武闘大会も準備中。②
内心落ち込みつつ、晩メシをパクつく。
落ち込んででもメシは美味いな。
「おー!今日はアスパラの牛肉巻きか!美味そうだ!」
今夜もアラームと警告アナウンスを引っさげて、カエン様の登場だ。
「おっ、その不景気な顔!さてはまだスターセイバー覚えてねぇな?」
「うるせー。放っとけ」
イラつきつつ答えても、カエンは全然お構いなしだ。からかうように笑いながら、大皿にたっぷりと盛られている牛肉のアスパラ巻きをパクつき始めた。
「ねぇカエン、アライン王子から騎士の訓練頼まれたんだけど」
「ああ、知ってる」
「ぶっちゃけ1ヶ月じゃ、たいしたこと出来ないし。講師もアテがないんだよね。カエンのギルドの知り合いとかの方が、いい講師見つかるんじゃない?」
おっ、ゼロがカエンに交渉している。
どうせダメ元だ!頑張れ、ゼロ!
「あー、残念ながら血の気が多いヤツばっかりでなぁ」
「冒険は引退したおじいさんとか」
「もう声はかけた。…で、全滅だ」
苦笑気味のカエンが言うには、「講師なんかやってられっかぁ!むしろ俺が出る!!」と、なぜか皆さん、元気になってしまったらしい。
「冒険者の血が騒ぐのかねぇ。誰が勝つかでケンカになって、賭けまで始める始末だ。手に負えねぇ」
あ…もしかして。
「カエン…引退したおっさん達、纏めて説明したのか?」
「ああ、10人くらいだがなぁ。どいつも、ひよっこ冒険者は名前聞いただけで腰抜かすレベルの、歴戦の勇者ばっかだからなぁ、壮観だったぜぇ?」
カエンは屈託無く笑っているが、自分のミスには一切気付いていないらしい。どう考えたって誰かが出場するって言いだして、皆あとに引けなくなったパターンだろう。完全に作戦ミスだな。
むしろ面白くなってきた、とお気楽な様子のカエンを恨めしく思いながらも、俺もゼロもさすがに腹を括った。
「そうねぇ、武闘大会は面白くなりそうだけど、それは絶対、講師はムリね」
「だな。どのギルドも最強のヤツらをぶつけてくるしなぁ。武闘大会は荒れるぜぇ?」
そう言いながら、カエンはめちゃめちゃ楽しそうだ。放っておくと、自分が出るとか言いそうな勢いだな。
……ていうか、俺もちょっと出場してみたく…なってきたかも。
変化のピアスで姿を変えれば、出ても大丈夫だったりしないだろうか。
新たに芽生えた思いを秘めて、俺は俄然やる気が出てきた!まずはあのじゃじゃ馬な武器を使いこなさないとな!
「グレイ!今日も特訓、宜しく頼む!」
もちろん、その夜の特訓は深夜に及んだ。




