1話 力の試練
魔法陣から発した白い光の中、シュウと雫は空気が変わったことを肌で感じた。先ほどとは別の場所に来た感覚だ。
光が収まると、うっすらと目を開ける。すると、そこは先ほどまでいた洞窟とは全く違う場所だった。
「……草原?」
「……みたいね」
そう、そこは果てしなく広がるだだっ広い草原だったのだ。心地よい風が二人の髪を撫で、大地の上を滑っていく。
まさか迷宮の中がこうなっていたとは思わず、二人は少なからず驚く。てっきり某RPGみたく洞窟かと思っていたのだ。
そんな想像とは全く違い、むしろ寝転がって眠ったら心地よさそうだな、と思った二人である。
『お二人とも、聞こえますかね?』
「わっ」
「る、瑠璃?」
物珍しげに辺りを見回していると、突然頭の中に先ほど別れた瑠璃の声が響く。ビクッと飛び上がる二人。とっさに手を握り合っている辺り、互いへの信頼が伺える。
『お二人の精神と接続させてもらいましたね』
「すげえな、そんなこともできるのか」
「さすがは神様ね」
『それよりも、この世界のシステムから入手したその迷宮の特性を教えますね』
そう言って、瑠璃はこの【至高なる迷宮】のシステムについて語り出した。一言一句逃さず聞く二人。
この迷宮は全部で六つの階層に分かれており、それぞれ全く別の性質を持つ。そのため、様々な力が高いレベルで鍛えられるらしい。
だが、その分難易度も三大迷宮に恥じぬものである。大体の挑戦者は、最初の一階層で心身ともに徹底的にボロボロにされて帰ってくるとか。
「へっ、上等だ。やってやろうじゃねえか」
「私達ならできるわ」
しかし、それを聞いた二人は不敵な笑みを浮かべ、片や拳を手のひらに打ち付け、片や余裕の表情を見せる。
これは決して慢心などではなく、これまでの授業で培ってきた断固たる自分たちの力への自信と確信からくるものだ。
それに、たった一階層程度で根を上げていては、あの龍人には追いつくことはできない。どんなに過酷であろうと、やり遂げなくてはいけないのだ。
そんな二人の決意を察した瑠璃は、下手な警告は不要と思い言いかけていた言葉を飲み込んだ。代わりに別のことを教える。
『お二人共、ステータスオープンと言ってくださいね。そうすれば自分の能力を見ることができますね』
「お、おう。ステータスオープン……これでいいのか?」
「ステータスオープン……あ、何かが頭の中に浮かび上がってきたわ」
雫の言葉通り、シュウの脳内にもパネルのようなものが出現する。集中してそれを見る二人。
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北月シュウ 18歳
レベル:1
装備:学生服
ステイタス
HP:700 MP:1400
体力:1000 腕力:1100
耐久:900 俊敏:1300
精神:1900 知力:900
称号スキル
【退魔師】【リーダー】【槍士】【勇者】【痛みを知る者】【友を思う者】【愛妻】
通常スキル
【槍術Lv6】【身体能力強化Lv4】【物理耐性Lvー】【豪腕Lvー】
行動スキル
【家事Lv3】【属性槍Lv5】【高速思考Lv3】【気配・熱源・魔力感知】【潜在能力解放】
固有スキル
【北月流殺術】【北月流格闘術】【霊力操作】【和楽器演奏】
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霧咲雫 17歳
レベル:1
装備:学生服
ステイタス
HP:600 MP:2000[+2000]
体力:700 腕力:650
耐久:500 俊敏:1400
精神:1900 知力:850
称号スキル
【陰陽師】【リーダー】【勇者】【友を思う者】【愛夫】
通常スキル
【脚術Lv6】【身体能力強化Lv2】【魔力増幅Lvー】【魔法耐性Lvー】
行動スキル
【家事Lv7】【属性札】【高速思考Lv6】【全属性魔法Lvー】【潜在能力解放】
固有スキル
【陰陽術】【霧咲流柔術】【演舞】
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「へえ、こいつはすげえ」
「なんだかゲームみたいね」
『召喚の際に付与された有用な能力を残しておきましたね……と、そろそろ限界のようですね。それでは、ご武運を』
その言葉を最後に瑠璃の気配が消えたことを感じ取った二人は、互いの顔を見合わせる。そしてまた笑って、強く頷きあった。
『挑戦者よ。汝らに〝力の試練〟を与える』
その瞬間、どこからともなく厳かな男の声が反響するように頭の中に響いた。咄嗟に身構えるシュウと雫。
パァ……!
