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陰陽師の異世界騒動記〜努力と魔術で成り上がる〜  作者: 月輪熊1200
一章 遥か高き果ての森
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十四話 新武器作製

 


 とある日。


「うーむ…」

《どうしたのですか龍人様?》


  鍛錬を終えた俺がログキャビンのテラスにてあるものたちを並べ、その前にあぐらをかいて唸っているとシリルラが話しかけてきた。


  初日にグレイウルフを解体した時からそうだったが、彼女はどうやら俺の思考だけでなく俺が何をやっているのかも見えているようだ。だからこその普段の細かい気配りというわけだな。


  で、結局俺が今何をしているかという話なんだけど。実はあるものを作ろうとしているのだが、それについて色々と悩んでいる真っ最中である。ちなみに作るものとは武器だ。しかしその武器について、とても重要な選択をしようとしているのである。


「…いつまで悩んでおるのじゃ?」

「リュート様大丈夫ですの?」


  そんなことを考えていると、ひょこっと両肩に手が置かれそれに伴うようにそれぞれ一つずつ顔が飛び出た。共通しているのはどちらとも端正で目が好奇心に輝いており、相違点は全く逆の年齢なこと。言うまでもなく、人間態になっているエクセイザーと今日も今日とて遊びにきたリィスである。


  ふわり、と鼻腔をつく甘い香り。片方は花のような匂いで、もう片方は柑橘系の匂いだ。二人からはとてもいい匂いがした。これが女の子特有の香りというやつなのだろうか。


  って、そうじゃなくて。あいつ以外に女性と関わりなど学校の教師以外ほとんどなかった俺としてはこんな魅力的な女性と可愛らしい少女が身を寄せてきているというのはいささか落ち着かない。なので話すのも早口になってしまう。


「い、いやほら、ここは慎重に選ぶ必要があってだな。だから……って、あれ?」

「み、魅力的な……くっ、何度言っても直らぬのか…いや、以前本心と……しかし、嬉しいのも事実……」

「可愛らしい、可愛らしい……ふへへぇ」


《…………………》


  なんか二人とも顔を真っ赤にしてブツブツと何事か呟いていた。恥ずかしそうだったり嬉しそうだったり悩ましげだったりと、彼女たちの表情は一瞬でころころと変わっていく。一人百面相…いや、この場合は二人百面相と言えばいいのか?


  ともかく、いい感じ?にこちらから意識がそれたのでその隙に広げていたものをまとめ、少し移動してそちらで改めて思案を続けることにした。


  あ、これは余談だがエクセイザーはなんか気に入ったのか、最近はよく人間態で過ごしている。そして俺のことをじっと見ているのだが、真面目に理由はわからない。


  まあ、内心で綺麗だなーと思うと途端にぱっと顔をそらすけど。これについては普通に恥ずかしいのだとわかっていた。で、今のように小さい声でつぶやいているのだ。知られたくないこともあるだろうと思い、問い詰めることはしていない。


  と、まあエクセイザーのことは置いといて。今は目の前の問題が重要だ。選択次第では、俺はこのあとずっと後悔するはめになる。だからかれこれ一時間ほど、結構真剣に考えていた。


《……私は従来の方がいいと思いますね》

「ん、シリルラはそう思うか。けど男としてはそっちも捨てがたい……うむむ」


  痺れを切らしたように提案してくれるシリルラ。その声音が何処と無く拗ねているような、怒っているような気がしないでもないが……触れるとまた仕返しをされそうなので口には出さないことにする。


《で、どうするんですかねロリ人様?》


  口に出さなくても仕返しされた。だからロリコンじゃねえって!そもそも俺が好きなのはあいつだけだし!もう伝えられないけど!


