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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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123/320

濃いめの挑戦者達⑤ 9/30 1回目

バトルマスターの頭部に向かって振り下ろされる、バーニングベアの太い腕。


しかしその腕に、ナイフが一斉に降り注いだ。7本ものナイフを受けて、一瞬だけ腕の振りが鈍る。


バトルマスターは、瞬間生まれた隙をついて、大きく後ろに飛びのいた。バーニングベアの腕は虚しく空をきり、最後の攻撃は不発に終わる。


無念の咆哮と共に、バーニングベアの体は地響きをたてて崩れ落ちた。



「ふい~…結構、やばかった…」


荒い息をつきながら、バトルマスターは額の汗を拭っている。なかなかキレのある動きだったけどなぁ。


「全く…ボロボロじゃないの。装備全部脱ぐなんて、バカな事するからよ」


女盗賊が呆れながら、鎧が入った袋を投げる。


「それ着て、すぐにヘルプに入って!モンスターが増えてるわ」


言い置いて、すぐに踵を返す女盗賊。

見れば、女召喚師もかなり苦戦しているようだ。


マグマンに加え、火鼠2体、火蜥蜴1体が加わって、かなり賑やかなバトルになっている。


確かに召喚師と魔術師の、魔法系コンビだけでは荷が重いだろう。



「ロッカースさん!その、ちんまいネズミ、お願いします!」


「リョーカイ!!」


詠唱を始めた男魔術師に、女召喚師がさらに叫ぶ。


「あっ!息の根止めるレベルのヤツで!ハンパな攻撃だと分裂しましたぁ!」


「マジで!?」


慌てて詠唱を止める男魔術師。


攻撃で分裂するモンスター もいるって聞いた事あるけど、火鼠がそうなんだなぁ。


「どのレベルで分裂した!?」


「アイスボールはダメでしたぁ!」


男魔術師は渋い顔をする。


「…ちっちゃい癖に厄介だな。」


愚痴りながらも新たに魔法を詠唱し、高らかに杖を掲げると、杖から無数の氷の矢が出現する。


氷の矢は恐ろしいスピードで火鼠達に向かって放たれ、一斉に小さな体に襲いかかった。


「ギュイィィー!」


小さな断末魔をあげ、火鼠達が息絶える。


「よしっ!」


男魔術師、小さくガッツポーズ。


続いて火蜥蜴に魔法を放とうとした時、男魔術師の後ろから大きな影が飛び出した。



「…ブレンディ!」


男魔術師の顔に、ホッとしたような笑顔が浮かぶ。そして、次には眉間にシワが寄った。


「…相変わらず、無茶するよ…」


小さく呟き、詠唱に入る魔術師。

多分、回復魔法だろう。


一方、女召喚師は様々な召喚モンスターを呼び出しては、マグマンを果敢に攻めている。


度重なる氷系の魔法攻撃を受け、マグマンの体は既にあちこち黒く色を失い、あまつさえひび割れ始めている。


巨体を揺らし、女召喚師を捕らえようと近づいては、手痛い魔法攻撃を受けている状況だ。


「こっちよぉ?にぶいなぁ」


相手がマグマンだけになり、余裕の表情を浮かべる女召喚師。


「これでサヨナラ♪」


楽しそうに召喚したのは、巨大ハンマーを担いだ、スキンヘッドのイカツイ大男だった…。


上半身裸のムッッッッサイおっさんだ。

無駄に白い歯が眩しい。


…なんだか、ムサ兵士20人を相手に特訓していたあの頃の、嫌な記憶が蘇る。ボス戦でこいつ出されたら、ちょっと泣いてしまうかも知れない…。


スキンヘッドのおっさんは、巨大ハンマーを振りかぶり、マグマン目掛け…


叩きつける。

叩きつける。

叩きつける。


ひたすら、叩きつけた。


轟音が響き、溶岩石のカケラがバラバラと飛び散る。


「あちっ!危なっ!!」


味方にもそこそこ被弾しているが…。


マグマンは腕が飛び、体の半分以上が吹っ飛ばされ…ついに体の核の部分を壊されて、バラバラと崩れ去ってしまった。


時を同じくして、バトルマスターも火蜥蜴を撃破する。


戦闘の幕切れは、意外とあっけなかったが、挑戦者達は厳しい表情で、ため息をついた。


「まだ序盤なのに、結構な魔力と体力使っちゃいましたね~…」


「そうね。魔力も体力も…時間も…。節約していきたいところね」


そう呟やきつつも、バトルマスターを見る女盗賊は、どこか諦めた目をしている。


気の毒に…。




「ハク!ハクっ!凄いよっ!おじいちゃん達、凄いよ~!!」


突然、ゼロに肩を掴まれ、凄い勢いで揺さぶられる。


なにがあったんだ、一体…。


興奮冷めやらぬゼロに、ガクガクと揺さぶられながらモニターを見ると、爺さん達はすでに、スライム・ロードの第二ステージ、ジャングルまで進んでいた。


第一ステージの中ボス、スーパースライムは相手にもならなかったらしい。スーパーの名を冠している割に、残念なヤツだ…。


爺さん達はただ今戦闘の真っ最中。


ただ、生い茂る樹々が邪魔で、スライム達が何体いるのか、パッと見では判別できない。


「 ふむ、ちっとは相手になるようなヤツが出て来たかのぅ」


「ワシらでも見た事のないスライムが、わらわら出て来るもんじゃな!」


爺さん達は楽しそうで、何よりだ。

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