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第四十六話 レッツショッピングⅡ

暫く更新が滞りそうな予感

ネット環境がちょっと悪くなってしまったので滞りそうです

ご容赦を



 パーティーの開かれた翌日。アリアは、王城の門に背中を預けながらぼうっと空を眺めていた。


 昨日美結に言われた通り、今日はショッピングをするのだ。その待ち合わせ場所が王城の門前であり、アリアは今他のメンバーを一人で待っている状態だ。


 古めかしくも華美になりすぎない装飾の施された懐中時計を取り出して時間を確認してみると、集合時間の十分前ぐらいであった。つまり、約束の時間にはまだ十分時間があるということで時間的にはまだ余裕があるのだが、それよりも十分早く門で待っているアリアは一人だけの時間を持て余していた。


 女性の準備には時間がかかると聞くが、アリアにはロズウェルがいる。ロズウェルに全てを任せていれば、準備時間はかなり短く済む。


 そうじゃなくとも、急な予定と言うわけでもなく事前に立ててあった予定なのだから、準備時間も考えて行動するはずだ。それなのに十分前に着かないということはやはり女性の準備には想定していたよりも長い時間がかかるのだろうか?


 アリアのような例が特別だと言うのはよく理解している。ロズウェルは万能であるためにアリアのコーディネートをしっかりしてくれる。その分、衣服を選ぶ時間は人より短くて済む。


 しかし、そう考えると惜しい気もする。


 女性の準備は長いが、買い物も長いと聞く。女性の買い物と言えば、衣服であろう。つまり、服選びに時間をかけていると言える。


 結論。着ていく衣服と買う衣服。どちらも選ぶのが楽しみと言うわけで、つまりアリアはその楽しみを片方放棄しているということに他ならないということだ。


 女性としての楽しみを放棄しているということに気付き、アリアは惜しいことをしたという気持ちになる。


 次回からは自分で選んでみるのもいいかもしれないと思いながらも、懐中時計を取り出し時間を確認する。


 時刻は九時二十五分。集合時刻の五分前。


 暇つぶしで考えたことに五分かけたことはどうでもいい。アリアとしては、五分前行動をしてほしいということの方が重要だ。


 五分前行動は待ち合わせの時の基本中の基本だ。それをしないということは基本を守れていないということで、つまり何が言いたいのかと言うと、


(暇だ)


 一人の時間は暇だということだ。


(遅い)


 アリアは、懐中時計を取り出すと、時間を確認する。


 まだ時間はある。まだあるが、残りは二分ちょいだ。


 ぼーっと景色を眺める。


 景色と言っても、ここ数年で見慣れた景色だ。クルフトに行っている間にちょっとした変化はあったが、それも微々たるものだ。大した変化ではない。


 行き交う人々はアリアに目もくれず歩いていく。その事実に、今更ながらほっとする。


「お・ま・た・せ!!」


「おっと!」


 後ろから大きな声をかけられ反射的に避けてしまう。


「うわっとっと!」


 案の定、後ろから声をかけてきた人物はアリアに抱き着こうとしていたらしく、アリアが避けたことでバランスを崩していた。だが、少し片足で跳ねるだけでバランスをとる。


 アリアの目の前に飛び出して来て、飛びついてきたのが誰だか分かる。まあ、そうでなくとも大体誰だか分かっていたのだが。


「急に抱きつこうとするな、美結。危ないだろう」


 両手を前に突き出し左足を後ろに伸ばして片足立ちをしている奇妙なポーズをとる美結はくるりと首だけでアリアを振り替える。


「どうしてよけるの?」


「敵だと思った。許せ」


 アリアの答えに、美結は頬を膨らませて抗議の意を示す。


「アリアちゃんつれない。そこは幸助の時と変わんないね!もっと愛嬌良くなってよ!」


「愛嬌はあると思うが?」


 アリアはそういうと腰に手を当てて得意げにポーズをとる。


「見た目じゃなくて中身!せ・い・か・く!!ツンツンだけじゃなく、デレも見せてよ!」


「そんなにツンツンしてるか?」


「ツンツン…と言うより、なんだろう。素っ気ない?かな」


「そうか?」


 アリアとしては、前よりも優しくなったと思っている。実際、思い返してみてもアリアの態度は美結の言う素っ気ない感じではない。


 まあ、そんなアリアが幸助のころと同じで素っ気ないと美結に言わせるということは、美結の前では自然と前の自分が出てきてしまうということだろう。今のアリアの態度も素だが、幸助としての素が出てくるというわけだ。


 本当の自然体、と言うやつなのだろうか。それが、美結の前では出せる。


 そのことが若干嬉しく、頬が緩む。


「だがまあ、変わらない私も素敵だろう?」


「まあね!」


 冗談めかして言った言葉に即答で、しかも肯定で返されると、若干と言うかかなり気恥ずかしいものがあったが、自分で言っておいて恥ずかしがるのもかっこが付かないので平静を装う。