《っ……さっさと決めてくださいバカ人様》


  最近シリルラが酷え。それもはや原型ほとんど残ってないじゃん。ロリ人もだけど。


  しかし、彼女の言う通りさっさと決めた方がいいだろう。このままだと夜まで悩むこともあるやもしれん。それはさすがに勘弁だし、この〝素材〟たちも早く使ってもらった方がいいと思ってる…かもしれない。俺は目の前にある色々な資源を見てそう感じた。


  今更だけど、武器の素材に使用しようと思っているのはガルスさんに頼んで凝縮してもらったミスリル塊、地面の土の中に混ざっていた砂鉄から錬成して作った超高純度鉄、逆に炭素量が多い玉鋼など主に金属類だ。他にはなめした魔物の皮など。


  で、肝心の武器だが……俺が生み出そうとしているのはいわゆる〝男のロマン〟と呼ばれるものの一つである。暇つぶしに読み漁っていたネット小説の影響で俺もまたそれを持ち合わせており、せっかく地球とは異なる世界に来たのであればこれは作りたいという願望は少なからずあった。


  まあ素直にぶっちゃけて仕舞えば〝銃〟だ。人類がより短い時間で苦労することなく効率的に人を殺せるように、そして戦争に勝つために作った現代兵器の一つ。時代が進むごとにそれはコンパクトになり、よく映画の中ではポケットに入る程度の大きさのハンドガンなんかを俺も見た。


  そんなわけで、俺は今銃を作ろうとしている。


  というのも、これにはれっきとした理由がちゃんとあった。ただ衝動に任せて作ろうとしているわけではないのだ。個人的趣向が入っていないといえば嘘になるが。


  イザナギ様によりこの世界に転生し、伸び代が大幅に増えた肉体を自在に使いこなせるよう鍛錬を積み、そして最初にリィスと出会った…つまり奇襲攻撃をされた時俺はあることに気がついたのだ。俺は遠距離からの攻撃に対する決定的な対抗策を持ち合わせていないと。


  以前にも考えたような気がするが、俺の最も得意なのは剣であり、当然人生のうちで修練に費やした時間が一番長いのは剣術だ。それは刀を使うに留まらず西洋剣術や我流の剣術なども多く取り入れられ、皇家一子相伝の剣術はほぼ万能と言っていいほどの幅広さを誇る。


  けれどそれはあくまで近接戦闘の話。霊力を使えば中距離戦等も可能にはなるが、やはり純粋な術理だけの状態では間合いに入らなければ何もできない。薙刀や弓矢も苦手というわけではないし、むしろ得意な方だがいまいちといった感じだ。


  そこで登場するのが銃というわけである。毎回札を選んで取り出す暇があるかなど疑問甚だしい。銃なら抜いて撃つ、それだけの動作で済む。大幅にタイムロスを減らせるのだ。選ばない手はない。


  陰陽師としてそれでいいのかと誰かに聞かれそうだが、別に一昔前には弾丸に退魔の霊力を込めて妖退治をしていた流派だってあるし、今も海外で活躍している退魔士や陰陽師にはそういう方向の人もいる。うちの親戚にも確か一人いた。


  その親戚のおじさんに小さい頃射撃術の手ほどきを受けたことがあるので、基礎はできてる。じゃあ後は実物を作るだけだろ、何うだうだ言ってんだってことになるんだけどな……銃の見た目だ。

 

  そう、見た目。ここで俺の中の男のロマンを追い求める熱い心が顔を出した。そしてそいつは俺に訴えかけるのだ、ただ既存の銃を作るなどつまらない、つまらなさすぎる!ならば異世界の不思議素材を駆使し、ファンタジー感満載なロマン武器を作り上げるのだ!と。


  結局俺はそれに負けた。しかし最後の抵抗でいざ作らんとなった時に普通の見た目にするかちょっと派手目にするか悩んでいるというわけである。我ながら結構しょぼい、しかし男としては壮大な悩みだった。


《…では中間にしてみては?》


 中間?


《はい。土台は普通の物にして、少しだけ改造を加えるのですね。何も完全にそれっぽくする必要はありませんね》


 なるほど…それが一番いいか。


  そういうわけであっさりとシリルラの案が可決され、これまで一人で延々と悩んでいたのが全て無意味になった。…別に悲しくなんてないし。むしろここら辺でまとめられたからよかったし?