その声に合わせるように、ぐるりと二人を囲んで円状に無数の魔法陣が出現した。転移に使ったものと違い、禍々しい魔力を放っている。
「くっ、早速お出ましってわけか!」
「シュウ、迎撃準備よ!」
「ああ!」
雫の言葉に答えたシュウは、懐から肌身離さず持ち歩いている札を取り出す。複雑な模様の刻まれた、異様な雰囲気を醸し出す札だ。
「急急如律令!」
霊力を込め、札に封じられたものを解放する。すると札が光り、それが収まるとやや古ぼけた、しかし見事な作りの長槍がシュウの手の中に顕現した。
名もなきその長槍は、かつてイザナギが下界をかき回して陸を作ったとされる神の槍。代々北月家に受け継がれてきた神器だ。
そして、この槍には……
「ナナシ!出番だ!」
『ん〜? なんだ、騒がしいな……』
やや眠たそうな、幼げな少女の声がシュウの脳内に響く。この槍の中に太古の昔から宿る名無しの付喪神である。
同時に、家族の中では龍人の祖父以外の唯一の話し相手でもあった。龍人が死んだ時は、瑠璃と同じほど、あるいはそれ以上に怒っていた。
雫も札を数枚取り出し、いつでも霊力を流し込んで行使できるように構える。そんな二人の前で、魔法陣が一際強く輝いた。
オオォオオオオオオオオオオォォオオオ………
そして現れたのは、魔物の大群。広大な草原を埋め尽くさんばかりの数であり、皆一様にシュウと雫に敵意のこもった目を向けている。
ゴブリン、オーク、ゴーレム、悪魔、狼型、猪型、エトセトラエトセトラ……目視できるだけでも30種類はいる上に、武装をしているものもいた。
さらにこの魔物の大群、大半が中位の魔物であった。中には上位の魔物も混じっており、間違ってもレベル1の人間が来る場所ではない。
「おいおい、なんつー数だよ……」
「これを全て倒すのが試練ってことかしら。まったく、冗談きついわよ」
流石の二人も冷や汗を流しながら、魔物たちを見据える。背中合わせになり、極力死角をなくした。
そんな二人を見て、準備が整ったと思ったのか。魔物たちは怒号をあげ、一斉に襲いかかってくる。戦いの狼煙が上がった。
「雷爆!」
まず、最初に襲いかかってきた先頭の第一陣を雫が札の一枚を使い、爆発するように雷を発生させて黒焦げにする。
そんな仲間の死骸を踏み潰して突撃してくる第二陣を、シュウが槍で心臓を的確に貫く、あるいは頭を切り飛ばして殺した。
それで自分たちの攻撃が効くことを確信した二人はアイコンタクトをし、各々で魔物たちを討滅し始める。
「はぁあああああっ!!!」
雄叫びをあげたシュウが、縦横無尽に走り回って魔物を殲滅していった。獅子奮迅とはまさにこのことであり、大量の鮮血が飛び散る。
オーガの振り下ろした大ナタを槍で受け止め、刃の腹を滑らせるようにバランスを崩させて石突きで眼球ごと脳を潰した。
そうするとオーガの手からこぼれ落ちた大ナタを蹴って浮かせ、柄頭を足裏で蹴りつけて吹っ飛ばす。
風を切って飛ぶ大ナタは魔物を串刺しにしていき、たまたま進路上に立っていた木を貫通してようやく止まった。
そうしてひらけた道にシュウは飛び込み、左右から襲いかかってくる魔物たちを切り刻んでいく。北月家次期当主の名に恥じぬ戦いっぷりだ。
「〝炎爆〟!〝風牙〟!急急如律令!」
雫もまた、札を用いて魔物たちを倒していく。刻まれた術式が光り輝き、自然現象を発生させて魔物を屠った。
炎の札が飛ばされ、魔物の振り上げた武器に当たった瞬間爆発する。爆発の中心にいた魔物は消し炭になり、他のものも大火傷を負った。
混乱する魔物たちに、さらに追い打ちをかけて風の刃が迫る。それは魔物の四肢を、あるいは首を刈り取っていった。
しかし、その中を一匹の魔物がくぐり抜け、雫に接近した。隠密と回避能力に優れた黒豹型の魔物だ。
ガァアアアァッ!
そしてすぐ目の前まで近づき、姿を現して大口を開け飛びかかる。あわやその鋭い牙に喉を引きちぎられるかと思われたが……
「はっ!」
キャインッ!?
黒豹の下あごに、雫の膝が叩き込まれる。情けない声を出した黒豹の口の中からナイフのような牙が大量に折れて飛び散った。
雫は右手にあった札を投げると、その牙のいくつかを掴んで投擲。黒豹の後に続いていた魔物たちの眉間に牙が刺さり、地面に沈む。
グルァァアァアッ!!!
