変化の可能性を追及してみる① 10/8 2回目
爆発みたいな音に、びっくりして飛び起きた。
なんだ!?何があった?
ゼロは…皆は無事か!?
周りを見回して、激しく脱力する。
マジかよ…。単にカエンの爆笑じゃねぇか。びっくりさせんなよ…。
「人騒がせな…」
思わず呟いたら、カエンに見つかってしまった。
「おっ!ハク、起きたか!お前勝ったんだってなぁ!あいつらバカだけどまぁまぁ強かっただろ?」
「…バトルマスターがなかなか厄介だったな。まぁ楽しかったぜ?…ていうかカエン、バトルマスターに何したんだよ。なんかトラウマになってたぞ?」
カエンはポカンとした顔で「はぁ?」と言ったきり、暫く考え込んでしまった。
「…なんかしたか?覚えがねぇなぁ」
うわ、最悪だ。トラウマになるくらいギッタギタにのしたくせに忘れ去ってやがる。バトルマスター…哀れだ…。
「それより!変化しながら戦ったんだってなぁ。あ~、あの女豹またじっくり見たかったがなぁ」
ニヤニヤ笑うカエン。もうバトルマスターの話題はどうでもいいらしい。
「凄い妖艶だったよ!バトルマスターとかメロメロだったもん!」
ゼロが楽しげに会話に入ってきた。
「あのね!ハクね、ドラゴンになったりスライムになったり、魔法使ったり武器使ったり、ブレス吐いたり…なんか凄かったんだよ!?」
ユキが一生懸命に説明する。
うん、いつもけなげだなぁ、ユキは。
「ただ、もうちょっと変化のレパートリーは必要だって話してたのよ。最後は困ってカエンの姿になったりしてたものねぇ」
ルリが晩メシを運びながら言う。
そうなんだよな。それは確かに課題だ。
このままだと割と近い将来に困った事になりそうだ。
「それでね!僕考えたんだけど。今日の夕食はハクのために、アイディアラッシュしながら食べたいと思いま~す!」
へ!?
ゼロの突然の宣言に俺は固まる。
「こんなキャラになって欲しい!ってのを皆どんどん言ってね。僕、話にでたのを絵におこしていくからさ」
え、いや…気持ちはありがたいが…なんかそれ、すっごい無茶ブリ来そうじゃないか!?
「イメージあった方がハクも練習しやすいよね?今日も絵にそっくりに変化出来てたもんね!」
ゼロは善意で言ってるんだろうが…皆の目が異様にキラキラしているのが怖い。メシもおざなりに、各々が想像を巡らせている…。
自分で考えるのは限界があるから、アイディアが貰えるのはありがたいが…不安だ。
「そう言えば、道化師っぽいのも面白いって言ってたね。僕、まずはそれを絵に起こすよ。ハクは出て来たアイディアから使えそうなの選んでね」
早速道化師かよ…そういうキワモノっぽいのばっかり出てきそうでイヤなんだよ…。
「あたしっ、可愛い男の子がいい!」
「ルリの好みは聞いてねぇ」
全く…カエンといいルリといい、少しは真面目に考えて欲しい。
「鳥っぽいのは?不死鳥とかサンダーバードみたいな感じ。今のハクなら飛べるから、それっぽく見えるんじゃない?」
さすがゼロ。そういうヤツだ!
そういうインパクトのあるヤツだよ!
「あ、閃いた。併せればいいんだ」
そう言ってゼロはサラサラとスケッチブックに絵を書いていく。
スケッチブックには、凛々しい顔の有翼の戦士が描かれていた。なるほど、これなら飛べるし武器も使える。使い勝手が良さそうだな。
「きゃあ、カッコ可愛い~!ゼロったら分かってるじゃない!!」
不本意だが、ルリのお眼鏡にも叶うようだしな…。それに純粋に鳥系のモンスターもありだろうな。ここまで姿が変われば混乱もひとしおだと思うし。
「鳥系があるなら動物系も何か欲しいですねぇ。もっふもふの、可愛い子がいいですぅ」
マーリンはそういう可愛い系好きだな。
「動物か…。馬とか、犬?猫?」
「くまー!」
「ウサギ?」
思いつく動物をあげるが、マーリンはジタバタしながら叫ぶ。
「しっぽがもっふもふなのがいいんですぅ!!」
そこは譲れないワケね。
「俺様は綺麗な姉ちゃん以外は興味ねぇなぁ」
「カエンの好みも聞いてねぇし。しっぽもふもふ代表なら狐だろうけど…。まぁ犬でも猫でもリスでもふさふさだけどな」
「狐でもっふもふかぁ…」
ゼロがスケッチブックを睨みながら呟く。
「なんか……なんか、思い出しそうなんだけどな~…」
しばらく考えていたゼロは、ハッとしたように顔をあげ、猛烈な勢いで絵を描き始めた。
バッとスケッチブックを俺に見せる。
そこには真っ直ぐな黒髪に切れ長の目、不思議な動きにくそうな衣装を着た美女が描かれている。
…今の話の流れで、何故に美女?
横からカエンが覗き込む。
「おお!!」
カエン、絶句。
無言でゼロの頭をグリグリと撫でた。…どストライクだったんだろうな。
「露出がほとんどないのに、この滲みでる色気!ゼロ、お前実はムッツリだな!?」
ゼロの眉毛がつりあがった。