  そんな誰に言ってるのかわからないことを思いながら作業を始める。まずは携帯のインターネットで銃の構造や各部品の構成を調べ上げ、ドラゴエッジで素材たちを変形させていった。一ミリも違いがあるのは許されないので、慎重にパーツを削り出していく。


「ええと…タイプは大型の自動式拳銃オートマチックガンで、銃身は上下二連、全長は約30センチ。バレルは長方形で、下部分は尖らせるから……」


「んで、弾丸の方は弾頭が黒鋼で薬莢はレクト鉱石、火薬は爆鉱石で代用でリムはディフィル鉱石、雷管は……」


「くそっ、また失敗した。もう少し爆鉱石の凝縮量を少なくして…」


  そんな風に呟きながら部品を作成していった。どうやら俺は超高純度鉄しかり玉鋼しかり、金属の扱いが得意なようで、わりと作業はスムーズに進む。


  スライダ、アイアンサイト、ハンマー、セーフティレバー、グリップと銃に必要な要素をどんどん完成させていくのだった。



 ●◯●



「……できた!」


  体感時間で数時間後。俺は出来上がったものをごとりとテラスに敷いた作業シートの上に置き、額に流れる汗をぬぐいながら満足げに笑った。


「終わったのかえ?」

「もう、酷いじゃありませんの。お相手して欲しかったですわ」


  そんなことを言ってこちらに寄ってくる二人に苦笑しながらゴメンゴメンと謝り、すぐに目線を戻す。俺の視線の先…作業シートの上に鎮座しているのは、一つの大きな銃だった。


  まず最初に浮かぶ感想は、不気味というのが最適だろう。なにせ銃の表面、つまり全体に走っている半透明の金属を覆う外装は見るものを吸い寄せるような黒い光沢を放っているのだから。しかしそれは決してやりすぎではなく、むしろ厳かな雰囲気を醸し出していた。


  真ん中がライン状に発光している近未来的なフォルムのバレルには縦に二つの銃口が付いており、それぞれ下は霊力を用いた衝撃弾と、上は不思議鉱石で作った実弾を使う。紫色の魔物の皮で覆われたグリップの付け根は尖った造形で、バレルの下部分も逆さにしたヒレのような角ばった形状だ。バレル下部分は一見横から見ると細いが厚さは四センチくらいあり、いかにもロマン武器といった感じだ。


  グリップの上に当然実弾用のハンマーと、さらにその下には真ん中にぼんやりとした光を放つ紫色の石をはめ込んだ丸くて平たいつまみが。グリップの付け根には左右両側面にスイッチがあり、一つはマガジンキャッチ、一つは霊力弾の方の機能停止ボタンだ。


  トリガーは二つあり、上は実弾専用、下は霊力弾専用。連射性が必要なのでダブルアクションにした。実弾の銃身が上なのはそのためだ。霊力弾のほうは俺自身の霊力を使うので弾切れは心配ないが、何か一癖欲しかったのである鉱石を使ってつまみで威力調整できるようにした。セーフティレバーは他同様、角ばった形状をしている。


  若干ロマン寄りになっている気がしないでもないが、とにかく完成した。名付けて〝オールス〟Mr.Iマークワンだ。銃口が二つあることから双頭の魔物オルトロスをイメージしてつけている。


 あとは、各機構の動作確認だけだな。


「ほう?それが新たな武器か。格好いいではないか」

「おっ、そう思うか?」

「うむ。攻撃的なデザインで良いと思うぞ」

「サンキューエクセイザー。んじゃ、ちょっと試してみるとしますか」


  そう言いながらオールスを持って立ち上がり、ブーツを履いてテラスから地面に降りる。近くにある木を適当に身つくろい、既に弾倉を装填済みのオールスMr.Iを右手で構え左手で支え、まずは上の引き金を引いた。


 ドガンッ!!