「それにしてもアリアちゃん、その髪どうしたの?」


「ああ、これか?魔法で黒色に見せているだけだ」


 美結が不思議そうな顔で訊ねてきたのはアリアの髪の事であった。


 アリアの髪は今、周囲から黒色に見えている。これは、アリシラに作ってもらった魔道具のおかげだ。


 アリアが銀髪赤眼のまま街に繰り出そうものなら、注目を浴びすぎて買い物どころではない。そのため、アリシラに頼んでずいぶん前に作ってもらったのだ。


 先ほど、行きかう人がアリアに目を止めないことに安堵したのは、この魔道具が正常に動作しているのを確証したためだ。


「銀髪のアリアちゃんに慣れちゃってるから、ちょっとしんせんだなぁ~」


「そうか。似合ってるか?」


「それはもちのろんだよ!!」


 サムズアップをして即答する美結にアリアは苦笑を持って言う。


「美結、それは古いかな」


「古き良き言葉に時代は関係ないんだよ!」


 果たして、「もちのろん」が古き良き言葉なのかは分からなが、美結の中ではそういうことらしい。


 アリアは、ひとことそうかとだけ返すと、改めて周りを見渡す。


「そう言えば、美結だけか?他の皆は?」


「もうすぐ来ると思うけど…と言ってると来るのが常識!ほら、来たよ!」


 何の常識かはさておいておくとして、アリアは美結の指さす方向を見る。すると、美結の言う通り、他のメンバーも来ていた。


 今日のメンバーは以下のとおりである。


 アリア、美結、真樹、アリシラ、奈々子、ユーリ、エリナの計七人である。


 最初は、アリア、美結、真樹の三人だったはずが、アリシラが加わったあとあれよあれよと言う間に七人に増えた。


 まあ、アリアとしては人数が増えたところでなんの支障もないので、別段気にするようなことでもない。それに、人数が多ければその分話しのネタが尽きることもないだろう。


 アリアは片手を上げて挨拶をする。


「おはよう。遅かったけど、何かあったのか?」


 アリアの挨拶の後の問いに、真樹が代表して答える。


「いえ。特に何かあったわけではないの。ただ、アリシラさんが服を選ぶのに時間がかかっちゃって」


「だって~久しぶりのお出かけなんだもの~。服選びにも真剣になるわよ~」


 そう言ったアリシラの格好は、確かに気合いが入っていた。


 アリシラの格好を見たアリアは、少しだけ呆れたような顔を作る。


「アリシラ。別にデートじゃないんだからそんな気合入れなくてもいいんじゃないか?」


「ふっふっふっ。甘いよ、アリアちゃん!」


 アリシラはそう言うと手近にいたエリナとユーリの肩を抱くと、グイッと引き寄せる。


「これほどまでに可愛い子ちゃんが揃っているのよ?ナンパにあわないわけがないじゃない!」


「可愛い子ちゃんって…言い方がおっさんぽいな…」


 苦笑気味にそう漏らすアリア。


 だがしかし、アリシラの言うことも理解できる。


「確かに、私を含め皆可愛いし綺麗だな…」


「自分で可愛いとか綺麗とか言っちゃうんだ…」


 アリアの発言に、美結が慄いたように身を引く。


 だがアリアは、そんな美結に対し至極真面目な顔で言う。


「いや、ここで逆に謙遜すれば嫌味と思われかねない。だから私は、謙遜はしない!」


「ぐうっ…正論だから何にも言えない」


 確かに、可愛い子が「ええ~わたし可愛くなんかないよ~?」とか言っていたら結構、いやかなりむかっ腹が立つだろう。


「まあ、そう言うことだから気合いを入れてきたのよ~」


 鬱陶しそうにアリシラの顔を手で引きはがすユーリとエリナを気にすることもなく、アリシラは二人をぐいぐいと抱き寄せる。


「そうか。まあ、アリシラもそろそろ恋したくなったってことか」


 一人そう言って頷き納得を表すアリア。


「って、ずっとここで話してるのも時間の無駄だし、そろそろ行かない?」


 奈々子が時計を確認した後そう提案する。確かにここで話をし続けていたら買い物をする時間が減ってしまう。


「そうだな。行こうか」


 アリアが頷き返し、先導して歩き始める。その隣に真樹と美結が並ぶ。その少し後ろに残りの四人が続く。


「アリシラ様、ありがとうございます」


「いいのよ、気にしないで」


 前にいるアリアに届かないように声を抑えながらユーリはアリシラにお礼を言う。


 お礼を言われたアリシラは何ということはないといった軽い調子で答える。


「ロズウェルくんに頼まれちゃったしね」


 門に着く前に、美結を含めた六人はロズウェルに呼び止められていた。


 曰く、アリアは最近ずっと気を張り詰め続けているから、今日の遊ぶ時間だけはそのことを忘れさせてほしいというものであった。


 全員遅れればアリアが迎えに来る可能性もあって、美結が先にアリアの元に行っていたので、美結はこのことを知らない。


 だが、アリアが抱え込み過ぎていることに気付いていた。そのため、アリアにそのことを一瞬だけでも忘れてもらうために、アリアを目一杯楽しませるつもりでいた。


「まあ、頼まれなくとも目一杯楽しませるけどね~」


 実際、ロズウェルに頼まれずとも皆そのつもりでいた。楽しませて自分たちも楽しむ。


 先ほどはロズウェルがアリアのことを心配していると悟らせないために誤魔化したのだ。ロズウェルが心配していることがばれてしまえば、ロズウェルがわざわざアリアがいないときに引き留めた意味がなくなるし、アリアはアリアで今後、悟らせないように巧妙に隠すようになってしまうだろうからだ。


 そうならないためにも誤魔化したのだ。


 ユーリはそれを十分理解している。


 だが、これ以上お礼を言ってもくどいと言われかねない。そのため、小さ頭を下げお礼という形をとる。


 アリシラはにこにこと微笑みながらひらひらと手を振って返す。


「さて、今日は何を買おうかな~」


 この話題はここまでと言ったふうにそう言うアリシラ。それに続いて奈々子もエリナも思い思いに言葉を返す。


 今日は、アリアのことも大事だが自分たちが楽しむための休暇である。自分たちも目一杯楽しもうと、これから向かうショッピングに心を躍らせるのであった。


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