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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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濃いめの挑戦者達⑭ 10/4 2回目

挑戦者達も、怪訝な顔で周囲を見回す。驚いた事に、灯りの元は髭ドワーフのおっさんだった。


持っていたランプをそっと挑戦者達のそばにおき、照れ臭そうに鼻の頭を掻いている。


「…さっきはワシも大人気なかったでよ。これであいこだぁ」


それだけ言うと、ふいっと向こうに行ってしまった。


「あ…ありがとう、おっさん!!」


「嬉しいですぅ~!!」


思わぬ展開にこっちがビックリだ。

バトルマスターの土下座が効いたんだろうか。


まさかの展開で、挑戦者達はなんとか第二ステージもクリアしてくれた。いよいよ、俺のボスデビューの可能性も高まってきたな!



戦闘がひと段落すると、どうしても他のモニターが気になってくる。


特にさっき見逃した、トラップにかかり放題って噂のキング・ロードの挑戦者達は、どうなったんだろうか。


「グレイ。キング・ロード、まだ頑張ってるか?」


「いや、先程全滅しましたよ。やっぱり最後までは難しかったようですな。戦闘能力はなかなかでしたが、全員トラップの餌食で。」


グレイはそう言って苦笑している。


「それよりジョーカーズ・ダンジョンは私が見ましょう。そろそろボス戦にいつでも行けるように準備した方がいいのでは?」


確かに。俺はグレイにモニターチェックを代わってもらい、その場で軽くウォーミングアップする。


レベルだけはクラスアップするくらい上がったし、毎日のように組み手もしてきた。でも、なんだかんだ言って、召喚されてからこっち本気のバトルはご無沙汰だった。


緊張する…!!




「スラっち!!!」


突然、ゼロの叫び声がこだました。


「どうしたの!?」


ユキがスライム・ロードのモニターに走り寄る。俺も慌ててモニターに駆け寄った。


「スラっちが…スラっちが…!!負けちゃったらどうしよう!!」


ゼロは目に涙をいっぱい溜めて、肩を震わせている。モニターをみたら、爺さん達から遠く離れた場所にコロリと転がっているスラっちが見えた。


……え?


…まさか、え!?


サアッと血の気が引いた。スラっちはネームドだ。死んだら生き返る事はできない。もちろん俺もスラっちもそんな事百も承知でボスをはっている訳だが、それでもいざこの日がくると平静ではいられず、縁起でもない考えに嫌な汗が伝う。


まさか…!まさか…!


スラっちはピクリとも動かない。その時、戦士爺さんが空気が震えるような大声で、スラっちに檄を飛ばした。


「いつまで転がっとるんじゃ!!まだまだこれくらいで死んだわけではなかろうが!!」



戦士爺さんの気合いの入った呼びかけに応えるように、スラっちがプルプルと震えながら起き上がる。


キラキラと光っているのは回復魔法だろう。


そうだよな、スライムエニグマにまで進化したスラっちが、そう簡単に負けるわけ…死ぬわけがない。


そう思ったら、少し落ちついた。


「ふん!勿体ぶらずにさっさと起き上がらんか!軟弱者がぁ!」


相変わらず戦士爺さんは口が悪い。


スラっちが炎のブレスを吐く。地獄の業火を思わせる激しい炎が爺さん達に吹き付けられ……


!!!???


魔術師爺さん起こした吹雪が、炎を相殺した!!?


同時に格闘家爺さんが気を放つ。

放った気は龍の形になりスラっちに襲いかかった。スラっちはすんでのところで強い気を放ち、龍を粉砕する。


スラっちはそのまま高く飛びはね、何度も何度も着地した。着地の度に円形に衝撃波が起こる。


さらにその衝撃波を追いかけるように無数の光が降り注いだ。…まるで、流星群みたいだ。


しかし、この波状攻撃さえ爺さん達は防いでみせる。


……なんて高レベルの攻防戦。


「まだまだその程度じゃあるまい!全力を出さんかぁ!」


雄叫びと共に戦士爺さんが襲いかかる。技すらない、堂々の単純攻撃でスラっちに切り込んでいった。あまりに早い剣の動きに、最早目では追えない。


スラっちは柔らかい体を活かして、ギリギリでなんとか避けている。今まで見た事もない形になりながら剣の切っ先を躱す。


あっ!?


躱し切れなくなったのか、高速で転がり始めた!


ギュルギュルと音を立て、凄い速度で転がっていく。そのままの勢いで、盗賊爺さんにダイブ!!


「ぐはぁっ!!」


盗賊爺さんは見事に吹っ飛んだ。間髪入れずに、スラっちから、細い光線が一斉に発射される。


その光線は、爺さん達の体を貫いた。

体のあちこちから血を流す爺さん達。



戦士爺さんは、満足そうにニヤリと笑った。



「うむ、なかなかやりおる…」



静かに笑った戦士爺さんに、何故か背筋が凍るような戦慄を感じた。スラっちも同じなのか、完全に動きが止まってしまっている。


モニターを通してさえ感じる。

この感覚は…絶対的な強者に対する、純粋な恐怖。


「満足した」


そう言って、戦士爺さんは無造作にスラっちに近づいていく。スラっちは蛇に睨まれたカエルのように、ピクリとも動かない。


「ここまでじゃ」


戦士爺さんが、剣を横一閃に薙いだ。

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