その魔物を踏み潰して、二足歩行の翼のないドラゴンのような魔物が雫に腕を振り下ろした。雫は咄嗟に結界の札を取り出し……
「オラァッ!!」
だが、それを使う前にどこからともなくシュウが飛んできて、手に握った巨大なカメレオン型の魔物をドラゴンモドキに叩きつけた。
長い舌を掴まれていた魔物は、ドラゴンモドキの頭に当たって木っ端微塵になる。その代わりに、ドラゴンが脳震盪を起こしよろめいた。
「〝縛鎖〟!急急如律令!」
大地の術式が刻まれた札を雫が使うと、ドラゴンは地面から飛び出した鎖に捕らえられ、シュウに頭を貫かれて死ぬ。
「ナイス雫!」
「そっちこそ!」
互いを称賛しあった二人は、それぞれに向かって突撃していた魔物を討伐する。この程度では、二人のことを止めることはできなかった。
それから長い間、二人と魔物の戦闘は続いた。数時間、あるいはもっと長い時間だろうか。とにかく、二人は戦い続けた。
時に怪我を負いながらも、諦めてなるものかと歯を食いしばって魔物を倒し続ける。その甲斐あって、少しずつ魔物は減っていった。
そして……
「これで……最後!」
「オラァッ!」
雫が札により雷を纏った蹴りで馬型の魔物の頭を粉砕し、シュウが放った刺突が上位のオーガの心臓を刺し貫く。
最後の二匹だった魔物が、ついに地面に倒れ伏した。攻撃を放った体制のままだった二人も、ガクッと崩れ落ちる。
「ハァ、ハァ……!」
「やっと、終わった……!」
互いの背中に体重を預け、荒い息を吐くシュウと雫。そんな二人の周りには、無数の魔物の死骸が転がっていた。
ヴヴン……
しかし、疲労困憊の様相を見せる二人の前にまた新たな魔法陣が出現する。十メートル以上ある巨大なものだ。
魔法陣から溢れ出る膨大な魔力に顔をしかめながら、二人は立ち上がり武器を構える。すると、一際強く魔法陣が輝いた。
キシャァァアァアアアッ!!!
魔法陣から現れたのは、漆黒の大蛇だった。赤い模様が全身に走っており、体調は二十メートル以上はあるだろう。
「おいおい、なんだよこの存在感」
「まるで祟り神ね……」
渋い顔をしながらも、油断なく構える二人。それを大蛇は黄金の瞳で睥睨し、大口を開けて襲いかかった。
咄嗟に横に飛び回避すると、大蛇は二人の間を通り抜けて地面に食らいついた。そのまま頭を沈め、地中に潜っていく。
再び背中合わせになって油断なく構えていると、不意に雫は足元からほんの僅かに異様な魔力の流れを感じた。
ちらりと横目にシュウを見るが、どうやら気がついていないようだ。おそらく陰道に精通する雫だから気づいたのだろう。
「シュウ!」
「うおっ!?」
雫はシュウの襟首をつかみ、女とは思えないような力で投げ飛ばす。そうすると自慢の脚力で自分も跳躍した。
次の瞬間、二人が立っていた場所を起点にして地面から金属の刃が勢いよく生える。あと一秒遅かったら串刺しになっていたことだろう。
キシャァァアァアアアッ!!
目を見開く二人の前で、刃ごと地面が盛り上がって大蛇が姿を現した。そして毒液の滴る大きな牙を剥き出しにして喰らおうとする。
「くっ!この体勢じゃ……!」
「雫、風だ!」
シュウの言葉にハッとした雫は、すぐさま風の術式が刻まれた札を取り出してあえて必要以上に霊力を流し込み、解放する。
すると札を中心に暴風が吹き荒れ、二人の体を大きく吹き飛ばした。しかしそれが幸いし、大蛇の攻撃をかわす。
限界値を超えた札が弾け、シュウとその片腕の中にいる雫は落下した。落ちる場所は、大蛇の長い胴体の上だ。
「これでも喰らえっ!」
槍を手の中で反転させ、切っ先を大蛇の胴体に叩き込む。無数の魔物を屠った神槍は、大蛇の巨大な鱗を……
ガインッ!
