。


「くそッ!どっちが本物なんだ!」


悔しげな声がする。加勢したくても、どっちを攻撃すればいいのか分からないらしい。


その時だ。


「槍を持ってる方が偽物だ!エリーゼ、撃て!!」


声と同時に銃声が響き、肩に鋭い痛みが走った。かつてない痛みに俺は思わず槍を取り落とし、その場に膝をついた。


痛てぇ!!

銃弾、マジでハンパなく痛てぇ!!


痛みに悶えてたら、いつの間にか槍手に槍を奪い返されていた。


ヤバい…!


くそ…!今狙撃手ちゃんに指示だしたのは…男魔術師か…!?

魔力も尽きてたし、戦闘には参加しないで扉のところで傍観してたから、正直ノーマークだったが…。


傍観してるからこそ、戦闘の全体像を冷静に見れていたんだろう。思わぬ伏兵だ。


くっ…これじゃ分が悪い。



俺は回復をかけながらへのへのもへじ達から距離をとり、小さな虫に変化した。ただでさえ万華鏡のように映り込みが激しい部屋だ。小さな虫なら紛れてしまって姿を捕捉出来ないだろう。



「消えた!?」


「どこに行ったんだ!!」


へのへのもへじ達が躍起になって俺を探している間、俺は必死で考えていた。やっぱりこいつら数が多過ぎる。なんとか気絶させて戦力を削いでいかねぇと、マジでヤバいかもしれない。


俺は口の中で呪文を唱える。巻き込まれないように天井近くまで飛び、そのままスターセイバーを放った。


無数に降り注ぐ光を追って、俺も姿を変えて降り立つ。

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