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ゼロのダンジョン、進化中!  作者: 真弓りの
ダンジョン改良

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濃いめの挑戦者達③ 9/29 1回目

「うおォォォオォォォりゃあァァァァアァァァァっ!!!」


凄まじい叫び声と共に、ゴツい体が宙を舞う。少しでも飛距離をのばそうと、手足を大きく振って空気をかく。その姿は、まるで宙を走っているかのようだ。


見事な走り幅跳び。


身体能力の全てを使って、ヤツは素晴らしい飛距離を出している。


「すげぇー…」


思わずため息を漏らす男魔術師。


「相変わらず、身体能力だけはとんでもないわね」


セクシー女盗賊も、バトルマスターの身体能力には一目置いているらしい。


確かに凄い。


バトルマスターは、格闘含め5つの戦闘スキルを師範クラスまで習得していないと選べない上位職だ。


そそっかしい感じだが、実力は確かなものなんだろう。身体能力がズバ抜けているのも頷ける。


「ブレンディさん、ファイトォ~!」


女召喚師の気楽な応援を受けながら、ヤツは見事に着地した。



「ぐあぁァァァァアァァァァっ!!!」



着地と同時に響き渡る悲鳴。

マグマのダメージは、やはり相当大きいようだ。


「ブレンディ!!」


男魔術師が、間髪入れずに回復魔法を唱えた。キラキラと体を光らせながら、バトルマスターは、さらに大きくジャンプする。


脂汗をかきながらも、なんとか宝箱に接近し、手を伸ばした。



その瞬間。

俺は我が目を疑った。



宝箱が飛び跳ね……逃げた!?



「………え!?」



ゴツいバトルマスターも、間抜けな声をあげる。あまりの事に、一瞬は熱さも忘れたようだ。


そしてマスタールームでは、ゼロがうんうん、と頷いている。


「逃げる宝箱…危険な場所で二度と宝箱に挑もうって気がなくなるように、って考えた力作だよ。」


うわぁ…最悪だ。


跳ねてバトルマスターの手を逃れた宝箱は、少し離れた場所に着地し、また、ただの宝箱のように鎮座している。


「このやろう…!」


ブルブルと怒りに身を震わせるバトルマスターは、しかしゼロの思惑通りに動かなかった。よほどムカついたのか、はたまた本当に宝箱から逃げるのはプライドが許さないのか、ヤツは再び大きくジャンプして、宝箱に迫る。


もちろんその分宝箱は飛んで逃げる。


迫る。


飛んで逃げる。


迫る。


飛んで逃げる。


「うそ…なんで諦めないの?」


蒼白な顔のゼロをよそに、バトルマスターと宝箱の、壮絶な鬼ごっこが始まった。


男魔術師の回復を受けながら、マグマに悲鳴をあげつつ、ひたすら宝箱を追うバトルマスター。


見てるこっちが痛いから、もう諦めればいいのに…と思うが、バトルマスターはもはや意地になっているのか、追いかけ続ける。



女盗賊は「理解出来ないわ…」と呟き、男魔術師は「ブレンディ、漢だよ…!」と、男泣き。


女召喚師は、ただただ能天気に「行けーっ!そこだぁ!」と、応援している。



そして長い戦いの末、ついに宝箱は、バトルマスターの手に落ちた。



既に満身創痍ながら、宝箱を手にしたバトルマスターの顔は、やり遂げた満足感に満ちていた。


「いやぁ、かつてない強敵だった!」


と、宝箱片手に仲間の元に歩みよる。


しかも、手に入れた宝箱を盗賊に投げると、地面に大の字で寝転び、「疲れた!ちょっと寝る!」と宣言し、あっという間にイビキをかき始めてしまった。


な…なんて自由なんだ。


しかも、宝箱の中身にはあんまり興味がないらしい。彼にとって、宝箱は単に倒すべき敵なんだろうか…。


「相変わらず、行動が意味不明だわ…。」


女盗賊は呆れながらも、早速宝箱に手をかける。そして、ちょっと驚いた顔をした。


「…あら、鍵もトラップもないみたい…」


「え!?」


「まさか…!」


女盗賊の言葉に、他の二人が驚きの声をあげる。…いやな予感、というヤツだろう。


まさかとは思うが、いや、まさか…!


思わずゼロの顔をガン見。



その時モニターから、「あ、中身はエリクサーだわ」と言う声が聞こえてきた。


よ、良かった…!

ちゃんと中身があった…!!


これでカラだと、さすがに可哀想すぎるもんな!


「そこまで鬼じゃないよ…」


俺の疑いの眼差しを受けて、ゼロはちょっぴり傷ついたらしい。…でも、今の…マグマの中を逃げる宝箱って、相当酷いと思うぞ?



モニターからは、嬉しそうな会話が聞こえてくる。


「エリクサーって、HPもMPも、状態異常も治癒できる高級品ですよねっ?うわぁ、凄いですぅ!」


「おー!ブレンディ、頑張った甲斐があったなぁ。良かった…!」


「そうね。でもこれから先の宝箱は無視したいわ」


女盗賊の発言に、途端にその場は重い空気になった。


「ですよね~…。マグマの中を逃げ回る宝箱なんて最悪ですもんねぇ。…時間制限もあるしぃ」


「ブレンディの体だって心配だしね」


「ただ…」


三人は、途方にくれたようにバトルマスターを見る。


…そうだったな。バトルマスターは、宝箱は絶対に開ける派だったんだよな。


しかも逃げる宝箱は、ヤツにとっては嫌な記憶でもなさそうだ。…かつてない強敵、とか、嬉しそうに言ってたもんなぁ。


高いびきで、気持ち良さげに寝て いるバトルマスター。起きたら確実に宝箱と戦うと言い出すだろう。



「…なんとか、できないかしら」


「んー…。幻視系ですかねぇ。でも、宝箱だけ見せないような、都合いいのはないですよぉ?」


「ちょ、それ何の相談!?」

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