クラスチェンジ!
へぇ、ブレスか。
聖龍のブレスなんか想像つかない。
どんなのがでるんだろう。
俺はワクワクしながら、少し離れた床を目掛けてブレスを吐いてみた。
瞬間、周囲が閃光に包まれる。
眩しい!!
目くらましにはいいかも知れないが、自分の目までくらんでしまった。
光の束が、口から出た気がするが、眩し過ぎてよく見えなかった…。
だが!
あまりの閃光に怯んだマーリンの、腕の力が一瞬緩んだ。その隙をついて、腕から逃げ出し、ゼロの後ろに隠れる。
うん、攻撃力はまだ不明だが、使い道は多そうなブレスだな!
マーリンが恨めしそうな目で見てくるが無視だ、無視。
「閃光か、なかなか使い勝手が良さげじゃねぇか!」
カエンが褒めてくれる。
飛べるし、ブレスも出せるし、まぁ話も出来るし、俺的には問題ないな。
…っていうか、この姿になるんだったら、変化のピアス、要らなかったんじゃねぇか…?
なんだったんだ、俺のムサ兵士達との地獄の特訓…。地味に凹むんだが。
落ち込んでいたら、カエンが何を勘違いしたのか、慰めるように近寄って来た。
「しけた顔すんなって!あ、ちゃんと人型にもなれるからな」
えっ!?そうなのか!?
「人型を思い描いて、念じてみろ」
嫌な予感はするが、とりあえずやってみるか…。
一生懸命念じていたら、強い風のような浮遊感を感じる。気がついたら、クルッと一回転して、地面に着地していた。
「かぁ~わぁ~い~~!!!」
今度はルリが突進してくる。
予想済みだ!華麗に躱し、カエンによじ登って避難してやった!
あのチビ龍の人型だ。
ルリの反応を見ても、自分の視点から考えても、どうせチビっ子になってるに違いない。
「なによ~!ちょっとくらい抱っこさせてくれたっていいじゃない!ケチ!」
「アホか!絶対いやだ!なんか身の危険を感じるんだよ!!」
さすがのルリでも、カエンには手が出せまい!!
「お前なぁ、いくらガキの姿だからって、勝手によじ登るなよ」
「うるせぇ。ガキの姿になるって分かってて言ったくせに。ちょっとくらいガマンしろ」
だが!ガキの姿になったからって慌てない。
よく考えれば俺には変化のピアスがあるからな。
あの地獄の日々は無駄ではなかった…。
まさか、こういう形で役に立つとは思わなかったけどな。
俺は変化のピアスに、元の姿を必死で思い浮かべながら念じる。
キラキラとした光が、俺の全身を包んだ。
「ああ~~~……」
がっくりと膝をつくルリ。
「悪いな。折角だから、変化のピアスを有効活用させてもらった」
カエンから飛び降り、俺はやっと落ち着いて椅子に座れた。なんか色々あって、かなり疲れたんだが。
「せっかく、可愛いかったのに…」
「残念ですぅ……」
ルリに加えてマーリンまで、物欲しそうな目で俺を見てくる。
元の姿に戻ってがっかりされるとか、俺だって残念だよ…!俺、一応イケメンの筈なんだけどなぁ…。
「なぁなぁ!変化のピアスって、なんにでもなれるのか!?」
ブラウとユキのチビッ子組は、変化のピアスに興味津々だ。期待に満ちたキラキラした瞳でこっちを見てくる。
まぁ俺も、変化のピアスが手に入るまで、待ちきれなくて、使い方から出来る事まで調べまくったクチだ。気持ちは分かる。
「俺が正確にイメージ出来れば、基本なんにでも正確に姿が再現できるんだよ。能力は変わらないけどな」
「って事は、イメージ出来れば、何にでもなれるんだな!!すっげー!!」
「ねぇ、変身して!」
キラキラお目々で一生懸命に言われると、出来ればやってやりたいとも思うんだが…。
実は変化するにも魔力を消費する。
朝からスターセイバーの特訓もやった上に、さっきの変化で魔力を使い切り、今の俺の魔力はすっからかんだ。
「悪りぃ。もう魔力がねぇんだよ。明日、いっぱい見せてやるから」
一瞬がっかりしたチビ達も、明日、の言葉で急激に元気になる。
明日は大変だな、こりゃあ…。
「おい、そろそろメシ食おうぜぇ。俺様は腹ペコなんだよ」
カエンの言葉と共に、ようやく晩メシに突入した。ちなみに今日のメインは、鶏ときのこのソテークリーム煮だ。鶏肉なのに、バターのおかげか、濃厚な味わいで美味い。
今日の一日は本当に盛りだくさんで、会話も弾む。
カルアさんの「今回の武闘大会には出ない」決断をカエンに伝えたら、「やっと折れたか。意地っ張りだからなぁ」と笑っていた。
楽しく晩メシを食って、早速武器の鍛錬に入る。
ぶっちゃけまだ上手く操れてないからな。ボスデビューした時に、自分の武器が自分に当たるとかいう、恐ろしい事態だけは避けたい。
カエンはゼロと共に、本格的にダンジョンの設計に入り、今日から俺の講師はグレイが担当だ。
丁寧かつスパルタな特訓は、その日も日付けが変わるまで、みっちりと行われた。