「何っ!?」
『なんと!我でも貫けぬのか!』
大蛇の鱗は、硬質な音を立ててシュウの一撃を防いだ。これまで一度も切れないものはなかったが故に、ナナシも驚きの声を上げる。
弾かれた反動で体勢を崩したシュウは、雫を胸の中に抱きしめながらゴロゴロと大蛇の胴体の上を転がっていった。
最後は地面に転げ落ちる。幸い大蛇の影響で刃は地面ごと抉れて散乱しており、串刺しになることはなかった。
「ちっ、どうすりゃあの装甲を突破できる……!」
「なら、こういうのはどう?」
悔しさに歯噛みするシュウに雫は火と水の札を取り出し、耳元に顔を寄せて作戦を伝える。シュウはニヤリと笑って頷いた。
シュルルルル………
奇襲に失敗した大蛇は首を曲げ、二人を見つめる。時折、チロチロと口から長細い舌が見え隠れしていた。
「よお化け蛇、こっち来やがれ!」
睥睨する大蛇にシュウが立ち上がり、挑発するように大声で叫ぶ。それに反応し、大蛇は大口を開けてシュウに襲いかかった。
地面ごと飲み込みながら迫る大蛇に、しかしシュウは大きく腕を広げたまま仁王立ちになっていた。不敵な笑みを浮かべる顔に、一筋の汗が流れる。
とうとうシュウは、大蛇の口に飲み込まれる最後の時まで抵抗をしなかった。獲物を捕らえた大蛇はそのまま顎門を閉じようとして……
「今だっ!」
『ぬんっ!』
だが、その前に槍の持ち手が何倍にも伸びてそれを阻止した。上顎と下顎にそれぞれ刃の切っ先と石突きが突き刺さる。
慌てて大蛇は強引に口を閉じようとするが、まるでつっかえ棒のようになった槍は神槍の名に恥じぬ頑丈さで抵抗した。
「雫!」
「急急如律令!」
そんな大蛇の頭上に、それまで気配を消して逃げていた雫が飛び乗って札を使った。すると地面が隆起し、土の縄が地中に埋まったままの体ごと拘束する。
それに大蛇が一瞬気を取られた隙に、シュウは槍を元の長さに戻して口の中から脱出した。踵の数ミリ後ろでバクンッ!と口が閉じられる。
「はぁっ、はぁっ、あっぶねえ……!」
『もたもたしている時間はないぞ!』
「わかってるよっ!」
ナナシに怒鳴りつけるように答えると、シュウは大蛇の頭上に向かう。まだ最後の仕上げが残っているのだ。
暴れる大蛇の頭の上になんとか登ると雫がシュウに気がつき、振り返っていいか?とアイコンタクトする。シュウはそれに頷いた。
「それじゃあ……急急如律令!」
まず、眉間の間の箇所に火の札を使う。業火が大蛇の鱗を焼くが、せいぜい真っ赤になるだけで溶解まではしなかった。
だが、それは想定内だ。続けて水の札を、火の札を使った箇所に使う。するとたちまち鱗は冷却され、酷く脆くなった。
「シュウ!」
「うぉおおおおおおおっ!」
雄叫びをあげながら跳躍したシュウが、耐久力が激減した鱗に刃を深く突き立てる。そこはちょうど大蛇の脳がある場所だ。
キシャァァアアアァアアアアァアアッ!?
激痛に叫ぶ大蛇。構わずシュウは槍を手放し、そこにすかさず雫が雷の札に残りの霊力をありったけ込めて貼り付けた。そして大蛇の頭上から退避する。
二人が地面に落ちたのと同時に、雷の札が力を解放し、槍を伝って大蛇の頭蓋の中で暴れまわった。それは脳を貫き、黒焦げにする。
ジャァァァアアァアアァアアアアァアアァァァアアァ……………
断末魔の叫び声をあげた大蛇は、ぷつんと糸が切れたように動かなくなった。黄金の目から光が消え、だらんと舌が口内から溢れる。
「はぁ、はぁ………」
「ふぅ、ふぅ……」
地面に大の字になった二人は、精も魂も尽きて体が岩になったような錯覚を覚えた。口から荒い息を吐き出し、少しでも酸素を取り込もうとする。
「マジで死ぬかと思ったな……」
「でも、なんとか突破できたわね……」
「ふう……なるほど、こいつは並の人間じゃあ手に負えねえわけだ」
雫の言葉に、起き上がって肩をすくめるシュウ。実際に経験してみて、それをよく理解した。あまりにも数の暴力が過ぎる。
「そういや、ステータスってどうなってるんだ……?」
「ちょっと見てみましょうか」
ステータスオープン、と唱える二人。脳内にパネルが浮かび上がってくる。
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北月シュウ 18歳
レベル:65
装備:学生服(破損)
ステイタス
HP:13500 MP:14200
体力:13800 腕力:13900
耐久:13700 俊敏:14100
精神:14700 知力:900
称号スキル
【退魔師】【リーダー】【槍士】【勇者】【痛みを知る者】【友を思う者】【愛妻】
