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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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ジョーカーズダンジョン、2日目⑪ 10/15 1回目

「問題点を分解して考えると…雷でダメージ受けるかもって事と、砂漠だから早く走れないって事だよな」


「だね。時間も大分ロスしてる」


そう、大分ロスしてる。じっくり考えてないで、サッサと移動してくれないか?マジでタイムアウトするから…!


「…………」


「…………」


「…………」


こっちの気持ちも知らず、一致団結して考えこむへのへのもへじ達。…軽くイライラするんだが。


「………あ!そうだ!」


バッと顔をあげるへのへのもへじ。

やっとなんか思いついたか!!


「スピードアップは?重ねがけすれば時間短縮できる」


「そっか、直線であの家まで走るとして、時間短い方が雷にあたる確率も減りそうだな」


「ただ…砂でしょ?走り辛いのに変わりはないわよ」


「砂浜だと波打ち際の濡れた部分はまだ歩きやすいよな。濡らすってのはどうだ?」


「それ、相当濡らさねぇとダメじゃね?」


「それに水分が多いと伝導性が高くなったりしないの?」


「さあ…?」


誰もが覚束ない知識なだけに、有効そうな手立てが見つからないようだ。


そして、やっと明るい声があがった。


「…そうだ!砂って埋れるから走りにくいんだよな?だったら重量を軽くすりゃいい!」


「ああ、あったな、そんな魔法」


「そうか、スピードアップと併用すれば、足をとられるのも最低限でいけそうだな」


「…なるほど。いいだろう」


聖騎士は男召喚師と女魔術師を見て頷く、という超簡単な指示を出す。


「後は靴。ブーツのヤツはいいが、サンダルのヤツは裸足で走れ。」


いったん指示が入ると動きが早い。男召喚師と女魔術師は重力操作とスピードアップを絶え間なく唱え、サンダルのヤツは一斉にごそごそと脱ぎ出す。


冒険者がこのレベルでこの人数のままパーティーを組んでるパターンはかなり稀だが、これだけ統率がとれていれば納得だな。


全員の様子を見ていた聖騎士が、一段と声を張る。


「ーーー行くぞ!!」


聖騎士の号令で、全員が走り出した。




8人もの大所帯で、奴らは落雷閃く砂漠を疾風のように駆け抜けた。


マジでめちゃくちゃに早かった。


雷にあたることもなく、遥か彼方に小さく見えていた家にグングンと近づいていく姿は、むしろ爽快だ。


「……うそ……」


もうゼロは唖然としてるし。今回はへのへのもへじ達にやられっ放しだな。


しかしこれで少しはタイムロスをカバー出来たんじゃないだろうか。もうラスボス戦は諦めかけていたが、これなら期待出来るかも知れないぞ?


家の中でてんでにハァハァと荒い息をついているへのへのもへじ達を眺めていたら、キーツのテンション高い声が響いてきた。


「皆さん、スライム・ロードにご注目下さい!!挑戦者の皆さんが、ついに最後の扉を開きます!皆さんお待ちかね、スラっちの登場です!!」



え!?

こっちも驚異のスピードだな!


スライム・ロードのモニターには、三人の戦士達とスラっちが映し出されている。


おっ!スラっち、やる気満々だなー。


跳ねてはクルクルっと宙返りして、やる気アピール!まるで戦士達を挑発でもしているかのようだ。爺さん達にやられて形も崩れる程落ち込んでたのが嘘みたいだな。


「あっ!スラっち楽しそうだね!今朝ね、スキル教室でいっぱい修行したんだって。きっとまた強くなってるよ?楽しみだね!」


ユキがシッポをフリフリと動かしながら、キラキラした目でモニターを覗き込む。


しかし朝からも修行してたのか。

よっぽど爺さん達に負けたのが悔しかったんだな、スラっち。


昨日の敗戦を経て、一体どんな戦い方をするのかかなり楽しみなんだが、如何せん相手が戦士ばっかり三人なんだよなぁ。単調な戦いにならないか、少し心配かも知れない。



戦士三人は、油断なくスラっちに近づくと、間合いをとったままスラっちを凝視している。


「ついにここまで来たな…」


感慨深げに、黒髪のガタイがいいヤツが、斧を担ぎあげながら呟く。これから戦闘なんだから、感傷的になるのはまだ早いんじゃないか?


「これが生スラっちか…。モニターで見てたよりも小さく感じるな」


赤髪の細マッチョは、そう言いながら大剣をスラリと抜き、スラっちに相対した。


「やっぱ可愛いな!」


金髪で浅黒い肌の魔法戦士は、思わず、と言った感じで座ってスラっちににじり寄ろうとして、他の二人に止められている。


まぁ、確かに可愛いけどな。




「よし!可愛く見えても激強だからな、気を引き締めていくぞ!!」


「おう!!」


黒髪斧戦士の掛け声と共に、一斉にスラっちに襲いかかる戦士達。スラっちは飛び上がって空中に逃げると、そのまま天井を蹴り、弾丸の様な速さで赤髪細マッチョを撃ち抜いた。


「ぐはぁっ!!」


声をあげながら3mほど吹っ飛ぶ赤髪細マッチョ。スラっちはプルプルっと震えたかと思うと、残る二人に向けて、風の刃を放った。


これは…ウインドカッター!


さっきプルプルした時、多分「ウインドカッター!」とか気持ち的には叫んだんだろうなぁ。全く聞こえないけど。


しかしさすがにスラっちで、これまで見たウインドカッターとは比べものにならない程、強力な魔法に見える。風の刃の量がハンパなくて、一瞬別物の魔法に見えたくらいだ。


「くっ……」


呻きつつ、金髪魔法戦士が回復魔法を唱えたようだ。

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