  凄まじい音を立てながら、銃口から音速で弾が撃ち出される。それは寸分たがわず木の幹を捉え、貫通して目測で直径十センチほどの大穴を開けた。空になった薬莢が排出される。うし、真っ直ぐ進んだからライフリングはちゃんと機能してるな。


  後ろを見れば、あまりの音に耳を塞いでいた二人が心底驚いたというような顔をしていた。それはそうだろう。おそらく、こんな凶悪な武器を持っているのはこの世界では探しても俺だけである。

 

  だが、まだ終わりではない。次は霊力弾の方を使うことにした。つまみの突出している部分を五つの浅い溝の一番左にセットし、真ん中の石に指を触れて霊力を流し込む。すると全体に走るラインがひときわ強く輝き、本領発揮とでもいうように低いを音を立てた。


  それを聞きながら、さっきのとは別の木にオールスMr.Iを向け、下の引き金を引く、するとオールスMr.Iが放電したかと思うとラインがさらに強く光り次の瞬間、木を衝撃波が襲った。



 ゴバァンッ!!!



  破裂し、文字通り木っ端微塵になる木。シュウゥゥゥゥ…と冷却を始めるオールスMr.I。おおう、一段階目でこれかよ。自分で作っておいて五段階目とか絶対使いたくなくなったぞ。絶対ミサイルレベルの破壊が起きるだろこれ。


  ふと二人は今度はどんな反応をしているのだろうと思って振り返れば、なんかもう唖然としてた。開いた口が塞がらないという様子で、俺を凝視している。いや、それを使った本人の俺が一番ヤバイってわかってるけど。


《成功ですね、龍人様》

「ん、そうだな」

「…いやいや、ある意味失敗じゃろ。なんてものを生み出しておるのだお主は!?」

「…ヤバイですわね」


  さも当然であるかのように応酬を交わす俺たちに我に返って突っ込むエクセイザー。未だ呆然とした様子のリィス。ですよねー。


  あ、ちなみに使った素材をまとめるとこうだ。



 …『黒鋼クロハガネ

  黒い色をした鋼。通常の鋼の約5倍の強度と靭性を持ち、主に駆け出しから一人前になった冒険者の持つ武器の素材として使われる。大気中の魔力を吸い取り僅かながら自己修復機能を持っているので、よく手入れすれば年単位で使える。


 …『レクト鉱石』

  白い色をした鉱石。少しでも摩擦を起こすと激しい雷を生み出す。主に魔物を捕獲する際の麻痺罠の要として使われ、強度もそこそこなので重宝されている。


 …『玉鋼』

  名の通り玉状に固められた鋼。炭素を多く含んでおり、加工すれば強靭な剣にも盾にも鎧にもなる。


 …『超高純度鉄』

  砂鉄から作り出された混じりっけのない純鉄。非常に粘り強く、錆びず、酸に溶けず、低温にも強い。ただしそこまで強度があるわけではない。


 …『魔封石』

  薄い緑色の鉱石。名の通り魔力を封じ込める力を秘めており、主に犯罪を犯した裏冒険者や魔法使いの拘束に使われる。また、城の外壁にも使われており、魔法に対する耐性が非常に高い。


 …『ディフィル鉱石』

  青色の鉱石。衝撃に対する耐性が高く、鎧のコーティングや職人の作業用金槌などに使われる。


 …『魔伝石』

  ミスリルの劣化版と称される鉱石。その魔力伝導率は250%とミスリルをも凌ぐが、ミスリルほどの硬度を持たないのでそう言われている。ベテランの魔法使いが杖の素材として使う。


  主要なものはだいたいこんな感じだ。


  あとは最初に確認したミスリル塊とおなじみ高強度高靭性が売りのエクセイザーの皮を使い、実弾の方の銃身のライフリングと薬莢にレクト鉱石を、弾頭と外装に黒鋼を、霊力弾の方の銃身とリム、ハンマーに魔伝石とディフィル鉱石を、機能停止用ボタンに魔封石を、というふうにふんだんに西部探索で手に入れた素材を使い、オールスMr.Iを作り上げた。


  特にレクト鉱石の扱いはかなり難しかった。何度感電しかけたことか。だが結果は上々。ちょっと威力がやばい気がするけど、とりあえず作製には成功した。

 

  でもこれは最初の目的通り、遠距離からの攻撃や奇襲に対するための打開策。普段は使う必要はないので、使う機会はもしもの時のために練習するときくらいだろう。


 




  ーーこの時の俺は、そう思っていた。まさかすぐに使うことになろうとは全く予想せずに。

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