通常スキル
【槍術Lv6】【身体能力強化Lv4】【物理耐性Lvー】【豪腕Lvー】
行動スキル
【家事Lv3】【属性槍Lv5】【高速思考Lv3】【気配・熱源・魔力感知】【潜在能力解放】
固有スキル
【北月流殺術】【北月流格闘術】【霊力操作】【和楽器演奏】
ーーーーーーーーーー
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霧咲雫 17歳
レベル:65
装備:学生服(破損)
ステイタス
HP:13400 MP:14800[+2000]
体力:13500 腕力:13450
耐久:13300 俊敏:14200
精神:14700 知力:850
称号スキル
【陰陽師】【リーダー】【勇者】【友を思う者】【愛夫】
通常スキル
【脚術Lv6】【身体能力強化Lv2】【魔力増幅Lvー】【魔法耐性Lvー】
行動スキル
【家事Lv7】【属性札】【高速思考Lv6】【全属性魔法Lvー】【潜在能力解放】
固有スキル
【陰陽術】【霧咲流柔術】【演舞】
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「……なんか、すげえ上がり方してんな」
「いきなり万単位までいくものなのね……」
訂正するが、これは二人の称号スキルにある【勇者】の効果で成長率が二倍になっているが故である。この時点で、普通の人間の限界を優に越していた。
『挑戦者たちよ。よくぞ〝力の試練〟を突破した。だが、これはまだ序の口である。これからの試練、心してかかるが良い』
息を整えて立ち上がった二人の頭の中に、始まる前と同じ男の声が響く。どうやら本当にクリアできたらしい。
それと同時に、魔物の死骸が次々と爆散して粒子となっていく。迷宮の魔物は地上の魔物と違い死骸が残らず、迷宮へと還るのである。
『あだっ』
当然大蛇も例外ではなく、刺さったままだった槍が落ちてくる。その拍子に中に宿っているナナシが声をあげた。顔を見合わせ、苦笑する二人。
すると、ふと二人の目の前に大きな宝箱が現れた。冒険者たちの中でも迷宮攻略を専門とする者たちの間ではこれを、トレジャーボックスと呼ぶ。
顔を見合わせ、頷きあって警戒しながら宝箱に近づく。そしてシュウが邪悪な気を感じ取れるナナシを近づけた。
「何か感じるか?」
『ふむ……邪な者は潜んでおらぬ。代わりに、何か特別な力の込められた物が入っておるな。まあ、安全だろう』
安全を確認すると、恐る恐る二人で宝箱を開く。すると、中に入っていたの色の違う、二つの服のようなものだった。
シュウが取ったほうは、白い礼装と靴、深い紺色のネクタイ、縁に金色の模様が刺繍されたベストのようなもの。一緒に所々金と青で装飾されたロングコートも。
雫が取った方は、それに相反するような黒い衣装だった。所々赤く装飾された道着のようであり、一緒にブーツが入っている。
そして、全く同じ形のペンダントが二つ。おそらく試練を突破した証だろうと、一つずつ取っておく。
「なんでこんな服が……?」
「まあ、ちょうどよかったじゃない」
先ほどまでの戦闘において、二人の服は穴だらけの土まみれだった。当たり前だ、学生服は魔物と戦うためになど作られていない。
これだけ仲睦まじいならば当然それなりのこともしているわけで、特に恥ずかしがることなく服を着替える。
「うん、なんかピッタシだな」
「私もよ」
『二人とも、よく似合っておるぞ』
ナナシに褒められて少し照れている二人の前で、またしても異変が起きる。転移された時と同じ、白い魔法陣が出現したのだ。
「これって…」
「次の試練、だよな」
少し立ち止まる二人。先ほどの声は、この試練がまだほんの序の口だと言った。ならばこの先に待ち構えているのは、さらに辛い試練ということになる。
しかし、怖気付いたのはほんの一瞬。どちらからともなく手を握りあい、魔法陣に向けて歩み出す。
魔法陣の上に乗ると、首に下げたペンダントが光り輝いた。やはり、これは何かしらの証明のようなものだったらしい。
ペンダントから光が消えると、魔法陣が回転し始める。二人は次の試練への決意を固めた。
「シュウ、頑張りましょうね」
「ああ……龍人の、力になるために」
その決意に答えるように魔法陣が一際強く輝き、そし二人の姿は草原から消え失せた。後には何も残っていない。
そうして、二人はまず最初の試練を突破したのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
感想をお願いします。




