濃いめの挑戦者達⑳ 10/7 2回目
ノリノリとか…不本意なんだが…。
「…別にノリノリだったワケじゃねぇし。…でも、戦闘中に変化のレパートリーが少なくて結構困ったから、色々練習が必要だとは思ったな」
俺がそう言うと、なぜか皆イキイキとした表情になった。
「そうね!そうよね!レパートリーは重要よね!」
「まぁ、その方が戦闘に厚みが出ますな」
「うん!僕も協力するね!!」
一斉に言われ、俺は勢いに押される形で「ああ、よろしく…?」と呟いた。
その時。
突然通信が入った。
「居たっ!居たよ、スラっち!!」
ユキとブラウからだ!
良かった!スラっち、見つかったのか!
「今どこ?モニターつなぐから!」
ゼロが大慌てでつないだモニターには…かなり残念なスラっちが映っていた。
まだ体色も変な白っぽさのまま、壁に弾力感ゼロでもたれかかっている。
…うわー…完全にいじけてるなコレ…。
「すっごく…落ち込んでるね…」
「思ったよりひでぇな…」
尋常じゃない落ち込みっぷりに、さすがに声をかけ辛いのか、ブラウとユキもヒソヒソと話し合っているのが、モニターごしに聞こえてきた、
「スラっち…」
思わず涙ぐむゼロとルリ。皆が心配げに見ていたモニターで、突然予想外の光景が繰り広げられた。
スラっちの体色がさっと元に戻り、何度も何度も壁に体をぶつけ始める。
どうしたスラっち!?
悔しさを壁にぶつけてるのか!?
「ちょ…スラっち一体どうしたの!?」
ゼロの問いにブラウは耳を澄ませるそぶりを見せた。
「えと…落ち込んでる場合かー!!みたいな事言ってる」
あ…なるほど。
むしろ自分に喝を入れてるワケか。
そしてスラっちは、ひときわ高く飛び上がったかと思えと、ビカビカっと眩く光りあっという間に走り去った。
「やるぞーー!!って言って、走って行っちゃった…」
ブラウがポカンとした表情で言うと、ユキがブラウの腕を掴み、「行こ!」とスラっちを追って走りだす。
「ぼく達、とりあえずスラっち追いかけるね~!!」
「分かった!なんかあったら助けてやってくれ!」
走りながら言うユキに、俺も返事を返す。
スラっち…時間はかかったが、どうやら自力で、深い落ち込みから抜け出したようだ。
それでこそスラっちだよな!
今のスラっちはやる気に溢れている。
もう心配ないだろう。
その後スラっちはスキル教室のエルフ達に向かってなにやらぴょんぴょん跳ねていた。スラっちが一生懸命何か訴えてるのは分かるものの、飛んだり跳ねたりされるだけじゃ、さすがのエルフもお手上げだよなぁ。
美形が揃って困った顔…ちょっと面白い。
「あっ!いた!」
そこにユキとブラウが到着。
必死で走って来たんだろう、しばらくは話も出来ないくらい、息が乱れている。
スラっちはああ見えて素早さも尋常じゃなく高いからなぁ。本気でダッシュされるとそう簡単には追いつけないだろう。
ハァハァと荒い息のユキ達の周りに、エルフ達が集まってきた。スラっちはいつの間にか、ふわふわヘアのコノハちゃんの胸に抱かれている。
いいなぁ、そのポジション。
「どしたの?ユキちゃん。そんなに急いで」
ポニーテールの元気娘、ヤイバちゃんがユキに飛びつきながら尋ねた。ユキはしょっちゅうスキル教室に入り浸ってるからか、エルフ達とも仲が良いんだよな。
「ブラウも一緒か、いつも仲がいいな」
爽やかイケメンのダーツが、これまた爽やかにブラウに笑いかける。いつ見てもムダにキラキラしてるなぁ、エルフのスキル教室。
「ぼく達…スラっちを…追いかけてきたんだ…っ!」
ユキが息も絶え絶えに言うと、コノハちゃんとスラっちが、揃って首を傾げた。(多分)
「ああ…そう言えばさっきから、スラっちが必死でプルプルプルプルするんだが、わけが分からなくて困ってたんだよ。なんて言ってんの?」
ダーツ…本当に困ってるのか?
めちゃめちゃ爽やかですが。
当然俺の心のツッコミは届かないらしく、話は普通に進んでいく。
ダーツの言葉に、ここぞとばかりスラっちが跳ね始め、ブラウが一生懸命耳を傾けてるけど…やっぱり見た目的には可愛いだけだ。
ブラウ…なんで分かるんだろう…。
「ええ!?それ、言うのか!?嫌だよ、もー!!」
どうした、ブラウ!?
めちゃめちゃしかめっ面のブラウに、けしかけるようにスラっちが体当たりしている。
なんなんだ、一体…。
「なんて言ってるの?」
「う…えと…スラっち、強くなりたいって…。協力してくれって言ってる…」
「へぇ、俺達で出来る事なら勿論いいよ。ま、スラっちの方が断然強いけどな!」
相変わらず爽やかさ全開のダーツ。
でも、次の言葉にちょっとだけ固まった。
「スラっち、技とか魔法受けると習得出来るから、持ってるスキル全部でガンガン攻撃して欲しいって…。あと、スキル教室の生徒さん達にも頼んでくれないかって…」




