第68話 実はスパイスの正体は!
三階を攻略しつつ、シロコがラーフを使ったスタイルに慣れてきているのを確認する。
うんうん、若いだけあって覚えが早い。
それに動き回りながらの射撃に向いてる。
マシロが高校から大学時代にやっていた陸上競技は、五種競技。
まあ色々やる競技だ。
あくまで趣味のレベルとは言え、やっていたかやっていないかで体のキレってものが違う。
「どんどん行くッスよー!」
ぱたぱた走り回ったり、障害物を飛び越えながら射撃するマシロ。
狙いは甘いが、今回の連射式ラーフなら割と当たるのだ。
『ウグワーッ!』『ゴブグワーッ!』
ましてやこのダンジョンのモンスター、集団行動を取るので的になりやすい。
精神の魔女が支配して、色々実験しているのだろうが……。
それが仇になったな!
で、また別の企画も今進行中で……。
スパイスはリスナーにこっそりとバラす。
「実はねー、シロコはスパイスのリアルな後輩なんだけど、向こうは気づいてないんだよねー。なのでちょっとずつジャブを入れて揺さぶるので見ててね!」
※『な、なんだってー!!』『面白いことになってきたw』『このダンジョン配信が壮大なドッキリだったのか!』
そういうこと!
背中合わせになって周りのモンスターを攻撃しながら、
「こないだお酒のんだ時とか他の人がいたからあんま飲まなかったじゃん? スパイスがいるから大丈夫だよー! いざとなったらおうち泊めてあげるし!」
「えっえっえっ!? こ、この間!?」
もちろん、スパイスの会話の詳しい内容はフロッピーによってピー音にされている!
シロコにしか聞こえないけど、どういう意味の会話なのかはペッパーどもに伝えてあるんだよね。
みんな想像してもらいたい!
なお、これは全部スパイスがシロコをフォローできる場面でしかやってないよ。
ダンジョン配信は遊びじゃないからね!
だが! 配信者がダンジョン配信で遊びを忘れたら、面白くない配信になるから同接も下がるので、攻略難易度が跳ね上がるんだよねー。
ままならないもんです、うんうん。
「この間シロコが二杯飲んで寝ちゃった時さー」
「あひー!? なんでそんなこと知ってるッスかー!!」
混乱してる混乱してる!
シロコのチャンネルのリスナーさんは、どうやらちょっと察してきてるみたい。
いや、スパイスのとこと二窓してるのかな?
そんなわけで、ボス戦!
精神の魔女に操られているらしいモンスターが、一つに融合していって……大きな怪物になる。
キメラだ!
ここでシロコはようやく気付いたみたいだった。
「まさか……まさかスパイスちゃんって、そんな、まさか……!」
「そう! シロコの最初のピンチを助けて戦ったのはスパイス! シロコのよーく知ってる人だよー!」
「ひいえええ、頭がおかしくなるぅ! あたし、ずーっと先輩の配信を見てたんスかー!!」
※『wwwwwww』『気付いたーw!』『すげえ歴史的瞬間w』『おんもしろw』『アーカイブ百回見直します』『飲んでたコーヒー吹いた』
ここで気を取り直して、キメラとやり合うよ!
すっかりラーフの使い方にも慣れたマシロ。
気が動転してようが、動き方は体が覚えてる!
「シロコ、周りをぐるーっと走って! 障害物走! スパイスは飛ぶのでー! レビテーション!」
ふわっと浮かび上がり、繰り出されてきたキメラの大きな前足を、スパイラルでねじって弾き飛ばす。
ボス相手に手加減してられないからね。
魔法もたっぷり使って行くよ!
アクセルで一気に近づいて、射撃射撃射撃!
『グゴゴゴゴゴーッ!!』『ギャシャシャーッ!』
おっと!
キメラのドラゴン頭が、口の中に炎を渦巻かせている。
ファイアブレスが来るぞー!
「シロコー!」
「はいッスー!! ヘビ頭の尻尾に、射撃射撃射撃!!」
『シュルルーッ!!』
後部から攻撃されて、キメラが怯んだ。
この隙に、スパイスはスカートの中に仕込んでおいた鉄パイプを取り出すのだ!
配管に使われるやつだね。
「出てこい、トーチ!」
ぶおんっ!と出現する炎の剣。
そこにちょっと遅れて、ドラゴンブレスが来た。
だけどトーチで受け止めながら、漏れてくるのはスパイラルで散らすぞー!
「スポンサーさん最初に謝っとくね! ごめーん!! スポンジ弾を核に……ファイアボール!!」
ラーフの中がカッと光り輝く。
これを、ドラゴン頭の中にシュート!
燃え上がるスポンジ弾が飛翔し、ドラゴン頭の中で炸裂した。
キメラの頭の一つが吹っ飛ぶ。
さらに側面へ回りつつ、ヤギ頭と獅子頭にファイアボールラーフで射撃射撃射撃!
これ、ラーフ使いとしては最後の手段なんだよね!
だって使ったスポンジ弾は燃え尽きちゃうから。
回収できないから、単純に弾数が減ってくんだよなあ。
だけど、最後の一発を打ち切ったところで、穴だらけになった獅子頭がぎょろりと白目を剥いた。
キメラの巨体が崩れ落ちていく。
そうしたら、ヘビ頭を倒したマシロの姿も見えてきた。
ガッツポーズしてる。
でもちょこちょこダメージ負ってるっぽい?
立ち回りも教えないとなあ……!
「やった! やったッスー!! あたしでもやれたー!!」
シロコのコメント欄が、おめでとー! やったー!と歓声に溢れている。
新人配信者が一つのことを成し遂げたのだ。
いやあ、いいもんですねえ。
「……ということでね」
スパイスは振り返るよ!
コメント欄に向かって、
「今回の顛末はわかりやすく編集してからアーカイブにアップするからね。楽しみにしててー!」
※『了解!』『二回の配信を使っての伏線だったか……w』『リアル後輩が配信者、そういうこともあるんだなあ』『ってことは……シロコちゃんは幼女……!?』
リアルの事情は一切漏らさないからね!
存分に関係性を想像してくれたまえ!
「それじゃあこれで配信は終わり! ダンジョンがもとに戻っていくねー。平和になるねー! いいことだ! みんなまたねー! おつスパイス~!」
※『おつスパイスー!』『おつスパ!』『おつつ!』
配信が終わり、そこは雑居ビルの最上階に戻っている。
いやあ、狭いなあ。
こんな狭い空間が、ダンジョン化すると広大になるんだもんな。
「シロコ……いや、マシロ、おつかれー」
「ううっ、声はスパイスちゃんなのに口調が明らかに知っている人のになった! ほんとッスか!? ほんとにスパイスちゃん、先輩なんスか!?」
「そうだぞー。じゃあこの後、打ち上げしに行くか!」
「ひいーっ、情緒がぐちゃぐちゃになるッスー!!」
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